【詩】わたしたち

彼らのテーブルのリンゴを
彼らのテレビに映る笑いを
彼らのイヤホンから流れる音楽を
彼らの本に書いてある言葉を
必ず返すからと譲ってもらって
いつか返さないといけないことの
寂しさを振り払えずにいた

いずれ時が経ち

あなたと出会い
わたしたちが生まれた

わたしたちのリンゴを
むしゃむしゃと食べる喜び
わたしたちのテレビを
げらげらと笑い飛ばす夜
好きな音楽は違ったけれど
あなたのよく聴く曲は
わたしたちの手元にあった

いずれ時が経ち

あなたが消え
それでも残るわたしたち