【日記】最近、見つけた均衡状態。
みなさん、いかがお過ごしですか。
僕は、またゲーム理論にハマり出しました。
毎日、イスラエル軍がラファに侵攻するとか、しないとか、もうしてるとか、色々なニュースがありますけれど、
ちょっと、やりすぎじゃないか、と思っているのは、おそらく、僕だけじゃないでしょう。
家族を殺されたから、相手の家族を皆殺しにする、みたいな感じを受けます。
ゲーム理論で言うと、繰り返しゲームにおけるトリガー戦略に該当します。やられたら、やり返しまくる、という戦略です。実は、この戦略をお互いにとると、かなり緩い条件で、協力することがナッシュ均衡になることが知られています。
一度でも裏切ると、お互いにやりまくって双方が損をするので、お互い仲良くしましょう、というのが最適解になるんです。
じゃあ、なんで、こうなったのか。おそらく、ハマスが、イスラエルがトリガー戦略をとっていることを見誤ったのでしょう。
イスラエル側のアピールが弱すぎた、ということではないでしょうか。
僕の母などは平和主義者ですから、北朝鮮のニュースなどを見ると「おぼっちゃまのお遊びみたい」と愚痴を言うけれど、ゲール理論で考えると、北朝鮮がミサイルを撃ちまくることは合理的なアピールなんです。
やったら、やりかえしますよ、と言ってるんです。だから、韓国も、アメリカも、やれない。かつては、日本が占領したりしたけど、いまは無理ですね。
イスラエルは、北朝鮮のようなことをしていないから、ハマス側に舐められたのかもしれません。
だから、すごく逆説的に聞こえるかもしれないけれど、イスラエルも、やったらやり返すぞ、とヤクザみたいな態度を取っていれば、誰も死なずに済んだのかもしれません。
とはいえ、それは話が大きすぎて、僕の手には負えないので、もっと身近なところでナッシュ均衡を探したんですが、
今日の朝、見つけました。
僕はホテル清掃のバイトをしてるんですが、清掃が始まるまで、清掃スタッフたちは狭い事務所の中で待機します。
その狭い事務所の中でそれぞれが待機する場所が暗黙のうちに決まっているんです。いつも同じところです。日によって変わることがないので、これはナッシュ均衡でしょう。
それぞれの好みがあって、あの人の隣がいいとか、できるだけ視線の当たらないところがいいとか、入り口に近いところがいいとか、さまざまな思惑が交錯し、安定的な待機のフォーメーションが完成していたのです。
ちなみに、僕は、人の中に埋もれたくないので、いちばん出口に近いところで待機します。
ところで、僕はさらに面白い現象を見つけました。
実は、最近になって、新たに清掃スタッフとして入ってきた人がふたりいるんですが、
彼らが入ってきたことによって、ナッシュ均衡として安定していたフォーメーションが崩れて、しばしの不安定状態を経たあとに、新しいフォーメーションが定着しました。
それも、単に新しく入ってきた人がどこかに入るといった形ではなく、新しい人の乱入に伴って、それ以外の人たちの居場所も変わりました。
ずっと僕の隣に陣取っていた人が奥へと移動し、そこに新しい人が収まったりしました。
つまり、事務所内の待機フォーメーションは、ナッシュ均衡でありつつ、進化的に安定ではなかった、ということでしょう。
新しい突然変異種の乱入によって、全体の均衡状態が乱され、新しい均衡状態へと移行したのです。
いや、これは実に興味深い現象でした。
ところで、最近、旧TwitterやYouTubeなどで、芸能人たちが「あの人は挨拶しなかった」とか訴えるネタが流行っていますね。
実は、僕の職場にも、挨拶をときどき無視する人がいるんですが、
なんで、無視するのか、そして、なんで、ときどき、なのか、と考えていた結果、思い当たりました。
きっと、その人は、挨拶をしたりしなかったりする混合戦略をとっているのです。
混合戦略を取る場合、どちらの行動をとっても期待利得が同じになることが知られています。
だから、その人は、挨拶をすることと、挨拶をしないことが、同じ結果になるようにバランスを取っているんです。
挨拶をすることのメリットとしては、親近感が湧いたり、雰囲気がよくなったり、コミュニケーションが円滑になったりすることがありますが、
デメリットとしては、不用意に距離を縮めてしまったり、関わりたくない人と言葉を交わすことの億劫さがあったり、自分の威厳がやや低下することなどがあると思われます。
このメリットとデメリットを考慮したとき、ときどき無視しながら、ときどき挨拶をするという戦略をとることが、その人にとって合理的な行動なのでしょう。
ちなみに、僕は、仕事の最中、同僚と出会ったら5割くらいの確率で自分から挨拶して、あとは相手の様子を窺い、あっちが挨拶してきたら挨拶し返す戦略をとっています。
この場合、僕が挨拶せず、相手も挨拶しないという戦略の組みが成立することも、もちろんあります。このことから、常にお互いに挨拶をすることはナッシュ均衡ではない、と言えるでしょう。
挨拶をしないでおこう、というモチベーションは、僕の中にも存在しているわけです。
まあ、僕の場合、相手が挨拶してきて無視することはないし、そういう人がほとんどなので、挨拶されても無視するという戦略をとる人が実に興味深く、モルモットを見るような目で観察しています。新たにわかったことがあったら、発表します。
そういえば、先日、又吉大先生が、旧Twitterにて、実に興味深い現象を発表していました。雨の日、頑として傘を動かさない人と、ぶつからないように傘をゆらゆら動かす人の、二大勢力が街では拮抗していた、というのです。
これはゲーム理論で言うところの、タカハトゲームの進化的に安定な、均衡状態だと思われます。
割り振る利得にもよるけれど、教科書的な例では、このゲームでの進化的に安定な解は、集団内の50%がタカ戦略をとり、集団内の50%がハト戦略をとる状態です。
だから、又吉大先生は、意図せず、ゲーム理論のわかりやすい例を発掘したことになります。
ちなみに僕は、雨の日、相手にぶつからないようにゆらゆらと傘を動かす派です。
と、まあ、こんな感じで、僕はいまゲーム理論の例を探しまくって、楽しんでいるところです。
ゲーム理論は数学なので、思想ではないんですが、なんとなく教訓めいたものを帯びているところもあり、
いちばんのメッセージは、相手への想像力、そして、相手との行動の連鎖への想像力が大事だよ、というものではないか、と思います。
とくに僕みたいに発達障害だと、相手のことをつい考えないままでいることも多いです。それでトラブルになったことも多い。そんな僕には、ゲーム理論は打って付けです。
発達障害の人にこそ、ゲーム理論は役立つのでは、とオススメしておきます。