【日記】面白い小説は進化的に安定である。

 これは技術的な問題については目を瞑ったうえでの話になるかもしれませんが、

 これ以上は面白くならないというほどに面白い小説は定義上、進化的に安定なのであります。






 進化的に安定というのは、進化ゲーム理論に出てくる概念です。

 簡単に言えば、どんな突然変異が混じってきたとしても、集団全体の分布バランスが変化しない、という状態です。言い換えれば、どんな突然変異が入ってきても、すぐさまその変種が淘汰される、ということ。






 

 僕は、この考え方が小説制作にも当てはまるのだと考えます。

 もしも、いま自分が書いている小説に、なんらかの変化を加えてみたとき、その変化によってその小説をより面白くすることができるのならば、その小説は進化的に安定な状態にありません。






 小説を書く目的が単純に面白い作品をつくることであるならば、

 進化的に安定でない小説は目的を最大限に達しているとは言えない、ということになります。







 より面白くできるのなら面白くしたほうがいいでしょう。

 だから、僕たちは、常に突然変異を小説の中に投下し続ける必要があります。

 そのほとんど全てはすぐさま淘汰されてしまいますが、ときどき、適応することもあります。







 僕はいま『03:21』のプロットをひととおり書き終えました。

 次にやることは。








 突然変異の投下祭りであります。

 この設定をこっちに変えたらどうか。この主人公の性別を変えたらどうか。ここで恐怖演出を挟んだらどうか。






 隅々にまでほとんど無駄に終わってしまう突然変異を撒き散らし、

 そして、ときどき適応してくる要素を取り上げ、繁殖させ、作品の内容そのものがひっくり返ることも許容します。







 僕は常に、この作品が別のジャンルに化けてしまう危険性や、最初に考えていたことが跡形もなくなることも視野に入れながら、

 ただひたすらにより面白いことを最適だと考え、容赦なく変化を望むのです。







 そして、この作品が進化的に安定になったとき、

 僕は、この作品を書き出すことができるのです。







 正直いうと、いま出来上がったプロットはまったく面白くありません。

 でも、それでいいんです。まだ、アメーバだから。







 そもそも、理論上は、常に最適な突然変異を増殖させ、進化を許容するのならば、

 最初の状態がなにであったか、というのは、どうでもいいのです。最初の状態が面白くないのならば、すぐさま入ってきたより面白い突然変異種に淘汰されるだけの話なのです。






 

 この作業がけっこう楽しい。

 ハイになっているところであります。

 アーメン。