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曽祖父の創業地を歩く

父方の曽祖父は沖縄から川崎に渡り、馬車業を始めたと聞いています。
京浜工業地帯に沖縄の人が多く集まったことは先週の記事に書きました。

曽祖父が住み、家業をしていた場所は京浜工業地帯に隣接したバス通りでした。
人やモノを工場へ、あるいは工場から町へ運んでいたのではないかと思います。

川崎鶴見臨港バス

祖父の創業地があるのは、川崎駅と富士電機前を循環運転する川崎鶴見臨港バスが通る小田本通りの富士電機側。

川崎鶴見臨港バスは、鶴見臨港鐵道(現・JR鶴見線)が設立した乗合バス事業を起源しています。

鶴見臨港鐵道は、バス事業を始める前に軌道線(路面電車)の海岸電気軌道を買収し、産業道路の建設と鶴見臨港鐵道の旅客取扱を機に軌道線を廃止しています。

海岸電気軌道は鶴見の總持寺〜富士電機前との間で最初に開業し、その後、浅野セメント前〜川崎大師の間で開業しています。

1937年、鶴見臨港鐵道は鶴見川崎臨港バス(現・川崎鶴見臨港バス)を設立し、海岸軌道線(元・海岸電気軌道)を廃止しています。

1938年、鶴見川崎臨港バスは川崎乗合自動車を合併しますが、両社が並走していたのは富士電機前〜セメント前とあります。

曽祖父は富士電機前近くで創業していますので、富士電機〜浅野セメント、富士電機〜鶴見を中心に、富士電機〜小田栄、富士電機〜川崎大師、富士電機〜川崎駅、などをつないでいたのではないかと思います。

富士電機

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富士電機は1923年に「古河電気工業」と「シーメンス」との資本・技術提携により設立され、古河の『ふ』とシーメンスの『し』をとり、また日本一の富士山を表象して富士電機と命名されています。
川崎工場の創業開始は1925年です。

1935年に富士電機の電話部が独立し、富士通信機製造(現・富士通)が設立されています。

1972年に富士通の計算制御部から独立したのが、富士通ファナック(現・ファナック)です。
ファナックの社名はFuji Automatic NUmerical Controlから。
ファナックは工作機械用CNC(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)装置で世界一位、産業用ロボットで世界一位。

富士電機前から西に行くと横浜ゴムに由来するゴム通りがあります。
古河電気工業が1917年にアメリカのBFグッドリッチと合弁で設立したのが横濱護謨製造株式會社(現・横浜ゴム)。
古河電気工業が1923年にドイツのシーメンスと合弁で設立したのが富士電機製造株式會社(現・富士電機)。

小田水門

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川崎鶴見臨港バスの富士電機循環バスは川崎駅→富士電機は小田本通りを通り、富士電機→川崎駅は小田栄駅につながる一本東側の通りを通りますが、浅田本通りとの交差点は「小田水門」という名前になっています。

産業道路から小田川公園の横を通る浅田本通りはかつては運河で、だるま船(運送に使われた木造の和船)が通っていたそうです。
その水門があったのが交差点で、浅田本通りはそのまま西にまっすぐ続き、京町通りにぶつかります。

京町通りを北に行ったところにある小田公園にも、運河の遺構があるようですので、運河で繋がっていたのでしょう。

小田栄と川崎市電

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南武線浜川崎支線の小田栄駅は2016年に開業と新しい駅ですが、北東に伸びる富士見鶴見駅線を行くと、市電通りにぶつかります。

その名の通り、市電が通っていた通りで、その交差点は「小田栄町」と書いてあります。

このあたりの町の中心地だったのかもしれません。
この小田栄と富士電機前も曽祖父はつないでいたのかもしれません。

川崎市電の車両は、川崎市桜本(コリアンタウンがある)の水門通りにある桜川公園に保管されています。

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小田銀座商店街と小学校

曽祖父が住んだ小田本通りの一本西側の道は、小田銀座商店街です。

この商店街の南側には川崎市立浅田小学校があり、北側には川崎市立小田小学校があります、わずか400mしか離れていません。
それだけ子供が多かったのだと思いますが、小田銀座商店街の歴史ページには、「小田・浅田地区は元々人口密度が高く、商店街の長さは415メートル、その両側に100店舗近いお店が建ち並び」とあります。

つまり、ちょうど商店街の北端と南端に小学校があるとも言えそうです。

小田・浅田の両町の人々もお客さんだったのかもしれません。

参照


ウィキペディア「川崎鶴見臨港バス」
ウィキペディア「鶴見臨港鉄道」
ウィキペディア「海岸電気軌道」
鈴木写真変電所「海岸電気軌道その2」
ウィキペディア「東京都道・神奈川県道6号東京大師横浜線」
ウィキペディア「富士電機」
富士電機「沿革」
ウィキペディア「ファナック」
京町緑地と川崎運河の遺構
マイナビニュース「JR南武線には、隣の駅までICカード乗車券で乗れない区間がある」
ウィキペディア「川崎市電」
乾パンのブログ「川崎市内を散策する・・・の巻」
ウィキペディア「京浜」


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