一晩寝かしたカレー

古来より日本には『寝る子は育つ』という言葉がある。

寝ることが大好きな僕にとってはありがたい言葉である。おかげさまで縦にも横にもよく育ち、今や社会の一員としてそれなりにやらせていただいている。

そこで僕は思った。「一晩寝かしたカレーがうまい」というのは、カレーの成長を促しているのではないかと。

そう、育っているのだ。冷蔵庫の中で人知れず。

「寝る子は育つ」
「一晩寝かしたカレーがうまい」

この2つの言葉がともに真実であるとするなら、
カレーが「育つ」とは、その風味がヒトにとって好ましいものとなることを意味する。

惨めなものだ。彼ら(カレーら)の成長はヒトに消費されることで完結する。
自らの存在を他者に捧げることで終わる、そのためだけの成長。

しかし翻って、人間の成長はどうだろうか。

本能に従って産声を上げ、世話され、何も考えずヘラヘラ笑って暮らしていた幼児たちが育つのは、社会という概念に捧げられるためではないとなぜ言い切れる。

わたしたちはカレーだ。

モラトリアムは冷蔵庫なのだ。

どうぞ社会さん、わたしを召し上がれ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?