忘れられない日

11月14日
とかる同学年の男子の命日である
そんなに仲良しだった訳でもないのだが、未だに記憶に残る出来事である
今日は、彼の五周忌
彼との思い出は少ないのだが、何となく書き残しておきたいから、綴っておく

私の学年には、渡辺智晴君(仮名)という子がいた
野球のクラブに入っており、部活は陸上部
同じクラスにも、兄弟クラス(一部授業で一緒に受けるクラス)にもなった事がないから、そんなに話した記憶は無い
が、当時軟式野球部に所属していた私は、野球繋がりでそこそこ話す機会はあったような気がする
渡辺君との直接的な思い出は非常に少ないが、そんなに規模の大きな学校ではなかったこともあって、それなりに面識はあった

中学2年の秋、11月14日
私の通ってた中学校は、二期制(前期後期制)だった
その日は、ちょうど秋の中間テストが終わる日
「テストめんどくさいな〜」なんて話をしていた
帰りの会の頃だろうか、先生の招集のアナウンスがかかった
「先生方は、職員室にお集まりください」
というような、アナウンスだった気がする
一体何があったんだろう、とは思った
そして、またアナウンスが流れた
「大事な話があるので、そのまま待っていてください」
いつもとは全く雰囲気が違う、偉い先生からのアナウンス
よく分からない、謎めいた雰囲気
当時私は、何となく「誰かが死んだんだろうか」みたいな不謹慎な考えが過ぎっていた
しかし、どうも、教室に帰ってきた担任の先生の雰囲気が重たくて苦しい
嫌な予感は強くなっていた
過ぎっていた不謹慎な考えが、正解の音を鳴らしながら近付いてくるような感じがした
そしてまた、アナウンスがあった
それも、校長先生からのアナウンスである
本当に、誰かが亡くなったのか?
覚悟を決めて、私はアナウンスに耳を傾けた

「2年〇組の、渡辺智晴君が、本日亡くなりました」

衝撃だった
覚悟はある程度していた
しかし、まさか本当にそう来るとは思わなかった
それも、同学年の人間である
同学年の人間が、それも在学中に亡くなる
そんな経験を自分がするとは、全く思っていなかった
夢にも見なかったような、悪い話だ
放送が終わった後、担任の先生が声を上げて泣いていた
未だにその声は、鮮明に思い出せる
ふと周りを見渡す
呆然とする者、机に突っ伏して涙する者、みなその衝撃に驚きと悲しみを隠す事はできていなかった
私も、特別な親交があった訳ではないが、多少の面識はあっただけに、辛い気持ちになったのを覚えている

それから、死因についての噂が飛び交ったりもしたが、特に真相は語られないまま
家族からしてみれば、語りたくもないだろうから当然と言えば当然だが
彼の通夜と葬儀にも参列した
最後の別れに、涙が出てきたことも覚えている

あれから5年
渡辺君の声や、会話の内容は何気ない日常の中に溶け込んでしまって、何も思い出せない
だが、それでも彼は私の心に確かに残っている
死んだから、心に残っているだけかもしれない
けれど、彼が生きていたら……同じクラスになってたかもしれない、もっと仲良くなれたかもしれない、そして来年には酒を酌み交わしてたかもしれない
こんな形で、心に残って欲しくは無かったな、と思っている


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