あるもの探し、夏物語。おれの名前はマサオカダイキ。

みなさま、念願の〇〇…!みたいなものはありますでしょうか。インスタで「#念願の」と検索してみるとみんな食事や買い物、旅行などの際に使っているみたいですが、ぼくは今回、念願の鎌倉移住を達成しました。
まあ念願のっていうとなんかちょっと仰々しい感じがするけど、一応去年の鎌倉オープンキャンパス以来の夢でして、熱しやすく冷めやすい性格のぼくからすると半年以上も思い続けてこうして行動に移せたというのは、かなり新鮮な感覚です。

ありがたいことに、こっちになんかツテがあるわけでもなく仕事こそ一応決まったものの相変わらず住所不定でやらせてもらってます。ほんと何しにいってんのって感じでして、いい加減そういう問いに「なんか良さそうやん」で切り抜けるには限界を感じ始めたので、論破されてアイデンティティーが崩壊してしまう前にさっさと行ってしまおうという高飛びの類です。

こっちに来てからもうすぐ1週間が経とうとしていますが、アテもなく散歩してみたり電車に乗ってみたり、海沿いのカフェで縫い物に勤しんだりと、調子はいいです。
少しタンの絡んだ咳が出るのが厄介ですが、早速いくつかのいい出会いもあり、梅雨入り前の初夏が鮮やかに彩られていくのを感じます。

先日ゲストハウスの2段ベッドでぼくの上に一泊だけしていた長髪のナイスガイがいました。役者を目指しているという赤マルの似合う、翌日に誕生日を控えた男で、誕生日を1人で過ごすのがイヤでゲストハウスに遊びに来たというので、冷蔵庫に隠していたプレモル香るエールをプレゼントして乾杯した。

聞くと彼の家は横浜で、湘南に友達が多いからよく遊びに来るらしい。この日に限って友達たちは予定があったものの、遊ぶのは決まって湘南、横浜には来てくれないという。飲むにしたって遊ぶにしたって横浜の方が適してそうだが、そうは問屋が卸さない。湘南っ子は湘南から出ないのだ。そうグチをこぼす彼も不満そうには見えない。みんなが湘南の何かに惹かれている。

「ないものねだりじゃなくて、あるもの探しだ」と5年ほど前に幼馴染が言ってた。聞いた当時もそれなりに感銘を受けた記憶があるけど、なんとなく名言っぽいこと言ってんなくらいで、もうすっかり頭から抜けてしまっていた。ちょうど最近その共通の友達と話した時にあいつあんなこと言ってたよなと話し、当時は感じられなかったパンチラインっぷりを5年ぶりにヒシヒシと感じていたところで、それ以降ずっとその言葉について考えてた。

湘南にはこれがない!じゃなくて、何があるか。この人はここがだめ!じゃなくてここが素晴らしい。これもこれも今はできない!じゃなくて何が今できるか。
とまあそれっぽく解釈してみたけど正直「あるもの探し」がなんなのか完全には理解できてないし、おれもついないものねだっちゃうけど、なんとなくここに住んどきゃヒントが見つかりそうというか、おれに足りないエッセンスを吸収できそうという漠然とした期待を感じた。

2人ともビール1本でほろ酔いになりぼくは2段ベッドの下に、彼は上へと床についた。翌朝彼と約束していた通り早起きして朝日を拝みに逗子まで歩いたが、日の出予定時刻を大きく過ぎた後でおれたちがずっと見上げていたのは西の空だったことに気付き、笑いながら帰った。

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