「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」を語る。

スペラです。
「仮面ライダーリバイス」、もうすぐ始まりますね。
それもそうなんですが、今回は23日午後9時30分から東映特撮YouTube Officialにて配信が開始される「おもいっきり探偵団 覇悪怒組はあどぐみ」を紹介します。

※動画の配信は現在終了しています。

「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」は1987年1月11日から12月27日まで、毎週日曜午前9時よりフジテレビ系列で全50話が放送された作品。「特撮」というよりも「子供向けドラマ」に近いかもしれません。

後に「東映不思議コメディーシリーズ」と呼ばれるようになる日曜9時の子供向け実写作品枠がスタートしたのは、1981年の「ロボット8ちゃん」。日曜朝に子供向け番組が放送されるのは当時としては画期的だったそうです。

その後番組である「バッテンロボ丸」ではロボット路線を継続、「ペットントン」では宇宙生物、「どきんちょ!ネムリン」では妖精、「勝手に!カミタマン」では神、「もりもりぼっくん」ではロボット路線に戻る一方で動物のキャラクターも登場させるなど、人間以外のキャラクターとの交流が描かれてきました。

そんな中、「ぼっくん」の後番組としてスタートした「覇悪怒組」は、これまでの作品とは一味違うテイストでした。


小学5年生の黒樹洋(ヒロシ)、城金悟(サトル)、青野進(ススム)、君原猛夫(タケオ)、赤川矢須子(ヤスコ)は冬休み最終日、自分たちのことを調べる不審な男を撃退します。
しかしその翌日、その不審な男がヒロシたちの5年3組の教室に入ってきます。その男は落合敏彦先生で、結婚を機に退職した前担任に代わり新たな担任になったのです。児童たちのことを調べていたのも、児童たちをよく知るためでした。

その後ヒロシたち男子4人は、隣のクラスの担任で音楽教師の菊田純子先生のスカートの下を覗き、落合先生に叱られます。

「もっともっと度肝を抜くような大きなことに才能を使うことができんのか!」

この言葉でカッとなったヒロシたちはヤスコを誘い、ヤスコの放送部員の権限を使って自主映画「怪人魔天郎」を学校中に流します。
教室では盛り上がる一方、教頭先生は大激怒。

その夜、ヒロシの家に向かった男子4人の前になんと怪人魔天郎が現れるのです。


ここまでが第1話。

最初は信じていなかったヤスコも、その後純子先生と共に目撃することになります。
そして5人は魔天郎に対抗するため、偶然見つけた竹林寺の地下空間をアジトにし「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」を結成、魔天郎に挑戦します。

そんな中、早くも第3話のラストで「魔天郎の正体は落合先生なのではないか」という疑いがかけられます。
魔天郎と戦い、その謎を解き明かしていく覇悪怒組の冒険が始まったのです。


非現実的な要素が含まれる作品は、冒頭で非現実的なことが起こる場合がほとんどです。
ただ本作は観ていただければわかる通り、第1話は非常に現実的に進んでいきます。
そしてラストになって初めて非現実的な要素である魔天郎が現れるのです。

この演出には、僕は2つの目的があると思っています。

1つ目は魔天郎の存在感を強調するため。

ヤスコが「ヒロシ!好きよ!」と叫んだシーンまでと、男子4人がヒロシの家に入ったシーン以降では、なんとなく世界観が違うような気がします。

魔天郎というたった一人の不思議な男が現れたことによって、現実的な世界は一気に不思議な世界へと変わってしまうのです。
つまり現れる前現れた後でどう変わるかを示すことで、魔天郎がこの物語にどれだけ大きな影響を与えているのかがわかります。

2つ目は親近感を持たせつつ夢を持たせるため。

東映のヒーロー作品では、「仮面ライダー」の少年仮面ライダー隊のようにレギュラーの子役を登場させるなど、子供たちに親近感を与える工夫をしてきました。
逆に言うと、現実世界とは世界観そのものが根本的に異なるヒーローの戦いというのは子供たちにとってはどこか遠くの出来事だったのかもしれません。

一方でこの不思議コメディ―シリーズは、主人公の周りだけが非現実的な世界観になっているのです。
つまり子供たちは「自分のところに不思議なキャラクターが現れても、もしくはどこかの家に実際にいてもおかしくない」と思うことができるのです。

世界観そのものが違う」か「現実的な世界観の中に少しだけ非現実がある」か。例えるとすると、「ポケモンが当たり前のようにいる世界」なのか「一見普通の世界だがのび太のところにはドラえもんがいる」なのかの違いです。
どちらが良い・悪いではなく、「大きな夢を持たせる」か「親近感を持たせつつ夢を持たせる」かということでしょう。

「覇悪怒組」第1話の演出はこの「親近感を持たせつつ夢を持たせる」をより強く意識したものだったと思っています。

と、ついつい熱くなって深読み解説をしてしまいましたが、2004年生まれの僕にここまで熱く語らせてしまう名作であるにも関わらず、未だにDVDすら出ていない埋もれた作品になってしまっているのです。

僕は2018年、中学2年生のときに東映特撮ファンクラブ(TTFC)で全50話を2週間弱で視聴しました。これは今でも最短記録です。それだけハマりました。

これまでも色々な人に紹介したかったのですが、DVDもない、TTFC会員は周りにいない、仮に興味を持ってくれても観る方法がない…という悲しい状態だったのです。
ところが今回は全話公式無料配信です!これはもうこの機会に観てください!!
この記事をお読みになられたTTFC会員の方も、ぜひご自分のペースで楽しんでいただけたらと思います!

また、TTFCだけでなくAmazon Prime Videohuluでもご覧いただけます!

おもいっきり探偵団 覇悪怒組
1987年1月11日~12月27日 全50話

落合敏彦:秋野太作
黒樹洋:渡辺博貴
城金悟:中島義実
青野進:雨笠利幸
君原猛夫:石井孝明
赤川矢須子:上野めぐみ
魔天郎(スーツアクター):春田純一

原作:石ノ森章太郎
脚本:江連卓/大原清秀/浦沢義雄/掛札昌裕/中島信昭/辻野正人
音楽:本間勇輔
監督:佐伯孚治/坂本太郎/岡本明久/村山新治/近藤杉雄/辻野正人
制作:東映/読売広告社/フジテレビ

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