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ギトギト火曜日と朝日のあたる家~音楽の旅New Orleans 前編

 マルディ・グラはルイジアナ州ニューオリンズの有名なお祭り。mardiはフランス語で火曜日、grasは肥えた・脂ぎったという意味で、毎年2月の火曜日に行われる。今年(2023年)は2月21日だった。カラフルでデカい山車とか仮装行列とかあってスゲー楽しそうである。死ぬまでに一度は行ってみたいと思っている。
 さて、なんでフランス語かというと、ニューオリンズはもともとフランスの植民地だった。New OrleansのOrleansはフランス読みでオルレアン。「オルレアンの少女」というと、ジャンヌ・ダルクのことだが、この地名の由来はオルレアン侯爵という人らしい。
 だいたい入植者というのは、自分の故郷にちなんだ名前をぶんどった土地につけたがるものらしい。New YorkとかNew EnglandとかNew Hampshireとか、Newのつく地名を見れば、入植者のルーツがわかろうというもの。日本も満洲国の首都に新京と名付けたっけ。
 僕はこのお祭りのことをポール・サイモンの『夢のメルディ・グラ』(Take me to the Mardi Gras)で知った。中学時代である。

♪さあ、マルディ・グラに連れて行って 街中に音楽があふれ
ダンスが最高にイカす ところ
♪ニューオリンズじゃ夏服ですごせるんだぜ

 ニューオリンズの2月の最高気温は29度。まさに夏服OK。電気代気にしながらエアコン&こたつで部屋に閉じこもっているのが、バカらしくなるぜ。さあ、おいらをマルディ・グラに連れて行って。

 ラストのストリート・るブラス・バンドがいかにもニューオリンズ風(まだ行ったことないけどw)。ちなみに途中で聴こえてくるファルセット・ヴォイスはゴスペル・グループ、スワン・シルヴァートーンズのクロード・ジターで、彼の歌うOh Mary Don’t You Weep(マリアよ、泣くな)は、ポールの『明日に架ける橋』(Bridge Over Troubled Water)に多大な影響を与えているというのは有名な話。

 ニューオリンズはジャズ発祥の地(というより、黒人音楽発祥の地というべきか)といわれるだけに、さまざまな楽曲でその名が歌われている。有名なところでは、ジーン・ピットニーの『ルイジアナ・ママ』。でもやっぱり、なんといってもこの曲だな。▼

『朝日のあたる家』(The House Of Rising Sun)
 実はこの曲はアニマルズのオリジナルではなく、民謡で歌詞もメロディも微妙に違うバージョンが複数残っている。アニマルズ版は、身を持ち崩したばくち打ちの男の話だが、本来は、ニューオリンズのフレンチクオーター街で実際に営業していたHouse Of Rising Sunという売春宿に流れ着いた少女の歌で、ボブ・ディランのデビュー・アルバムに収録されているものが原型に近い(ばくち打ちの歌が、歌い継がれていくうちに娼婦の歌へ変質していったという説もあるようだ)。僕のフェヴァリットもこれ。

 いろんなシンガーがいろんなアレンジで歌っているが、日本では浅川マキによってつけられた日本語歌詞で、ちあきなおみが歌ったヴァージョンが迫力満点。「朝日楼」とはうまいこと言ったもんだね。

 

現存する「朝日のあたる家」(もちろん営業はしていない)。実は同じ屋号の娼家はニューオリンズに複数あったといもいわれている。

 この「朝日のあたる家」の女主人が、マダム・マリアンナ・ル・ソレイユルヴァン(Marianna Le Soleil-Levant)。フランス人。le soleil levantは、英語にするとrising sun。つまり、屋号は彼女の名前からというわけ。

ル・ソレイユルヴァンと伝わる写真。なかなかの美人だ。

歌の中では少女たちは鉄球と鎖でつながれている、というひどい扱いだったが、ソレイユルヴァンは本当にそんな鬼のような女だったのか。
 いやいや、「朝日のあたる家」とは刑務所のことで、「何かやらかした」ばくち打ちや夜の女を一時、収容していたでけの話さ、とする英語のサイトもあった。ball and chainは囚人の代名詞だ。
 どちらにしろ伝承だから、その時代時代によって微妙な解釈の違いもあるのだろう。

最後にウッディ・ガスリーのバージョンを貼っておきましょう。

後編に続く か?

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