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わが青春、自販機エロ本の世界⑤

 自販機本の人気の秘密のひとつに、モデルの質が挙げられるだろう。当時、書店売りのエロ本、とりわけ実話雑誌の世界では、生活に疲れた髪の毛マッキンキンのオバサンに無理やりセーラー服を着せたようなグラビアがまかり通っていた。それに比べれば、自販機本のモデルはぐっと若く、読者の妄想に充分寄り添えるリアリティがあった。つまり、「女高生」といえば、女高生に見えたわけである。もちろん、ピンもいればキリもいたが、現代のアイドル慣れした目から見ても充分及第点を与えられる子も少なくなかった。
 自販機本の2大アイドルといえば、小川恵子と寺山久美だろう。ちなみに、モデル名が固定化したのも自販機登場以後のことで、それまでは、「山田美智子(OL)」とか、「K・M(18歳)」とか、編集者がその場でつけたようなものがクレジットされるのがせいぜいだったと記憶している。つまり、役名はあっても芸名はなかったのである。
 小川恵子は「エロ本界の薬師丸ひろ子」という異名をもつ清純ムード漂う女の子で、セーラー服がとてもよく似合い、いざ脱ぐと形のよいふっくらとした乳房が圧倒的だった。

小川恵子。どこか寂しげなまなざしが男の保護本能をくすぐった。
可愛いので、ついもう一枚。彼女はセーラー服を着て立っているだけで、物語になってしまう。

 寺山久美は、寺山修司率いるアングラ劇団「天井桟敷」出身というふれこみで、芸名はむろん師匠の名からのいただきである。切れ長の目が特徴的な色白の美少女で、一種人形じみた雰囲気は、なるほど天井桟敷の舞台に似合いそうである。僕は寺山久美のファンだったが、残念ながら業界に入ったときには、彼女は引退していて、会うことは叶わなかった。彼女を知るカメラマンによると、セッティングなど待ちの多い現場では、ひとりで静かに文庫本を読んでいるような知的な一面もあったという。
 小川も寺山もビニール本の初期まで活躍していた。寺山は緊縛もやったが、基本的に二人とも絡みはやらず単体モデルで通した。それだけのタマだったのも確かである。

寺山久美。清らかなようで妖艶な。
こういったレトロな雰囲気がよく似合った。

初出・東京スポーツ (若杉大名義)

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