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目からビーム!154 庶民の感覚って何だい?

 岸田内閣を支持する要素は1ミリも見当たらないし、僕も大いに批判するところだが、坊主憎けりゃ袈裟までの報道にもいい加減うんざりくる。首相が主宰する政治団体の会合を料亭で行うことのどこが問題なのだろうか。
セキュリティ面からも秘密保持の観点からも料亭という密室は必要なのである。ある報道によれば、会合で使われた料亭の夕食コースが一人3万円強とのことだが、そういった諸事情を考えあわせれば決して高い金額ではあるまい。首相だって、毎日そんなところで飲み食いしているわけではなく、家ではお茶漬けサラサラなんてことも珍しくないのだ。
 マスコミは過去にも、やれ、3000円のパンケーキだ、3500円のカツカレーだ、ホテルのバーだ、カップラーメンの値段を知らん、庶民の感覚とズレていると騒いできたが、新首相が誕生するたびに、そんなものを踏み絵に差し出されてはかなわない。総理大臣という職務は彼らの考えるほど暇なものではないのだ。アメリカの大統領とゴルフをするのだって、遊びでなく大切な外交であることを彼らは知らないらしい。
 この時分、パリの名物は金色の枯葉の絨毯と香ばしい匂いを立てる焼き栗の屋台だが、ド・ゴールがその街場の焼き栗の値段を聞かれて即答できたとも思えない。チャーチルがフィッシュ・アンド・チップス(イギリスでは労働者階級の食べ物とされた)を食べているところも想像できない。庶民的であることと、政治的リーダーとしての資質はまったく別次元の話なのだ。

パリ名物、焼き栗の屋台。

 先日、佳子内親王殿下がペルーご訪問でマチュピチュを視察された際に羽織られていたフードつきブルゾンのデザインが「かわいい」とネットで評判になったが、そのブルゾンの値段が4790円で、通販でも買えるような商品であることを知って僕もちょっと驚いた。日頃、秋篠宮家の普請の費用がどうのと小姑のように嗅ぎまわる週刊誌は、こういった皇族の「庶民的」な一面につても記事にするべきではないか。おかげでそのブルゾンは「バカ売れ」なのだそうだ。皇族の質素なおしゃれが思わぬ経済効果を生んだ。
 日本にだって庶民派を代表するような首相はいた。裸一貫叩き上げで宰相にまで昇りつめた彼の終生の好物は故郷新潟の味噌で作った田舎汁。おやつは木村屋のアンパンと決まっていた。地元に帰れば、子供からお年寄りまで気さくに声をかける人柄で知られた。そんな庶民派首相の目白の豪邸の池には1匹1千万円級の錦鯉が数十匹泳いでいたそうだ。

今はなき目白御殿。

(初出)八重山日報

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