車好き足るもの

 カメラ持っとかな。

 車好き足るものとして自分の車をカッコよく写真に収めるということのためだけにカメラは持っておかないといけない。ということでコンパクトデジタルカメラ、略してコンパクトデジカメ、更に略してコンデジを購入した。ふざけているわけではなく実際にコンデジという通称で呼ばれている。12万円+税。フラッシュが付いていないタイプだったのでストロボも買った。1万5千円+税。ストロボが安いような気がしてしまう。実際にそんな気がしている。

 実家のリビングで購入したコンデジに液晶フィルムを貼ったりなんだりとしていると、親父が階段下の納からちょうどロックバンドのギタリストにステージでパフォーマンスをするときによく足を乗せられているスピーカーぐらいのサイズのケースを持って来て中身を見せてくれた。少〜しだけカビ臭かった、少〜しだけ。中に入っていたフィルムカメラ、そしてストロボに色んな大きさのレンズ、何に使うのかも分からない設計時点で明らかに古いと分かる様々な道具たちは40年以上も前のものらしい。親父が小学生の頃のものということになる。「40年以上も昔の、限定モデルや。」「これはこうやって使う。」「これをこうすると、こういう写真が撮れる。」リビングの地べたに座り込んで説明してくれた。

 いや、知らんかってんけど。親父にそんな趣味があったなんて。そんな芸術的な一面があったなんて。聞いてるふりしてほとんど話が頭に入ってなかったと思う。その瞬間においてはそれぐらいの驚きだった。しかし今になって思えば母親がうどん屋を始めるとなったときに「『笑美』って書いて『わらび』って屋号にしよう。」とかやけにしゃれたことを言っていたなとふと思い出した。正直僕も僕の弟も芸術性といえばかなりの塩梅で持ち合わせているので、あの親にしてこの子ありなんやな、と納得がいった。

 24歳にして自分の一面に納得がいった。親父も車好き足るもの...つってカメラ買ったんかな。

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