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鼓笛隊の襲来。

赤道上に戦後最大規模の鼓笛隊が発生した話。
ある日突然喪失してしまった彼女の痕跡の展示会に足を踏み入れた話。
彼女の背中に突起型選択装置(ボタン)がある話。
開発の止まった分譲地の公園にやってきたぞうさんのすべり台の話。など、
ちょっと不思議でちょっと泣ける全9編。

淡々と綴られるストーリーの滑稽さと狂気が著者の真骨頂だと思うのだけど、特に本作は少し大人の愛おしさや切なさや怖さが満載の短編集。奇妙な設定なのに日常的な温もりが妙なリアリティを醸している印象。暖かくて冷たい、けれど生ぬるくはない。そして物語の行き着く先は。

目に見えないけど確実に迫り来る脅威。現実と非日常の境界が曖昧な時こそ味わいたい読了感。


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