あなたのSUPER BEAVERはどこから

2018年夏。
私は人生初めてのフェスに向かっていた。


音楽が好きだ。

中学高校と吹奏楽部だったし、記憶を遡れば幼少期には兄が弾いていたギターに憧れて触れていたこともある(弾いていた訳ではない)。
好きな音楽をMDに集めて授業中に聴いて怒られたり、好きな曲の歌詞をノートに書いてまとめたりするような子どもだった。
今思えば昔から音楽はいつも生活の中にあった。

さて、早速相反することを言うようだが、私はロックが嫌いだった。
というか、ロックとかパンクとか、違いがわからなくて、とにかくどれもうるさく耳に障るような音楽だと思っていた。
なので所謂「ロックフェス」なるものを、食わずに毛嫌いしていた。

ではどうして2018年の私がフェスに行くことになったのか。
当時片思いしていた人と行くことになったからだ。

(良いじゃん、好きな人とフェスって。めっちゃいい。いや〜、めちゃくちゃいい。)

明瞭でいっそ清々しいまでの下心である。
人間、想い人には好いてもらいたいし、そのためには多少嫌いなものも我慢して食べるものだ。

しかし私は音楽の予習なんかよりも、可愛く見えるための洋服探しやメイクの勉強に必死だったので、結局全く音楽を予習することなくフェス当日を迎えた。

そして迎えたフェス当日。
想い人の車の助手席に乗り込んだ。
当然彼は音楽好きだったので、車内では「本日の予習プレイリスト」的なものが流れていた。
どれもこれも全く知らない曲だった。全く予習をしていないので当たり前だ。
車内で流れる知らない曲たちは、なんとなく耳から滑り落ちていった。

(今なら知らない曲であろうと興味を持って聴くことができるが、当時は「音楽」目的ではなく「下心」でフェスに参加していたので本当に碌でもない。若気の至りで申し訳ない)


その中で唯一私が「この曲誰の歌?」と聞いた曲。

それがSUPER BEAVERの「青い春」だった。


イントロから爽やかなギターメロディーと、ポップな曲調。何よりもボーカルの声に一耳惚れした。

「SUPER BEAVER良いよね」
「この人たち、今日いる?聴いてみたい」
「もちろん」

正直めちゃくちゃに緊張していたので会話はあまり覚えていないが、この会話だけはなんとなく覚えている。


到着してからは若者がフェスに集う理由がよくわかった。
楽しい。めちゃくちゃ楽しい。
「お祭りじゃん。フェスって本当にフェスなんだな。」
というわけわからないことをずっと考えたり言ったりしていた。

そしてつい先ほどお目当てになったSUPER BEAVER。
青い春しか知らなかったので、正直、曲調や声からしてflumpo○lみたいなバンドを想像していた。黒髪マッシュ色白細身が何人かいる、みたいな。

まあ、登場した瞬間から度肝を抜かれた。


全員怖すぎる。全っ然黒髪マッシュいない。一人もいない。
全っ然愛想ない。これ私が一番苦手なタイプの音楽やる人たちじゃん。
ベース怖、ギター怖、ドラム怖。


待って、ロン毛タトゥーバリバリ目バチバチの兄ちゃん出てきた。

まさかこの人があの声の持ち主???????


隣でずーっと「これが本当にSUPER BEAVER!?怖すぎるよ!?」と騒いでいた。
さぞうるさかったと思う。申し訳ない。


そして演奏が始まった。
そこからあっという間に私の心はもうSUPER BEAVERのものだった。

中学生の頃、吹奏楽部で初めて合奏に参加できた時の全身に伝う衝撃。
SUPER BEAVERに出会った時の感覚は、それに似ていた。


本当にあの声の持ち主だった。本当にSUPER BEAVERだった。青い春やってた。
見た目めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃ、良い。
めちゃくちゃ無愛想だと思ったけど、めちゃくちゃ、熱い人だった。

演奏が終わってからの私はずっと興奮してSUPER BEAVERのことを教えてもらっていたように思う。


正直、初めてのフェスはSUPER BEAVERのことしか覚えていない。
そのくらい、衝撃だった。

これが私のSUPER BEAVERの原点である。

私にとって本当に、「始まりは『青い春』」なのだ。
片想いしていた相手から教えてもらったことも、下心でついて行ったことも、今思えば全て「青い春」だ。

まだまだ音楽を知らなかった私は、ワンマンがどうとかフェスがどうとか、全くわかっていなかったので、「フェスにビーバーが出る」と言われれば行くようになり、少しずつ時間をかけてSUPER BEAVERを好きになっていった。




ちなみに、片想いしていたお相手は。

今も私の隣にいて、もうすぐ旦那さんになる






みたいな展開は全然ない。一ミリもない。
彼はたぶん結婚したと思うし、私は今日も独身を謳歌している。


村人A、これからも強気に赤を塗って頑張ります(?)



終わり。


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