DIYについて語るときに僕の語ること
本棚が欲しいと思った。それはただの本棚ではなくて、部屋に置いてあるハンガーラックの下にピタリと収まる本棚でなければいけなかった。まるで初めからそこに置いてあったかのような、ウイスキーグラスに浮かぶ丸氷の様な本棚が欲しいと思ったのだ。
オーダーメイドの本棚も良いと思ったけれど、今すぐにでも欲しかったし、祖父が家具職人だった事もあって工具の使い方は少し知っていたので自分で作ることにした。
材料は使わなくなってしまった椅子と留学生がシェアハウスに置いていったキャンバス、そして木材を少し買い足した。
外で椅子を分解-と言っても六角レンチとプラスドライバーで金具を外すだけなのだけれど-していき、本棚の「あるべき姿」について思いを巡らせた。
その姿を引き寄せる様に工具を持ち、木材を切り、釘を打っていった。釘と金槌が触れる音の煩さや椅子に使われている木材の切りにくさ、釘を真っ直ぐ打ち込む事の難しさについて考えながらあるべき本棚を作っていった。
完成した本棚は、きっとあるべき姿だった気がする。棚に若干の傾きがあるけれど、それは最初から傾く事が決まっていたのかもしれない。
あるべき本棚があるべき場所に存在して、ぼくはとても落ち着いた気持ちになった。
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