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遅効性の毒みたいな映画『へレディタリー/継承』

アリ・アスター監督『へレディタリー/継承』
2018年公開の米国映画

祖母の死をきっかけとして、ある家族が徐々に様々な事象によって崩壊していく物語な気がする。「気がする」と書いたのには(後述しますが)理由があって、如何様にも解釈可能な物語なんですよね。気になった方は取り敢えず公式サイトを確認すると良いかもしれません。

本編の感想は、まず一言で言うと怖かったです(笑)

しかも観てる時よりも観終わってからジワジワくるタイプの怖さでしたね。例えば、アッパー系の連続殺人鬼やパワー系のゾンビとかが大暴れする様な、「確かに怖いんだけど何処かカタルシスも同時に味わえる作品」とは一線を画しているんです。なんと言うか、どよーんとしたアンビエントな恐怖に包まれるんですよ。

特に後半なるにつれて母親が狂っていく芝居や娘役の随所で見せる表情や仕草は夢に出てきそうなくらい不気味で恐ろしいです。

そんでですね、特にこの映画の素晴らしい点は「解釈可能性の多さ」だと思ってます。

例えば、映画の冒頭は母親が仕事で作っているミニチュア模型にクローズアップする形で始まるので、この映画自体がある種壮大なメタフィクションである可能性を匂わせてるんじゃないかと考えられます。もう一連の事件は終わっていて、それによって精神を病んでしまった母親が箱庭療法的な意味合いでミニチュア模型を作ってるんじゃないか、みたいな。

他方では悪魔崇拝的なカルト教団が時間をかけて一つの家族を崩壊させる様をベタに描いてるとも受け取れます。また、先程のミニチュア模型(≒箱庭)に再度話を引きつけると、個人の人生やドラマなんてのは所詮限られた場所(箱庭)での些細な事象であって、何がどうなろうともこの世界に本質的な関係性は持たないんだぜって意味合いにも取れる気がします。そこからは全ては釈迦の掌の上的な東洋っぽい思想を感じる事が出来なくもないです。

まぁなんやかんや言ってますが、凄く良く出来た映画なので手放しでオススメできます。そんでこの映画を見た人同士であーでもないこーでもないと喧々諤々やると更に面白いと思います。

本筋とは関係ないですが、この映画のエンディング曲はGHOSTのSquare Hammerがピッタリな気がするので、もし本編を観た方が居ればこの曲も聴いてみてください。名曲です。

さて、それでは皆さん御一緒に、「ハイル、パイモン!!!」

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