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謎が謎のまま終わる映画『アフター・ワールド2020』

エイドリアン・カストロ監督『アフター・ワールド2020』
2018年公開の豪州映画

あらすじ紹介の前に先ずは以下の言葉を胸に刻んで欲しい。『賭博黙示録カイジ』に登場する利根川幸雄氏の台詞である。

以下、『賭博黙示録カイジ』より抜粋
質問すれば答えが返ってくるのが当たり前か?なぜそんなふうに考える、バカがっ!
とんでもない誤解だ!

大人は質問に答えたりしない。それが基本だ。無論中には答える大人もいる。

しかし、それは答える側にとって都合のいい内容だからそうしているのであって、そんなものを信用するって事はつまりのせられているってことだ。

なぜそれがわからない?
なぜ、そのことに気づかない?

さて、DVDのパッケージ裏に書いてあるストーリーを要約すると以下の様になる。
突如空が割れ、やって来た怪物達に人類の殆どは喰われ文明は崩壊した。生き残った人達はシェルターで生活しているが、そこにも無数の怪物が入り込んでしまい、何とか逃げ切った主人公のジャレットは怪物から地球を取り戻すためにある作戦を遂行する。果たして運命はいかに…的な感じだ。

しかしこの映画を観始めて暫くすると微かな予感が生まれ、後半には確信に変わった。そう、このタイトルとストーリー紹介が本編と噛み合ってないのだ。

先ず、この物語の世界設定は(文明崩壊後の)アフターワールドではなく(空の割れ目を通じてもう1つの世界と通じる)アナザーワールドで、その世界から元の世界に戻ろうとする話だし、2020年という設定は作中で言及されていない。

そしてそもそも、DVDのパッケージに登場している巨大イソメみたいなモンスターや特殊部隊みたいな人達は作中には一切出てこない。おまけに主人公達が後半で遂行する「ある作戦」は怪物から地球を取り戻す為でもなかった。

主人公達が異世界に送られてしまった理由や、怪物達が生まれた理由も全く明かされないし、作中で伏線っぽく語られる台詞も回収されないまま物語は終わってしまう。

もうね、全てが凄いのよ。俗に言う「B級映画」は好きで時々観るし、パッケージ画像が盛られてる事にも慣れてるけど、それは飽く迄も「1を10にする」盛り方なのね。でも今回のパッケージ画像は「0を10にする」盛り方をしてる点が罪深くて、なんと言うか、「B級映画的な暗黙の了解」を易々と破壊してる気がするんだよね。

あと、原題が『Hidden Peaks』なのに邦題を『アフター・ワールド2020』にしたのも正直言って理解が出来なかった。「アフターワールド」も「2020」も関係ない訳じゃん。もしかしたら邦題を命名した人って本編観てないんじゃないのか知ら。

謎が謎を呼び、そして誰も答えてくれないまま謎の終焉を迎える。まさに冒頭に紹介した利根川氏の台詞を体現したような映画でしたとさ。

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