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Picnic

LaughterというZINEが6月に創刊された。
特集「そとあそびの進化論」に編集者や小説家の方達の、様々なあそびや笑いについての記事のなかに、僭越ながら私もお笑い芸人や漫才について寄稿した。
その中の、杜伊なな子さんの「イマジナリィ・ピクニック」を読み、私もピクニックをしたくなった。
大人になってから、した記憶がなかった。

日頃、ウォーキングとは名ばかりの、運動不足の解消にもならないてきとうな散歩をたまにする。ルートの途中に、良い感じのあずまやがあり、少しそこに腰掛けて休んだことがあるのを思い出した。
近くに川が流れ、とても静かな場所だった。人も少なそうだし、あそこでピクニックをしよう!と思った途端に行きたくなった。
翌日が天気や都合的に良かったが、午後に数時間の仕事があった。それまでの時間なら、簡易的なピクニックができそうだった。

翌日AM。
自宅から歩いて橋を渡る。橋の途中に土手へ下る階段があり、広い道を歩く。目的のあずまやまでもう少しだと思うと、早歩きになった。

橋から見た河川

天気も快晴で、屋外で快適に過ごせるのもこの季節だけだ。
到着して荷物を置き、座って水を飲み落ち着いたところで、持参したたまごサンドイッチを食べた。
ライ麦入りの焼いたトーストにたまごサラダをはさんだだけのもので、味としてはかなり普通だった。かろうじて屋外で食べている分の美味しさがプラスされてる程度のものだったので、食材や風味に何か足すとか、もうひと工夫してみればよかった。
むりやり太陽光に当てながら、とても美味しそうには見える!とごまかしていたが、晴れすぎていて目が眩しく開けていられなくなり、黒いサングラスをかけ、つばの広い帽子をかぶり、おとなしく屋根の下で食べる。
自分で淹れたコーヒーをタンブラーから直接飲み、簡易的な感じが出ていると思った。

写真にラップがうつると、全て台無しになる。わかっていたはずなのに…

青空に雲が広がり、風も吹いたりやんだりで大変心地よく、付近に誰もいない。聞こえる音は小鳥のさえずりだけだった。
ユートピアは、家から歩いて20分の場所にあったのだ。
持参した本「河原や河川で見つけられる石の図鑑」も、パラパラしたが読まなかった。石を見たかったら、すぐそこの河川で石そのものを見ればいいのだ。
ぼーっと景色を眺めたり、咲いてる花を見たり、ストレッチをするなどで、退屈する間もない。

そのうち、遠くに犬の散歩をする人が見えた。相手はこちらへあまり近づかないように遠慮しているように見え、ミルクティー色のラブラドールにおやつをあげていた。飼い主が走り出すと、犬も思い切り走って追いかけて、やがて見えなくなった。
3年前まで社内のスタッフたちで世話をしていたボストンテリアを思い出し、じわっとなった。
犬の散歩の際、たまに河川敷の広い場所へ行くとリードを外して思い切り走らせるのだが、風を切ると口元がブルブルして変な表情になるのがおもしろくてゲラゲラ笑いながらそれを見た。

ピクニックには、お菓子を持参したい。
手作り、しかも焼いた菓子だと「純正のピクニック感」が出る気がする。
気がするのではなく、実際にそうだと思う。
しかし私は用意していなかったため、弊社のカフェへよく来るお客さまから頂いた、ミルフィユメゾンのパイを持参した。
ピクニックで食べるような菓子と、イメージ的にかけ離れてはいないだろうという都合のよさだ。

ショコラとバニラ、ロゴが茶色の方がバニラ味だった。本当になぜ?


そのお客さまは、何かと美味しいお菓子をくれる。
先日は、丸の内にある「発酵バターの専門店エシレ」で購入した焼菓子を渡したかったが、カフェが休みで伺えなかったので、自分で食べちゃいましたと言われた。
その日はオーナーとバイトの人が2人とも発熱し、2日間店休にしたのだ。
すぐ売り切れてなかなか買えない、エシレの焼菓子を食べ損ねた。
なぜ、ひとりだけ超元気だった私がそんな目にあわなければならなかったのか。
「また買ってきますから、元気出してください」と言われた。
私はよほど食べたそうな顔をしていたんだろう。

すぐそこに大きな木があり、下が芝生だったので横になってみた。
なにしろ、誰もいないのだ。
風が吹くと葉のこすれる音が長くながく続き、木漏れ日が眩しかった。
木陰でひんやりした芝生に、身体の背面すべてがピタと吸い付き、大地には重力がはたらいているのだ、と強く感じた。
とんでもなく気持ち良かった。
じっとしていると本格的に寝てしまいそうだったので、まあまあ気が済んだところでしぶしぶ起き上がり、また近いうちに来たい、というか来るだろうと思いながら、その後は仕事に戻った。
簡易的でもエレガントでも、自分がピクニックと言えばそれは立派なピクニックになるのだ。

この快適な季節は次の瞬間、もう夏。

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…などなど。気になったかたはぜひチェックしてみてください。

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私はお笑い芸人の漫才師ヤング、米粒写経、ミカミなどについて書いてます。