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【多和田任益×菊池修司×鳥越裕貴】『改竄・熱海殺人事件』SPインタビュー

本記事を掲載するにあたって

今年6月、無事改修を終えた日本演劇の聖地、新宿・紀伊國屋ホール。
その57年もの歴史の中で最も多く上演され、今回のこけら落とし公演にも選ばれた戯曲が、つかこうへいの傑作「熱海殺人事件」。
第1弾公演として「新・熱海殺人事件」が上演。そして第2弾公演として控えていたのが、多くのバージョンが存在する「熱海殺人事件」の中でも最も異端な「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」。
2020年、つかこうへい没後10年の節目に開催された「つかこうへい演劇祭」内で、演出家・中屋敷法仁による『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』として上演された本作は、悔しくも当初の千秋楽を迎えることができませんでした。それが今年、更なる改竄を加えた『〜復讐のアバンチュール』として、同キャストで上演される予定でした。

当サイト『Sparkle note』では、この刺激的な作品に挑む男性キャスト3名にインタビューを実施していました。
様々な要素をプレッシャーかつ刺激と化し、〝復讐〟に燃える3人の役者の言葉はとても力強く、本番がより楽しみになると共に、早く彼らの言葉をお客様にお届けしたいと感じていました。
今回は残念ながら公演中止となってしまいましたが、この2021年6月に確かに存在した『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン〜復讐のアバンチュール〜』の記録を残したいと考えました。
そしてこれを読んでくださった皆様が、いつの日かまた上演されるであろう「熱海殺人事件」に備えていただけたら幸いです。
関係者各位の許諾も頂き、ここに多和田任益さん、菊池修司さん、鳥越裕貴さんのインタビューを公開させていただきます。

そして願わくば、3度目の〝リベンジ〟が同キャストにて果たされんことを祈って――。


【多和田任益×菊池修司×鳥越裕貴】
『改竄・熱海殺人事件』SPインタビュー

2020年、つかこうへい没後10年の節目に開催された「つかこうへい演劇祭」にて、中屋敷法仁演出で上演された『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』が再び同じキャストで帰ってきた。
主演・木村伝兵衛 部長刑事役の多和田任益は、新宿・紀伊國屋ホールこけら落とし公演第1弾「新・熱海殺人事件」から2作連続での出演となる。
今回は速水健作 刑事役の菊池修司と、容疑者 大山金太郎役の鳥越裕貴の3名によるSP鼎談をお届け。
前年完走できなかったことへのリベンジ、〝改竄に次ぐ改竄〟による更なる進化、伝説的戯曲が持つ色褪せない言葉の魅力に迫る。
熱き「モンテ愛」を持った彼らの〝今〟を見届けてほしい。

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本作は1年越しの公演となります。改めて、また同じメンバーでできることへの思いは?

多和田:去年は僕たちにとっても特別な公演になりました。「モンテカルロイリュージョン」という題材は、これまでもいろんなところでやられていると思いますけど、やっぱり〝つかさんの作品を紀伊國屋ホールでできる〟ということが特別な中、僕らはそれをできたのがすごくありがたくて。
それが自分の目標でもあったので嬉しかったけど、公演が飛んでしまったり地方に行けなかったことは、僕らはもちろんきっとお客さんもすごく悔しい思いをしたんだろうなと、お手紙とかでいろいろ拝見してきました。完全燃焼しきれなかった状態だったので、またこのメンバーで集まれたらいいなとは思っていたんですけど、まさか1年越しにこういう形で――しかもこの紀伊國屋ホールが改装されるタイミングで、「新・熱海殺人事件」で幕が開けてそのまますぐ「モンテ」にバトンタッチしていただけるということで本当にありがたいです。

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多和田:だからこそ、去年以上のものを届けなければいけないという使命感もあります。本当に途轍もないスケジュール感なので、稽古自体もちょっとどうなってるのかなって気はするんですけど、それはこのメンバーだからこそできるという僕の自信もあるし、みんなへの安心感もあるので。去年できなかったこと、その先を今回はみんなで求めてお客さんに届けていきたいです。
屋敷さん(中屋敷法仁)もそう思っていらっしゃるし、副題が「復讐のアバンチュール」という、まさに屋敷さんっぽいタイトルにもなっているので、そこを全面に押し出して届けていきたいと思っております!

鳥越:もう一回できるということでより深みが出るなと思いましたし、個々の意気込みは言わずとも感じられるメンバーでもあります。
「モンテ」を初めてやった時に阿部(寛)さんの出演公演も観たんですけど、「この作品はキャストのバランスがすごく重要なんやな」って思いました。個々の熱量や役割、それが合わさった時に起こる〝モンテカルロイリュージョン〟が大切なのだと。もちろん前回も出し尽くしたつもりではいるんですけど、もっとアガれる作品だし、メンバーなんだろうなと思っているので。役者がアガればアガるほど、つかさんの作品は力を増していくということを、僕自身が「熱海殺人事件」を観た時に思いまして。そういうものを目指して、このメンバーでやれたらいいなと思いますね。

菊池:1年ぶりに戻ってこられて、なおかつこけら落とし公演の第2弾ということで。なかなか経験のできない環境下でやらせてもらえるのはすごくありがたいなとしみじみ感じています。去年、ご時世的な問題で何公演か無くなってしまって、だけど今回戻ってこられた。SNSとかお手紙を通じて楽しみに待ってくださっている方々の声を感じているので、当たり前ですけどパワーアップしたものを届けたいなと。さらに上を目指して4人で作り上げていかなきゃな、という思いがとても強いです。

プレスコールの時に「改竄に改竄を重ねた」ともおっしゃっていましたが、前回とはどのくらい違うのですか?

鳥越:もし、これを「再演」と言って演っていたら、「おい! 嘘こけ!」ってお客さんはなると思う(笑)。

多和田:「再演」という言葉の意味をみんな調べるでしょうね。「どういう意味やったっけ?」って。「中屋敷さんの中ではこれで『再演』なのか?」ってハテナが生まれるくらい、再演ではないですね。

鳥越:そういう意味では、「改竄」ってタイトルが一番合ってるのかも(笑)。

多和田:そうだね。これ「改竄」って入ってなかったらちょっと抗議ものだよね(笑)。

鳥越:しかも「復讐のアバンチュール」って屋敷さんがつけてくるってことは……よ?

多和田:うん。分かってはいたんですけどね、思った以上に「この短い期間でやるにはなかなかハードなことをしよるなぁ」と。まあそっちの方が僕らも燃えるタチではあるので。

鳥越:そうやね。しかも屋敷さんを知ってると「まあ同じことはやらないだろう」って思うし。客観的に「モンテ」を観たことでやりたいこともめっちゃ増えた中で、今は小出しにされてる感じよね。

菊池:確かに、そんな感じがしますね。お客さんも「復讐のアバンチュール」って副題を見た時に、絶対に何かやってくるんだろうというのは感じていると思うので。だからこそ、僕としてはちょっとプレッシャーもありますけどね……サブタイトルのせいで(笑)。

多和田:ポスタービジュアルも、わざわざ去年の別カットで仕様変えしてるしね。あれ、実は去年撮っていた写真の別カットがそれぞれ合わさって、ああいう形になっているんですよ。その意味も感じてもらえるよね。ははは!!

鳥越:そう! しっかり感じてもらえたらと(笑)。

稽古初日に、中屋敷さんから今回の方針説明はありましたか?

鳥越:「言葉(セリフ)を敢えてこうしてる」っていう話を初日にしてなかったっけ? 俺も今回はそういうことなんやろなというのを感じていて。元の台本上の言葉の羅列を、言いやすいように変えているところはあるんですけど、なるべく台本の〝原作味〟……と言いますか、元にあるものを忠実になぞっていくような。「落とすところは落としていってほしい」とか「役者の逃げをあんまり作らない」みたいなことを言われましたね。ちゃんと向き合ってほしいと思っているんだろうなっていうのは感じています。

「逃げを無くす」。いい意味で追い詰められていますか?

多和田:僕は物理的に追い詰められているくらいですね(笑)。

鳥越:そやな(笑)。

多和田:稽古全然せぇへんやん!みたいな(笑)。まあでも、それが「モンテ」っぽいのかなって思ったり。稽古の間はみんながそれぞれに足掻いて答えを探している感じがあって。それが屋敷さんっぽいなって思ったんですけど。具体的に何か言われたことってそんなに無いんですよね。

鳥越:元々、具体的に言わないタイプだからね(笑)。

多和田:そう。まあ「とりあえず僕がやりたいことを詰めました!」みたいなことは言ってましたね。「でしょうね」とは思ったんですけど(笑)。

付き合いが長いからこそ、ですね。

多和田:そうですね。「うんうん」みたいなところはあるかな。

菊池:去年の台本は、割と僕らに合わせてセリフを書き換えてくださったり、そういう部分が多かったんですけど。今回は割と原作というか元の台本に寄せて、僕らっぽくなく……

鳥越:それ、俺が言うたな!?

菊池:言いましたね! そうなんですよね! あ、飲みます? これ(水を差し出す)。

鳥越:「飲みます?」じゃないのよ(笑)。

多和田:(菊池の回答を)ちょっと待っててんで? 今。その先あるかな?と思ったら、「あれ、これは鳥ちゃんのと着地一緒のやつだ」って(笑)。

鳥越:こういう彼のようなフワフワした存在がいることによって、いろいろこっちは刺激受けてますよ。ああキタキタキタ!って。

多和田:そうやね。

菊池:刺激受けてるんですか?(笑)

鳥越:受けてるよ! おかしいんやから、お前~。

プレスコールの際もかなりいじられていた印象です(笑)。

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菊池:そうなんですよ~。あそこは結構バシッと決めたかったんですけど、やっぱいじられちゃいましたね~(笑)。

多和田:修司は、決めようとした時ほど決まらないからね(笑)。

菊池:そうなんですよね。決まった試しが無い。打率悪いです。

多和田:ナチュラルにいった方が決まるタイプだよね。

菊池:着飾ろうとしちゃうんですよね。……よろしくお願いします!

多和田:何をお願いするの(笑)。

早口で膨大なセリフ量を畳み掛けるようなお芝居、中屋敷さん演出の極彩色のステージが特徴の本作。この作品の魅力を改めて語るなら?
特に多和田さんは「新・熱海殺人事件」の本番もやりながらのお稽古。全くコントラストの違う「熱海殺人事件」をやる中で感じていることなどあれば教えてください。

多和田:僕は4年前「熱海殺人事件 NEW GENERATION」をやらせていただいていて、「熱海」はそこからのスタートなんです。逆にそこでスタートしていないメンバー……多分修司くんもそうだったと思うけど、(正統派の)「熱海」を観たことが無くて、この間のプレスコールで「新・熱海」を観て「こんな感じなんだ!」って言っていたような。そういう入り方のお客さんもいると思うんですけど、でも僕は最初に通常の「熱海」から入っているからこそ、初めて「モンテ」を観た時は「なんじゃこりゃ?」ってなりました。

多和田:でも、つかさんってやりたいと思ったことを抑えられないタイプの人だったと聞いて、なんだかそれがすごくしっくりくる作品だと感じましたし、前回よりさらに作品が〝分かる〟ようになったというか。別の「熱海」を同時にやっているからこそ、違いも感じる。「新・熱海」というプレーンがあるからこそ、「モンテ」が際立つんですよね。
前回(2020年)は「モンテカルロ・イリュージョン」と「ザ・ロンゲストスプリング」、その2バージョンを同時にやっていたからこその対比もあったんですけど、今回はどちらにも自分が出演しているということで、あっち(「新・熱海」)を真っ当にやるからこそ、こっち(「モンテ」)で大暴れできるところがあります。
なんだろう、「モンテ」の方がより役者が暴れている印象がある! もちろん「新・熱海」も暴れているんですけど。「モンテ」の方が異色な空間があったり、「めっちゃふざけてるよね!?」って思うところもあるんだけど、そのふざけも最終的には着地してるんですよ。「あれはわざとやっていたんだ」とか「これがこういう繋がりで、こうなっていくんだ」、「あの劇中歌も無駄じゃなかったんだ」みたいなことがいくつもあって。それが「モンテ」のすごいところだなと思うんです。
最終的に登場人物全員が愛おしく感じられるだろうし、単純にハッピーにもなれるし、グッと落ちるところもあって、なんだろうな……遊園地みたいです(笑)。喜怒哀楽がすごくて、かなり激しい作品です。

鳥越:……説明めちゃくちゃ難しいよな?

多和田:むずいんですよ。

鳥越:なんか、実際に作品の中に入ったからこそより複雑に考えちゃいますね。それこそ、元々観ていた「熱海」もそうやし、前回「ザ・ロンゲストスプリング」と並行して上演していた時もそうやけど、いろんな「熱海」に触れることで感じることがたくさんあって。
公開稽古で一瞬観ただけやけど、「新・熱海」の方は捜査の流れとかが、かなり分かりやすくなってる気がしたな。「モンテ」の場合はオン/オフが激しすぎて(笑)。だから〝(モンテカルロ・)イリュージョン〟ってタイトルになってると思うんですけど。エンタメからの急な「あぁこれ捜査(のくだり)やったわ」みたいな。お客さんも忘れるくらいの〝バグらせ〟というか。

多和田:ふふふ。確かにいい言葉かも。ほんと、観ていて〝バグる〟んですよね(笑)。

鳥越:「あぁそうや、捜査をしていて、これが容疑者で、刑事いて……」って。速水の存在に関しても「そういえば赴任してきたんやったな?」みたいな(笑)。

菊池:ははは!

鳥越:なんかすっごい……おにぎりの具材をいろいろバーンって詰め込んで、ぐわーって丸ごと食って、最終的に「あぁ美味いな~!」みたいな(笑)。「熱海」の中でも本当に異色な作品ですよ。

多和田:そうですね。

鳥越:なんかいろいろ紛らわしいことが起こるかもしれないですけど(笑)。きっと1回じゃ追い付けない面白さもあると思うし、1回目で気付くこともあれば2回目で気付くこともあるだろうし。見方一つで楽しみ方がガラッと変わるなというのを感じますね。

菊池:僕、つかさんの作品で初めて触れたのが「モンテ」だったんです。そういう目線で言うと「入りやすい作品だな」というのは個人的に思っていて。本当に〝ザ・エンタメ〟みたいな。演劇業界って今、お客さんがどんどん増えてくださって規模が大きくなっていっているなというのを個人的にも感じているんですけど、そういった新規のお客さんに、〝つか〟の……つかさんの……(思わず呼び捨てしてしまう)
多和田 〝つか〟の(笑)。めっちゃつかさんの作品やってる人みたいな感じ(笑)。

鳥越:びっくりするわ!

菊池:やっぱり、ゆくゆくは……(笑いながらも話を続けようとする)

鳥越:なんじゃコイツ(笑)。

菊池:速いセリフ回しや独特の空気感みたいなものが、新しいお客さんにも観やすくなっているので。そこが一番最初に「モンテ」から入った身として感じるところですね。そこから入ってもらって「新・熱海」や「ロンゲ」とかを観たらより深くハマれるんじゃないかなと思います。よく分からない、観たことない、という方々でも楽しめる作品になっているので。ぜひそういう方にも観てほしいですね。

鳥越:なんかきっと(「熱海殺人事件」に)入りづらさがある人はいると思うんですけど。でも一回、〝多和田任益のディナーショー〟に来たと思えば、まだ入りやすいかもしれないなと思うんですよ。

一同:(爆笑)。

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鳥越:「つかこうへい 改竄・熱海殺人事件」じゃなくて「多和田任益ディナーショー!」やったら、「たわちゃんがやんねや~」と思って、少しは抵抗なく行ける気はしてるよ?

多和田:ふふ、確かに(笑)。

実際、ディナーショーっぽさもありますしね(笑)。

鳥越:今回、それをより思った!

多和田:前回よりその要素あるよね。鳥ちゃん、新しい曲を稽古つけた時に言うてたもんね。「これはもう多和田任益のディナーショーや!」って(笑)。

鳥越:うん(笑)。観ていて普通に楽しいし、その中で自然と引っかかりができて作品に入っていけるから。多分ね、そんなみんなが思っているより怖くないですよ!

多和田:ほんと、そうかも。こっちの方が入りやすいかもしれない。つか作品って、やっぱり僕も初めて観た時は衝撃を受けたんですけど、とにかく速い。生きていてこんな早口で人の話聞くことないよねっていうぐらい速いんですよね。でもその情報量に追いつこうとする楽しさもあるし、なんか自然と入ってくる言葉があったりする面白さもあって。そこにどうしてもウワ〜ってなる人もいると思うんですけど、鳥ちゃんも言っていたみたいに「モンテ」から入ると、プラスアルファで耳でも楽しめるからとっつきやすいかもしれないですね。

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今回も新曲がいくつか?

多和田:そうですね、数曲。それぞれ1曲ずつは必ず新曲があります。

鳥越:パワーあるよね。入るべくして入った曲ばっか……まあ、〝復讐〟ってそういうことかと。

多和田:前回観てくださった方なら、「うわ、そこで入れてきたか!」ってビックリする人もいれば、納得する人もいると思う。そういう絶妙なタイミングで色味の違う曲が、ちょっと妖艶な感じや悲しい感じで挿入されるんです。「あぁさすが中屋敷さんだな」って思うかなと。でも初めて観る人でも違和感なく観られるようなタイミングになっていますので。

菊池:僕、あんまり昭和の曲とか知らなかったので、聴いていて「え? これってこの作品のために作った曲ですか?」というレベルでマッチしていて。でも調べてみたら普通にある曲だったっていう。「あ、そうなんだ」みたいな……(尻つぼみになっていく)。

多和田:惜しいなぁ……。

鳥越:惜しかったなぁ〜! 話の入りは良かったのよ。

多和田:入り良かったですよね! グッと期待しましたよね!?(笑)

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鳥越:でも確かに、1曲でも知っている曲が流れると「あ〜!」って親近感が生まれるの、あれって結構大きいって思うなぁ。

多和田:歌の力を感じるよねぇ。

そして振付は梅棒の〝すいーつ〟こと、野田裕貴さん。

多和田:すいーつさんが前回から引き続き担当してくれています。新しいシーンにも付けてくださっているし、前回あった振付にもプラスアルファで変えてくださっているところもあったり。

鳥越:すごいよな。基本的に、前日の依頼連絡で次の日の朝にはできてるもんね。

多和田:僕は同じ梅棒のメンバーだから知ってるんですけど、すいーつさんは夜中から朝8時くらいまでかけて作って、ちょっと寝てから稽古場に来る……とかをやってくれる人なので。

鳥越:どこがすいーつやねんって。

多和田:全然甘ないってね(笑)。僕言いましたもん、「あなたが一番、頭おかしいです」と(笑)。毎回「わ〜もう作ってきてる……!」って思う(笑)。曲を渡されて「この歌をたわちゃんと鳥ちゃんでやります」って言われた時、その歌を誰も知らなかったことがあって。そしたら次の日にはもうその振付が始まって(笑)。

鳥越:しかも振りもすごかったよな? 曲数的に言ったら、かなりすごかったから。

菊池:そうですね、多かった。

鳥越:しかも振りの候補というか、そういうのがすいーつさんの中にはあるんやろなと。この人にはこの振りで、とか人に合わせているのが分かるから。あぁすごいなぁと思って。

多和田:ありがとう鳥ちゃん。梅棒の力も感じていただけると思います!

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昨年公演から今回の稽古を通して、お互いに感じている魅力を教えていただきたいです。まずは多和田さんについて。

鳥越:たわちゃんは、今後つか作品を引っ張っていく……そして若手に広めるべくどんどんスパルタ先輩になっていくんやろなと。今までたわちゃんからそういうのは感じなかったんですけど、多分つか作品を……「モンテ」も含めてやり続けてきて、何か自分がしないとあかんこと、その役目みたいなものを感じたんかなぁと思って。
やっぱり、つか作品って役者が観ると絶対出たいと思っちゃうんですよ。まあ、僕がそうやったっていうのもあるんですけど。そういうのを体現して、今後後輩とかに刺激を与えていく人なのかなと。つかさんの作品、特に「熱海」とかを観て「出たくない!」って思う奴は役者じゃないって、僕は思っちゃいます。

多和田:分かるなぁ。

鳥越:ここで刺激を貰うか貰わんかで、全然役者としての方向性が変わるんやろなって。そこを引っ張っていく存在になっていくんやろなって感じています。伝兵衛役はもう……安定というか(笑)。それこそ、ホンマに気狂ってるから(笑)。

多和田:最高の褒め言葉です(笑)。

鳥越:阿部さんの時の「モンテ」を観て、たわちゃんを観て、別に阿部さんを追うこともなくちゃんとたわちゃんの中で処理していて、〝たわちゃんの伝兵衛をやってます〟っていう気概を感じているから。それであんなに歌って踊って声も枯らさず、普通にすごいこと。役者としてポテンシャル高いことをやっている。そうやって引っ張っていってくれるのがすごくありがたい。今後そのありがたさを、みんな感じてくるんやろなぁって思ってますね。

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菊池さんから見た多和田さんは?

菊池:そりゃあもう……!

多和田:はははは! そりゃあ〜?

鳥越:ははは!

菊池:やっぱり、圧倒的な存在感ですかね。隣で一緒にお芝居をやらせていただいて、お客さんからもそうですけど、こっちサイドにも伝わる圧があるというか。多和田さんに〝圧される〟んですよね。だから僕も押し返さなきゃ!みたいな気持ちになることが多々あって。なんかそれってすごく素敵だなと。僕も頑張って圧をかけなきゃ!と相乗効果を狙っているんですけど。

多和田:速水という役的にも、そうだしね。圧に負けちゃいけないっていう。

菊池:木村部長との関係性がそういう感じでもあるんですけど。多和田さんの発する一つ一つのセリフに説得力や重みがあるので、僕も負けじと頑張ろうって思います。

多和田:嬉しいな、そう言ってもらえると。

では鳥越さんについても。

多和田:僕、ちょっともう……鳥ちゃん以外の「モンテ」の大山が想像できなくて。いろいろ考えてみるんです。やっぱりスケジュールが合わないとかもあると思うし、すごくエネルギーも使うし。人によってはずっと同じ役をやっていくことが良いことでもなかったりもするし。なんか僕、「モンテ」は個人的に、コロナが収束してお客さんがいろんなところから来られるようになるまでちゃんと届けることが使命というか、届け続けたいと思っているんですよ。その中でとにかく〝鳥越裕貴〟という存在は欠かせないなって、そう思っちゃうくらい安心感があるんです。
何より、鳥ちゃんが「つか作品をやってみたい」と言ってくれて。それを僕も知ってたから、去年一緒にできて嬉しかったのもあるんですけど。なんか……鳥ちゃん自体、沼にハマっているので。これは多分自覚してると思うんですけど、大山役って一生美味しいというか、どこ食べても一生味する……スルメみたいな(笑)。骨しゃぶってもずっと美味しいみたいな感じがして(笑)。

鳥越:はははは! せやな(笑)。

多和田:それを僕も「熱海」で体感してきた身だったのですごく嬉しくて。やっぱそうだよね?どんどん追求したくなるよね?って。別作品でも一緒にやらせていただいて、この人のポテンシャルの高さは前から感じているし、普通の大山と違ってこっちの大山は芝居力はもちろん、コメディやツッコミのセンスがめちゃくちゃ重要なんですよ。それを別に言わなくてもできちゃう人だから、僕は本当に鳥ちゃんがいてくれて感謝しかないというか。鳥ちゃんがあそこでバーってやってくれるから、僕も部長としてワーッとできるなって思いがあるので。僕の中では、二人三脚のイメージです。

鳥越:はははは!

多和田:もう、足がくっついてる感じ。鳥ちゃんが「ヤダ!」って言っても、「いや、ついてきて」って引きずるくらいの気持ちで(笑)。「モンテ」には「鳥ちゃんのためにあるのかな?」って思うセリフがめちゃくちゃあって。元から書いてあるものなんですけど、「これ鳥ちゃんのためじゃないの?」って。

鳥越:セリフと言えば……今回ひどいのあるんすよ!

多和田:ふふふふ! 足されてたよな?

鳥越:足されて!

多和田:あれは屋敷さんですね(笑)。

鳥越:あれ悪いですよ〜! なんか俺悪いことしたかなぁ?って思ったくらい(笑)。復讐してきてるんですよねぇ。

菊池:中屋敷さんから何か言われました? そのことについて、ごめんねとか。

鳥越:何にも言われてない! だから悪いんよ。

しれっと台本に入っていて?

鳥越:そうです。

多和田:前回観た人は多分みんな「あれ?」って引っかかると思うんですよ。これはどういう意図で入れたんだ?みたいな(笑)。

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菊池:大山って、後半にかけてアイ子との掛け合いのシーンがすごく多いんですけど。そこでガラリと役の雰囲気を変えてしまう説得力がすごくて。後輩から見る先輩の背中、みたいなものがめっちゃ大きいんですよ。「僕も数年後こういう俳優になりたいな」っていう像を見せてくれる役者さんだなって感じていて。
僕は速水として、大山の言葉を聞いているシーンが多いんですけど、結構グッときちゃうんですよ。ステージ上ではほとんど鳥越さんの顔が見えない分、背中が見えることが多いので。その背中が語っている感じがすごくかっこいいなと、思ってしまいます。

多和田:「しまいます」って、なんか悪いことみたいな(笑)。

鳥越:おかしいな〜(笑)。

多和田:そう思いたくないけど思ってしまう感じになるから(笑)。

菊池:あははは! 違う違う(笑)。本当に素敵で。

鳥越:もっと日本語を学ばせたいと思ってますー。

多和田:ふふふ(笑)。

そんな愛らしい菊池さんに、先輩二人からもお言葉を。

鳥越:そんな菊池ですよ!

多和田:はい、こんな菊池ですね〜。「そんな菊池」と、「こんな菊池」(笑)。

菊池:そんな終わらせ方しないで! もっと聞かせて!

鳥越:分かりやすいですよ、彼は。こっちが熱量出せばちゃんと返してくれるし、パワーを持続させてずーっと走っていけるし。ああ面白いなぁっていうのは前回思いましたね。成長スピードと、つか作品に順応しようとするスピードが尋常じゃなかったから、すごく頼もしいなという思いはあって。だから今回は、どういう速水を見せていただけるのか楽しみで仕方がないですね!

多和田:楽しみでございますよ!

菊池:(アワアワする菊池さん)。

鳥越:こうして自ずとプレッシャーは感じていると思いますけど(笑)。でもちゃんと跳ね返す力を持っているんだろうなっていうのは、感じています。

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多和田:僕が初めて熊田役をやった時は、多分ここまでできてなかったかもしれないなって思うくらい、破壊力があったんですよ。正直、つか作品ってムズいから、最初は台本読んでも分かんないことが多すぎて。やってみて初めて分かることもあれば、全然分かんなかったこともめちゃめちゃあるんですよ。でも修司は、分からないと思ってもそれを跳ね返す勢いと力強さがある子だから。それって、本当につか作品をやる上でとても重要なことなんです。

鳥越:重要やね。

多和田:言葉とかに負けない圧を時々出してくるんですよ。そういう顔を、チラっと。そういうのを前回から見ていると、先に「熱海」をやらせてもらった身としては……、偉そうなことは言えないですけど、当時の自分よりも数段上のことにトライしようとしているんだなって感じたので。
だから、別にプレッシャーをかけるわけじゃないんですけど、去年とはまた違った面を修司は本番で見せてくれるだろうと思っているので、そこを僕らは楽しみにしています。お!っていうタイミングで、急にヒョコッと出てくるんですよ。予想もしていないところで急にグイッときたな、みたいなことがあったりする子だから。これは予想ですけど、多分それって意図的にはやっていなくて。ナチュラルにやっちゃっているから、それってものすごい才能だなと。とても頼もしいと思っているし、楽しみでもあるんです。

菊池:……え、具体的にどこですか?

鳥越:へへへへ。

多和田:そういうのはね、具体的に言うことじゃないの! こういうタイプは具体的に言うと意識しちゃうから。意識しちゃって一生できなくなるから。

鳥越:なるなる。

菊池:ははははは!

お見通しなんですね……!

多和田:だから言わない方がいいんです。去年出会ったばかりだし、この作品しか一緒にやってないけどもう分かるんですよ、この子がどういうタイプなのか。本人はとても気にするんですけど。

鳥越:突発的に出てくるものがすごいからね。それに勝るものはないから。

多和田:そう、それも才能だからね。本当に。

鳥越:だって荒井のあっちゃん(荒井敦史)がずっと気にしてるんやで?(笑)

菊池:へへへ、そうなんですよ(笑)。

鳥越:兄貴が気にするってそういうことやろな? 自分のできないことをできる人がいると、やっぱり気になっちゃう。

多和田:「なんか気になるんだよね」と言っていて。でもそれって役者としてすごく重要なことじゃないですか。速水って、かき乱されつつも負けちゃいけなくて頑張ってグイグイ来るってポジションなので。やっぱり修司みたいな子がやってくれた方が、より作品の勢いを増すことができるというか。
去年は「この子初めてつか作品に飛び込んで、しかもいきなり『モンテ』って大丈夫かな?」という不安もあったんですけど。でもそれを跳ね除けてくれる魅力とパワーがある子だったので、むしろありがとうと思っていますね。しかも本人が楽しいって言ってくれてるから。……一つ面白いことがあって。修司が去年「モンテ」をやった後に別の作品で「いや〜『モンテ』はこうだったから〜」って比べていたらしくて(笑)。そこはなんか可愛いな〜と思って。

鳥越:確かに(笑)。

多和田:作品の魅力ってそれぞれ違うんですよね。作品ごとのカラーも、やっていることも。修司は分かりやすく、そういう魅力を「モンテ」から感じてくれたんだなと思って。さっき鳥ちゃんも言ってましたけど、つか作品を経るとやっぱり何かがちょっと変わるんですよ。意識していなくても、ちょっと芯が太くなったり、視野が広くなったりするもので。そういうのを多分、気が付いたら口に出してたみたいで(笑)。「『モンテ』をやったから、もっと味の濃いものをやりたいですね」みたいな(笑)。そこがすごく可愛いなと。

菊池:ははは! いやもう、これはクセになっているというか。あの、僕サイダー好きなんですけど。

多和田:え、何の話……?

菊池:へへへ(笑)。毎日サイダーが飲みたくなるんですよ。

一度ハマると……みたいな?

菊池:そうです!

多和田:あ〜なんか言ってたわ。「自分が飲みたいから楽屋に差し入れする」とか言ってたな?

菊池:そうです。毎回舞台の初日に、マネージャーさんに「水じゃなくてサイダーをお願いします」と言って(笑)。

多和田:独特ですよね(笑)。

菊池:いろいろな作品をやらせてもらって、終わった後に気付くことがたくさんあるんですよね。

鳥越:待ってくれ、サイダーの話なんやったんや……。

菊池:いや、サイダーみたいにハマりますよっていう(笑)。

多和田:自分の中でサイダーにハマってるのと同じくらい、「モンテ」にハマってるってことを言いたかったんだと思います(笑)。

菊池:そういうことでございます(笑)、よろしくお願いします。

多和田:菊池修司です。

菊池:菊池修司です。ソニーミュージック所属です。

多和田・鳥越:なんやコイツ!(笑)

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リベンジマッチを目前に控え、公演を楽しみにしている皆さまへメッセージを。

多和田:去年観てくださってまた来てくださる方も、去年来れなくて今年来れる人も、ご時世的に来られない方もいらっしゃると思うんですけど。観た方が自然と「モンテ」というものを欲する体になってほしいなと思っています。
つか作品って毎年やっていて、「熱海殺人事件」は恒例行事みたいなところでもありつつ。そこに「モンテカルロ・イリュージョン」というものを一緒に並べられるようになったらいいなというのが僕の目標なんです。それを叶えるためにも大事なリスタートのタイミングなので、無事にやり遂げたいという気持ちと。ただ、僕らがやりたいと思っていても、やっぱりお客さんが観たいと思わないと成立しないですから。だからお客さんに「また観たい」と思ってもらったり、今回観られないお友達とかに「マジで『モンテ』超良いから、世の中が落ち着いたら絶対に行った方がいいよ!」って自然と言ってくださるような、そんな作品にしたいです。

鳥越:これはきっと、どの「熱海殺人事件」もそうやと思うんですけど、本当に今、そのキャストでその演出家さんで、今の人間力でできることを全力でやっているので。そして「モンテ」に同じ公演は二度と無く、その時その時に昇華されてまたどんどん進化していく作品でもあります。今の「モンテ」を観ていただけるのはホンマに今しかないので。悔いが残るくらいやったら一回生で観劇していただきたいですし、皆さんにパワーを与えられる作品になっていると思います。これからまたお客さんと一緒にこの作品の幅をどんどん広げていけたらと思っておりますので、ぜひ劇場に来ていただけたら嬉しいです。

菊池:ご時世柄、ずっとこういう環境、状況ですけど。1年前の気持ちみたいなものを、僕ら自身も胸にしながらこの1年間過ごしてきましたし、1年後にこうしてまたやれると聞いた時にはやっぱり楽しみで、この気持ちを皆さんに届けなきゃいけないっていう思いがありました。そういうパワーアップした……うーん、あ〜ダメだ。なんか難しいですね(笑)。

鳥越:思ったこと、そのまま言った方がええよ。

菊池:そうですね! (発言が)3番目っていうのがプレッシャーになっています。

多和田:ははは!

鳥越:「3番目っていうのがプレッシャーになっています」ってどういう感想やねん!

多和田:書いておいてくださいね(笑)。

菊池:ダメです!(笑) 前回からいろいろ変わったところもありますし、去年観た方もそうでない方も本当に楽しめる作品です。このご時世の空気を吹っ飛ばせるような作品になっているので、観劇し終わった頃に「何を観ていたんだろう?」と思う方が、もしかしたらいるかもしれないですけど(笑)、それがこの作品の面白さでもあって。ものすごい情報量と、驚きの結末が待っています。それでまた「『熱海』面白かったな〜」と思って、いろんな人につかさんの作品を知ってもらえたら嬉しいです。全然何も考えずに劇場に来て、この作品を観ていただけたらと思っております!

多和田・鳥越:(見守って頷く)。

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(写真中央)
たわだ・ひでや
1993年11月5日生まれ、大阪府出身。最近の主な出演作に「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2」(光宗 悟役)などがある。新装紀伊國屋ホールこけら落とし公演『新・熱海殺人事件』には熊田留吉役で出演。ダンスエンターテインメント集団「梅棒」メンバーとしても活動中。
オフィシャルサイト
Twitter
(写真右)
とりごえ・ゆうき
1991年3月31日生まれ、大阪府出身。最近の主な出演作に、舞台「結婚しないの!?小山内三兄弟」(小山内天授役)、舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』(中島 敦役)など。2021年8月、ミュージカル『眠れぬ森のオーバード』(ホムロ役)への出演を控える。
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(写真左)
きくち・しゅうじ
1995年11月10日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇(沖田総司役)、舞台「HELI-X」(アガタタカヨシ役)など。2021年8月、舞台「東京リベンジャーズ」(半間修二役)への出演を控える。劇団番町ボーイズ☆のメンバーとしても活動中。
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『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン ~復讐のアバンチュール~』

【日程】2021年6月24日(木)~27日(日)
【会場】東京・紀伊國屋ホール
【作】つかこうへい
【演出】中屋敷法仁
【出演】多和田任益、菊池修司、兒玉 遥、鳥越裕貴

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鳥越裕貴さん掲載バックナンバー
『Sparkle vol.44』

舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』
撮り下ろしグラビア&インタビュー8P
+綴じ込み付録 特製ピンナップ


写真:田代大樹
テキスト:田中莉奈

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