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新型コロナ「第2波」の本当の恐ろしさとは? 鍵は「突然変異」

>数千万という犠牲者を出した1世紀前の史上最悪のパンデミック「スペイン風邪」など、人類とウイルスとの壮絶な攻防史から、教訓と処方箋を提言した本が、新型コロナウイルス感染拡大を受け、このほど緊急再刊された。英国人ジャーナリストで社会史家のトム・クイン著『人類対新型ウイルス 私たちはこうしてコロナに勝つ』(朝日新書)だ。

前書の『人類対インフルエンザ』の刊行は10年前、豚インフルエンザがパンデミック化した直後だった。その後ほどなく豚インフルエンザは終息したが、2020年の今、われわれは新型コロナウイルスのパンデミックに苦しめられている。

今回、新型コロナウイルスに対する予防や治療などについて日本語版補遺を執筆した科学・医療ジャーナリストの塚崎朝子さんは、新型コロナウイルスがこれほど短期間に広がった理由を主に3つ挙げている。

(1)ウイルス要因:このウイルスはヒトの細胞にくっつきやすい。結合の強さはSARSウイルスの10倍以上という研究もある。

(2)宿主(ヒト)要因:ほとんどの人類が初めて遭遇した未知のウイルスだった。人類の多くが免疫を持っていなかったうえ、人生100年時代といわれる日本では糖尿病や慢性腎不全など免疫学的弱者が多く、ステロイド薬やコイガン剤など、治療薬で免疫低下作用を持つ薬がいくつもある。

(3)環境要因:国境を越えた人びとの往来が急増した。

そのうえで、<SARSを封じ込めた経験が、中国当局、WHO、さらに日本が判断を見誤ることにつながったことも指摘されている>としている。

新型コロナウイルスはスペイン風邪同様、変異によって毒性が高まる懸念を多くの専門家が指摘する。有効な治療薬が待たれるが、塚崎さんは期待される5つの薬を挙げている。インフルエンザ治療薬のアビガン、エボラ出血熱などの治療薬であるレムデシベルの他には、喘息の治療に用いられるステロイド吸入剤オルペスコ(一般名シクレソニド)、膵炎の治療薬であるフサン(一般名ナファモスタット)、抗HIV薬であるカレトラ(一般名ロビナビル・リトナビル配合剤)だ。ワクチンの予防接種では、ウイルスの遺伝子情報を体内に注入する「DNAワクチン」がアメリカやドイツで進んでおり、日本も追いかけているという。

世界でロックダウンが徐々に緩和されていくなか、日本でも26日に首都圏と北海道で緊急事態宣言が解除されたことで、全国的な解除となった。しかし、解除後も、治療・予防の「武器」がそろわない間は、「人と人の距離を開ける」「三密を避ける」「石鹸で手洗いを丁寧にする」などの一人ひとりの予防が引き続き重要になる。ウイルスの活性が高まるとされる秋冬には再び牙をむいて私たちを脅かす可能性は高いからだ。

世界的な終息の鍵となる「集団免疫」は、おおむね60%ほどが感染することで、ウイルスはヒトの間で感染を広げられなくなり、流行は沈静化するというものだ。獨協大学医学部微生物学講座教授の増田道明氏は本書で、「感染者を抑えてオーバーシュートを回避することと、感染者を増やして短期間での集団免疫を形成すること、人類は明らかに相反する課題に挑まなくてはならない」と語っている。

前書の日本語版序文の中でクイン氏は、こんな不吉な指摘をしている。

<……スペイン風邪の時も第一波が去ると、だれもがこれで流行のピークは過ぎたと思った。ウイルスがしばらくなりをひそめている間に変異し、“毒性”を高めていることなど知るよしもなかった。そして第2波が襲ってきた。不意をつかれた政府が事の重大さを理解した時には、すでに手遅れだった。恐るべき破壊力を備えたウイルスが誰彼かまわず襲いかかり、瞬く間におびただしい数の人命を奪っていった……>

<……そうなった時にどれくらいの死者が発生するか推測するのは難しいが、少なくとも全世界で何百万単位の犠牲者が出るのではないだろうか。おびただしい数の死者が出るばかりではない。各国の企業や組織、さらには国際機関の機能が麻痺することも考えられる。(中略)日本やヨーロッパ、アメリカなどの大企業は、主要スタッフを含む多くの従業員が働けなくなり、もはや維持・運営ができなくなってしまうかもしれない。同様に、保険医療当局を含む政府機関や各省庁も、対応能力が著しくそこなわれる恐れがある……>(山田美明、荒川邦子訳)

第2波の恐ろしさを事前に知っておくこと、それがわれわれの命を守るために必要な「武器」となるだろう。

(AERA dot.)


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