普段着を着物に、の壁

唐突に着物で生活したくなった。産後スタイルが悪くなったので、着物なら全て隠した上でオシャレに見えるかもしれない、骨董市で1着五百円とかで売ってるのを見たことがあるから貧乏オシャレができるかも。そう思い立ったが吉日、近所のリサイクル着物屋さんや呉服店までぶらりと子供を抱っこ紐に入れてお出かけすることにした。

私は某フォークデュオ発祥のナントカモール近所に住んでいる。そのナントカモールには実は呉服店やリサイクル着物屋が4、5軒(もしかしたらもっと?)点在しているので着物デビューにはもってこいだろう。そう考えA店へ。

「すみません。全くの素人なんですが、着物を見せていただければと思いまして。」
「あー。何が欲しいか言ってくんなきゃ出せないよ。ここはリサイクル着物屋なんで。」
「そうですか。勉強不足だったようなので出直します。」

なんか、出鼻挫かれショボーン…リサイクル着物屋だと欲しいものがわかってないと接客もしてくれないのかい。たしかに、洋服の古着屋で「服を出せ」と言われても色々あんだし勝手に見ればぁ、ってなるかもしれない。

2軒目は着物と帯、セットで1500円!と銘打ってる店だった。安っ。そっと手に取ると、着物も帯も6千円くらいの値札が付いている。なんかあるぞ…と思っているうちにとりかこまれ、着付けてもらうことになった。着物姿の自分にうっとり、じゃあこれ買います!ってだけじゃあ終わらない。高い反物を当てられ、電卓を叩いて50万。無理ですよ、着物のきの字も知らないのに。でもなかなか諦めてくれない。喉がからからになって、疲れ果ててこれなんかに似てるな、あー、エステの体験だ…

子供がぐずってると言い張ってほうほうの体で逃げ出した。1500円の着物と帯は無事買えたが、店員さんのがっかり顔が心に沁みた。

(今日はもう、なんか、帰ろう)

私は江戸時代の町人のように、気取らず適当に着物と遊ぶ生活がしたいだけなのに、立ちはだかる高い壁。こっちの僻みもあるだろうが「金持ち以外来るんじゃないよ」「なんも知らないのに何しに来たの?」という空気があるような気がしてしまったり、なんだか気が重い1日になってしまった。

でも負けない。親からなんか譲り受けたわけでもなく、知識も金もゼロ。洋服買うより安く済ませたいとか思ってる子供産んだばかりの女がどのようにして着物を着る生活を始めたかの記録をつけることにする。
#着物

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