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一方向からの情熱的報道

最近の、一方向からの情熱的報道に、私のように戸惑われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方のご参考になれば、と思い、ご紹介させて頂きます。判断の指標になるかも知れません。

世界で起こっている事の政治的な判断は、真実はシンプルなのかも知れませんが本当に難しく、簡単に決めつける事はできません。
いくつかメルマガを取っていますが、毎週届けられる信頼のおける方の情報は、ご自分の足で集められれた一次情報も多く、楽しみにしております。
以下にご紹介させていただく高城剛さんのメルマガは、ご本人もSNSでの一部の転載を許可して下さっております。

2022/3/18
今週もウクライナ情勢と今後の世界的変化につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

今回のウクライナ紛争の本質的問題は、米国のネオコンとリベラルホーク勢力の復活にあります。

新保守主義呼ばれるネオコン(Neoconservatism)は、自由主義や民主主義を重視してアメリカの国益や実益よりも思想と理想を優先し、武力介入も辞さない超党派政治派閥です。
1960年代、米国の平和主義的な外交政策やカウンターカルチャー、特にベトナム反戦運動の高まりに嫌気が差したなかから生まれてきました。

このネオコンと重なりあう政治思想が、リベラルホークです。
ネオコンは、保守主義だった共和党から民主党へ鞍替えした経緯から(だからネオ)、両党に跨って暗躍しますが、リベラルホークは民主党のタカ派外交政策・介入主義者で、代表的な人物はクリントン夫妻です。
その名の通り「民主党タカ派」=リベラルホークは、イラク、アフガン、シリアで軍事的な作戦を起こしては失敗し、中東および東欧の「カラー革命」に関しても上手くいっていないことから深刻な崩壊に瀕していました。

90年代のビル・クリントン政権では、人道介入主義リベラルホークと言われるマデレーン・オルブライト国務長官がユーゴ空爆やコソボ紛争に関与し、続くネオコンに支配されたジョージ・H・W・ブッシュ政権ではドナルド・ラムズフェルド、ディック・チェイニーやコリン・パウエルらが湾岸戦争を行い、このネオコンとリベラルホークが何十年にも渡って他国へ「人道主義」を掲げて介入しました。
目的は、世界各地の民主化という名のアメリカ化(Americanization)で、リベラルホークもネオコンも軍産複合体からの巨大な資金援助により支えられています。

オバマ政権では、ヒラリー・クリントン国務長官の元、代表的ネオコン論客ロバート・ケーガンの妻であるビクトリア・ヌーランドやアントニー・ブリンケンらが要職に就き、イラク戦争とアフガニスタン戦争の継続、リビア戦争、シリア内戦、イエメン内戦、そしてウクライナの政変に大きく関与してきました。

しかし、トランプ政権によってネオコンとリベラルホークは一層されます。
トランプ大統領の政策は、膨大に膨らんだ戦費を止めるため世界各国に駐留する米軍の撤退を主張し、結果、米国が暗躍する紛争は世界中で少なくなりました。

その後、バイデン政権になるとネオコンとリベラルホークが復権。
2014年のウクライナ政権を転覆させて国を二つに割ったビクトリア・ヌーランドやアントニー・ブリンケン、サマンサ・パワーらが要職についた他、国防長官には元アメリカ中央軍司令官で巨大軍需企業のレイセオン・テクノロジーズ取締役のロイド・オースティンが就任しています。

このネオコンとリベラルホークの長年の敵が、ロシアなのです。

ネオコンの源流はトロツキイストで、ソ連崩壊後もスターリンを称揚するロシアに反発を抱く東欧系ユダヤ人をルーツに持つ人たちです。
また、リベラルホークは、長年冷戦時代にソ連と戦ってきた因縁を今も抱え続けています。

今週、米国はロシアが侵攻しているウクライナへの武器支援を強化するため最大2億ドルの予算支出を承認したと発表しました。
これで過去1年間で米国による対ウクライナへの安全保障支援の総額は12億ドルに達し、今後もまだまだ増えると思われます。

ネオコンとリベラルホーク、そして巨大軍需産業。
彼らが米国政権中枢にいる間は、ウクライナに限らず、世界中で緊張や紛争が途絶えることはないでしょう。

以上のレポートの一週前の高城氏のレポートもご紹介させて頂きます。


2022/3/11
今回の騒乱は、2014年に米国によって起こされた市民運動「マイダン革命」に端を発します。
ウクライナ=EU 連合協定の署名を中止する代わりに、ロシアやユーラシア経済連合との結びつきを強化するという当時のウクライナ政府の決定が発表された直後、米国に仕掛けられた市民運動が一気に巨大化しました。
レーニン像を倒し、暴動と略奪が日常化。
キエフの独立広場は、抗議運動参加者によって市庁舎を含めたいくつかの行政庁舎とともに占領・封鎖され、多数の死傷が出ました。
この時のキエフの荒廃ぶりは、戦火の現在より酷い有様でしたが、いわゆる西側諸国で詳細が報道されることは、ほとんどありませんでした。

こうした暴力によって政府を転覆。時の大統領だったヤヌコーヴィチとその他の政府高官らはロシアへ逃亡します。
そして、抗議運動の参加者は大統領府の管理とヤヌコーヴィチの私的不動産を事実上強奪しました。

この2014年の政権を転覆した際、米国民主党政権時の国務次官補ヴィクトリア・ヌーランドとジェフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使が行った電話の録音が何者かに盗聴され、YouTubeで公開される事件が起きました。
その電話の内容は、ヌーランドが「ウクライナ新政権の首相ポスト候補3人から、米国務省はアルセニー・ヤツェニュクを選んだ」と米国が内政干渉どころかトップを選んだことを露呈しており、ウクライナ問題に対し強弁な姿勢を取らないドイツとフランスに対して「FUCK the EU!」と罵りました。
これを聞いたドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ヌーラントの発言を「絶対に容認できない」と述べ、欧州理事会のヘルマン・ファン・ロンパイ議長も、この発言を「受け入れられない」と非難しましたが、大きな騒ぎになることはありませんでした。

その後、ヌーランドはトランプ政権発足と共に国務省を退職しましたが、バイデン政権と共に再び国務次官に返り咲きました。
こうして、2014年にウクライナ政権を転覆させたプロジェクトのトップだったジョー・バイデンと実行部隊のトップだったヴィクトリア・ヌーランドが、2021年にホワイトハウスで息を吹き返したのが現在です。

こうして、米国民主党政権時にウクライナで問題が勃発します。

西側メディアでは、2014年の「マイダン革命」を抑圧に対する民主主義の勝利として「演出」してきましたが、実際は欧州安全保障協力機構(OSCE)によって認定された選挙で選ばれたヤヌコビッチ政権を、暴力的クーデターで倒したことが事実です。
言うまでもなくクーデターは憲法に反する行為です。
2014年4月、CNNのインタビューでヌーランドは、「米国はより強い民主主義的な政府を目指すウクライナ国民の欲求をサポートするために50億ドルを拠出した」とインタビューに答えています。

そして、クーデター政府初日にロシア語を公用語から外したことにより、東部の国民がロシアに助けを求め、西部で米国が支援してきたネオナチの憎悪犯罪頻発し、オデッサなどでロシア人殺害する事件が多発しました。
こうした状況から自衛するため、クリミア、ドネツク、ルガンスクが独立に向かいます。

現在、ウクライナから欧州へと向かう人たちが徐々に西側のメディアの生放送に出演するようになりました。
先週、フランスのテレビ局に出演したキエフの女性は、「家族はまだキエフです」「戦争が起こるとは思わなかったが噂が広がり4日前脱出した」「紛争の元は2014年から始まり、日々の暮らしが酷くなってる」「今年は燃料費が最上昇、賃金の半分が消える」「あのパペットのせいだ」「ゼレンスキーは傀儡で選挙は怪しい」「反政権のテレビ局4つを閉鎖、ジャーナリスト数人死亡」「ロシア侵攻を歓迎」と発言し、番組の主旨と異なることから途中で打ち切りになりました。

また、ドイツの放送局に生出演したウクライナから脱出した人は、「武器を手にした元囚人たちは地元民に強盗やレイプなどのを悪行を働いている」「ゼレンスキーが囚人を釈放して武器を与えたことは、西側ではほとんど報道されてません」「彼らはまず、縄張り争いを始め、一般市民を標的にし始めました」「囚人がロシアと戦う理由はありません」「ウクライナの人が恐れているのは、自国の武器を持った囚人たちなのです」「ゼレンスキー体制は邪悪な存在です」と話しています。

果たして「真実」は、どこにあるのでしょうか?

2014年からのウクライナ問題を追って作られた巨匠オリバー・ストーンによるドキュメンタリー映画「ウクライナ・オン・ファイヤー」https://www.youtube.com/watch?v=IC4nynI3uKQと、それに対抗するように作られたドキュメンタリー映画が、米国に住む元イスラエル軍所属だったユダヤ人によって撮られた「ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い」(https://www.youtube.com/watch?v=te6XqAEXJvs)。
これを見るとわかりますが、いま世界に「ふたつのウクライナ」があり、情報過多の現在、「真実はひとつではない」ことをウクライナの内戦が教えています。

立っている位置が違えば見え方が異なるもので、ここに分断の本質があるのです。


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