見出し画像

『フリーストーリー提供します』 編集中 悲劇のコメディアン

こんにちは。
 あつしと申します。
 御利用は自由にどうぞ。
 YouTubeやtiktok、なんでも構いません。
 添削が必要でしたら、仰って下さい!
 編集中の作品が多々ありますが、一つのアイディアとしてどうぞ!
 本格的な御依頼もお待ちしておりますので、ぜひお問い合わせ下さい。
 お問い合わせ方法は、どちらからでも構いません。
 では、どうぞ! 物語はこちらから⇩


ある男がいた。
彼は、とても優しい気持ちの持ち主。
幼い頃、両親や兄弟の前でおちゃらけると、みんなを笑顔に出来ることを知った。
幼い頃から、お笑い芸人を目指す。
お笑い芸人を目指そうと思ったきっかけは、病気がちだった母に、病室にて、考えたネタを見せたところ、笑顔になってくれたから。
小学生後半あたりになると、男はみんなの注目の的になる。
人気者になり、中学校に上がると、男の笑いは先輩にいじられるようになる。
はじめは見せ物になっているような気分だけだったのだが、徐々に先輩たちはエスカレート。
男に暴力を振るうようになる。



男は、暴力を振るわれながらも、先輩たちが笑っている姿を見ると、「これでも人は笑うのか」と思う。
痛い!というリアクションを、派手にやればやるほど、みんなは笑う。
毎日続いたこの流れ。
ある日、リアクションで笑いをとっていると先輩たちに昼ごはんに誘われた。
ご飯を食べさせてもらったり、遊びに誘ってくれたり、迎えにきてくれるようにもなった。
ただ、先輩たちは男をいじるときは暴力。
男が派手なリアクションをとるのが、面白かったから。
高校に上がるとさらにエスカレート。
先輩たちに色々な場所に連れていかれ、リアクションを披露する。
本人は、笑ってくれるからという気持ちだけでやっている。
本心は屈辱的。
ある日大人たちの飲み会に参加したとき。
いつものようにリアクションを披露した後、お金をもらった。
嬉しくなかった。
このあとも、沢山の場所でリアクションを披露させられ、みんなは男にお金を投げた。
しばらくすると、男はテレビからのオファーがきた。


夢だったお笑い芸人になった頃、母親が死んだ。
悲しんでいる余裕は男にはなかった。
多少暴力は減ったものの、テレビでのいじられかたも、ほぼ暴力に近かった。
もっと派手なリアクションをするようにと指示されたこともあった。
なぜか殴られているだけなのに、お金が入ってきてしまう。
男は、こんな世界に絶望していた。
自分の存在理由が分からなくなっていた。
真面目な発言をしても、頭を叩かれ馬鹿にされる。
自然と派手なリアクションをとる。
笑いが起き、金がばら撒かれる。
馬鹿でいないといけなかった。
悲劇のコメディアン。
ある日心に限界がくる。



いつのまにか手に入れた大きな家。
ほぼ使っていない部屋。
男は孤独だった。
苦しいと訴えても、誰も相手にしてくれない。
鬱かもしれないと相談しても、頭を叩かれ笑われる。
そんな状態で舞台にたっても、痛みに耐えていながらも笑われる。
なにをしても笑われる。 
ある日の企画、男は死んだ設定で、遺影が飾られた。
その遺影を見て全員が腹を抱えて笑っていた。
生きている中で、自分の遺影を見るなんて思わなかった男は、腹をくくった。

「死のう」
遺影のせいで、死が近いものになってしまった。

男は世界を恨み、笑いものにされ続けた人生を恨み、歯を食いしばり、涙を流しながら、最後に自分を笑ってきた人間たちを嘲笑うと首にロープをくくり、足元の椅子を蹴った。


男が死ぬと、その遺影を見て笑うものは誰もいなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?