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BGMの妙。

■映画で蘇るライブと和久井映見の懐かしいCM

♪~私は求めないあなたのコンセンサス!(私は求めない/FOUL)バンドFOULの映画を見てすっかりFOULかぶれしているオーキです。音楽映画FOULの監督は元スペシャで番組を作ってたディレクターの大石規湖さんです。監督はFOULのことをずっと好きなファンだからこそ、また見てみたいライブを最高の形にまとめて映像に落とし込んだ、疑似ライブハウスを体感したような作品でした。FOULの休憩から早いもので16年が経ち、音源も廃盤となってしまっているいま、スクリーンで言語化不可能なFOULのライブを追体験できたのは、サイコーでひたすら楽しい時間でした。

映画FOUL 予告

スクリーンでライブをみていたら自然とガッツポーズが出て、わけもわからない力がみなぎるのを実感する…そこに脳内カットインで、「うまいんだな~これが!」モルツのCMの和久井映見まで見えてくる。

いくつになっても単純で、バンドや音楽にワクワクしてパワーをもらうんだなと。そんなパワーになる曲たちを今月も風の吹くまま気のむくまま、音楽雑談を更新したいと思います。というわけで「歌謡曲に魅せられて」雑談回転!

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■ゴダイゴで爽やかな朝を過ごす

アナウンサーの安住さんが始めた朝の番組を見ていたら、BGMにゴダイゴの銀河鉄道999が流れてきて朝から爽快感を味わいました。タレントのマツコ・デラックスさんは、ドライブの時にこの曲をかけるそうで、深夜から首都高に乗って夜明けをみながら都内に戻る車で999を聴くという話を思い出しながら、ワクワクする999の疾走感あるメロディーに耳を傾けていると1日のスタートが軽やかになったようで、しばらく安住さんそっちのけでゴダイゴに聴き入ってしまいました。

♪銀河鉄道999(ゴダイゴ/1979)

ゴダイゴによるBGMが、寝起きはゾンビ化しているアラフォーに爽やかな朝をもたらすことを実感し、シーンに合わせたBGMのセレクトの大事さを思った朝でした。

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■「運命」からBGMの妙を学ぶ

BGMといえば未だに忘れられない思い出があります。私が映像の仕事をしていることを知った友達のお父さんに、ホームビデオで編集した映像を見てくれん?と言われ、見せてもらったときのこと。

ビデオが再生されると、画面には広大な佐賀の干潟が映し出され、泥の中に潜むムツゴロウをみにやってきたおじちゃん一行の楽しそうな姿。ここまではよかったのですが、なごやかな映像の後ろで高らかに鳴っているBGMのギャップに違和感を覚えたのです…。

人生最大のピンチや、衝撃が走ったときに流れるであろう世界的に有名なあのメロディー
♪ジャジャジャ・ジャーン ジャジャジャ・ジャーン… ベートーヴェンの「運命」交響曲
第5番ハ短調が、干潟とムツゴロウの裏で鳴っていたのです。

干潟を見るおじちゃんたちの和やかな映像に「運命」の極まったテンションのギャップが、個人的に映画「模倣犯」で犯人役を演じる元SMAPの中居君に、曇天の空の下で缶から直接パイナップルを食べさせた、森田芳光監督を彷彿とさせるシュールさを感じて、編集をしたおじちゃんに断りを入れてからお腹がよじれるくらい笑わせてもらいました。

偶然か、はたまた必然か。家にあったクラシックのCDをそのまま動画に当てただけという運命のタイミングは、笑神様の降臨を確信させた出来事でした。おじちゃんの神がかったBGMの妙は、BGMの奥深さとシーンに合わせることの大切さに気付いた忘れられないエピソードです。

そういえば、サカナクション山口一郎さんの音楽実験番組の中でも、お題となる映像に、ミュージシャンやテレビの音効さんなど音の専門家がそれぞれ考えたBGMをつけるというコーナーがあって、BGMのさじ加減で同じ映像でもシリアスになったり、くすっと笑えるなど見え方が変わるというコーナーをやっていたなと…。そんなBGMの妙となるシーンに合わせた曲を考えたいと思います。

まずは喜びを倍増させてドラマティックな気分が味わえる、おすすめの歌謡曲を紹介したいとおもいます。

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■人生のハイライト感を出すBGM「君は薔薇より美しい」

昭和歌謡の中でも人気が高い、尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」。つい口ずさみたくなるキャッチーなイントロの高揚感と、伸びやかで力強さがある声がガツンと来るストロング歌謡が好きな人は、もれなくこの曲も好きだと思う1曲を紹介したいと思います。それが布施明さんが歌う「君は薔薇より美しい」です。※おすすめは、ゴダイゴの演奏バージョンだったのですが、リンクがなかったため別バージョンでお聴きください。

♪「君は薔薇より美しい」(布施明/1979)

サビの「♪薔薇より美しい~」が、化粧品のCMソングとして知られ大ヒットした曲です。
女性の美しさを表現するCMに合った心躍る華やかなイントロがはじまると、これから素敵なドラマが起こる予感しかしません。そこにガツンとくる布施さんの歌と、伸びやかできらめくメロディーが目に見えない翼を広げてどこまでも自由に飛んでいけそうな気持ちにしてくれます。

歌詞を読んでも、主人公が浮かれきっている感じがよ~く伝わります。こうなったらもう誰にも止められません。


走るほどに 笑うほどに
夢見ながら 愛しながら
薔薇より美しい
ああ 君は変わった

歩くほどに 踊るほどに
ふざけながら じらしながら
薔薇より美しい
ああ 君は変わった

(君は薔薇より美しい/布施明)

この曲のクライマックス「ああぁぁぁ君は~変わったーぁぁあ!」ここは喜びフルスロットの布施明となったつもりで、渾身の「ああ~」を叫んでみたい。余談ですが、宮藤官九郎さんの能と介護をテーマにしたドラマ(長瀬智也主演)でフィーチャーされた世阿弥の「秘すれば花」の逆を行く、心も喉もフルモンティなイメージです。薔薇より美しい君に捧げる「全力少年」をしのぐ全力を出して歌ったら、今まで見えなかった新しい景色が見えるでしょう。

主人公の高まる気持ちを、心踊るようなメロディーで表現したこの曲は、先ほど「銀河鉄道999」で爽やかな朝をもたらしてくれた、ゴダイゴのキーボード奏者ことミッキー吉野さんが手掛けています。イントロのインパクトしかり、ワクワクしてくるメロディーラインはまさにゴダイゴ仕様と聞いて納得の1曲です。

1曲を通してサビづくしのようなグッドメロディーからなる「君は薔薇より美しい」をBGMに布施さんの「ああ~」に合わせて喜びが倍増する効果をぜひ実感してみてください!

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■「愛のさざなみ」のコーラスに耳をそばだてる

歌謡曲を聴いている時に何に惹かれるのかというと、今の時代にはないようなローファイな響き方をする楽器の音色や、ドラマティックで大げさなくらいがちょうどいい、編曲家のセンスが光る歌謡曲らしいアレンジじゃないかと思います。

もちろん歌詞に置かれた、言葉の運び方ひとつとってもその時代を感じられるところも好きです。そんな歌謡曲ならではの”味わい”を存分に楽しめる曲を紹介したいと思います。

島倉千代子さんといえば、大ヒットした「人生いろいろ」だと思いますが、愛嬌もあって美しい女性コーラスに彩られたこの曲では、ポップな島倉千代子さんを楽しめます。

♪愛のさざ波(島倉千代子/1968)

ちなみにこの曲の演奏は、ロサンゼルスでレコーディングをされたんだそうです。バック・バンドのメンバーには、ママス&パパス「夢のカリフォルニア」をはじめビーチボーイズ「サーフィンUSA」、カーペンターズ「クロストゥーユー」など、名だたるアーティストの曲でドラムを叩いた天才ドラマーのハル・ブレインが、なんと「愛のさざ波」のドラムも叩いているそうです。

一流のバンドが奏でるリズムと、ポップさの中でも大人な艶っぽさがある島倉さんの歌声。後ろに重なる美しいコーラス。何層にも重なった深い味わいはコーヒーさながらに「違いがわかる」至福のBGMになると思います。

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■語りかけるBGM「愛にできることはまだあるかい」

突然ですがここまでお付き合い頂いているあなたに質問です。仕事終わりに気になるものって何ですか?十人十色な答えが出ていると思いますが、私のそれはサウナです。


近場の温泉にあるサウナがミストサウナになってからというもの、温泉に浸かるのもほどほどに、サウナにハマっています。高湿度のサウナでじっくり汗をかいたら、ざぶんと水風呂に浸かる。水中でカラダがほわ~っとしてきたら、露天風呂を横目に外気浴のイスに座ってまどろみます。タオル1枚をはりつけて、裸で風にあたっていると自分の姿がぼやけていって風と一体になったような心地よさが次から次に押し寄せてきます。

まさにグッドバイブレーション!外気浴でイイ感じにととのったら、またサウナに戻る。そんな、ととのうループ中にあててみたいBGMは、RADWIMPSの野田洋次郎さんの歌声がまっすぐ語りかけてくるこの曲とかどうでしょう?

♪愛にできることはまだあるかい(RADWIMPS/2019)

生まれたままの姿でサウナに座っている時だからこそ、自分に語りかけられているようなこの歌が水のようにすっと入ってきます。

この曲は、新海誠監督のアニメーション映画「天気の子」の主題歌として大ヒットした曲です。映画の公開時はTVをつけると生活音に混ざって「愛にできることはまだあるかい」と野田洋次郎さんの透る声で語りかける歌は、言葉のインパクトもあって自然と耳が歌を拾いにいってしまう作用がある曲だなと思ったものです。

「~かい?」という口調で語りかけることで、リスナーも自分に言われているんだと無意識に耳を傾けてしまう生理現象を起こします。今まで考えなかった潜在意識に作用する、語りかけ系BGMといってもいいかもしれません。

ここまでBGMをテーマに書いておきながら、あることに気づいてしまいました。じつはこの曲、BGMにすると聞き流しにく曲であるということに…。

「愛にできることはまだあるかい」シンプルな問いかけなのに、その答えを簡単に返すことができないのです。自分なりに答えを探そうとする、自己探求のスイッチが自然に入ってしまう曲のようです。音楽きっかけで精神世界へ繋がってしまう、気を抜けないBGM。ぜひ一人になった時のお供に聴いてみてください!

今回は、BGMで気になる歌謡曲を紹介しました。また来月もおすすめの歌謡曲を更新していきたいと思います。ではまた!

by オーキ


スペースシャワーTV、11月のイチオシアーティストはRADWIMPS!
約3年ぶりのオリジナルアルバムリリースを記念して、RADWIMPSの撮り下ろしインタビュー特番や貴重なライブ映像など、彼らの関連番組をお届けします。



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