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北の国からに魅せられて

こんにちは!オーキです。『歌謡曲に魅せられて』。
今月も風の吹くまま気の向くまま音楽雑談を更新したいと思います。宜しくお願いします!

先月こちらのnoteで歌手で女優の、いしだあゆみさんの「ムーンライト」という曲を紹介したところ、ドラマ「北の国から」フリークの先輩から、いしだあゆみさんといえば「北の国から(純と蛍の母親役)」は外せないよ。と聞いて、ドラマシリーズの最終回となった(遺言2002)から20年を経たいま、はじめて国民的ドラマ「北の国から」を見てみました。

♪ムーンライト (1974/いしだあゆみ ティン・パン・アレイ・ファミリー)

放送がはじまった1981年~2002年まで、田中邦衛さん演じる黒板五郎さん一家の人生をドラマを通して21年間分も追体験することで、人間味あふれる黒板家の問題に泣き笑いしていると、自然と生活のなかでも五郎さんの口調になってしまうなど、影響でてしまうほど日常生活にドラマのシーンが重なってくる、すごいドラマだと思いました。

とくにこのドラマを見ている方なら絶対にわかる、ものまねしたくなる名シーンといえば
閉店間際のラーメン屋さんでの、五郎さんのセリフ「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!!」じゃないでしょうか?

このシーンでは、純くんが「丸太小屋の火事を出したのは自分が原因」という重めの告白があってからのあの名台詞なのですが、真剣に画面を見ているのに、なぜか頭の中はとんねるずの「北の国から」コントが鮮明に思いだされ、タカさん演じる五郎さんを思い出して笑いがこみ上げる、本家をみてパロディの方を思いだすという変な感じになりました。

当時、毎週欠かさず楽しみにしていたとんねるずの番組。「北の国から」をコントで見ていたのを思いだし、可笑しさと懐かしさで五郎さんの名シーンは、鼻の奥がツーンとしました。

■「北の国から」のミステリーを解くカギは、阿久悠にあり!

他にも「北の国から」にはドラマ本編とは毛色が違う、奇妙なシーンがあるんですがご存じでしょうか?

純くんとほたるちゃんが通う分校の先生が、原田美枝子さん演じる涼子先生というのですが、実は涼子先生は森に入ってUFOを呼んで宇宙人と交信もできる。雑誌「ムー」案件な人物設定になっていたりします。

そんな涼子先生がほたるちゃんを連れてUFOを見に行ったことが問題になってしまい、他の学校へ転任してしまうという出来事があるのですが、
その渦中に純くんの夢のような感じで、木に寄りかかっている涼子先生がUFOの光の中に包まれて、円盤吸い込まれてしまうという不思議なシーンがあります。しかも連ドラではここで涼子先生は居なくなってしまうのです。

先生は宇宙に連れ去られたのか!?はたまた純くんの夢オチなのか。「北の国から」最大のミステリー案件です。

ほたるちゃんがきつねを呼ぶ「ルールルルルル」は有名すぎるくらい認知されていますが、涼子先生がUFOを呼んでついていく!?シーンはドラマの本筋を忘れてしまうぐらいぶっ飛んでいて、80年代のドラマの振り幅にあっけにとられます。この回の違和感といったら、ハンパなかったです。

そんな1人じゃ消化できない違和感は、歌謡界のモンスター阿久悠先生の歌詞がすっきり解消してくれます!

♪UFO(1977/ピンクレディー)

北の国からの涼子先生がUFOと消えた謎、ベタに「UFO」の歌詞を見てみたら、まさにドラマのシーン通りの部分がありました!!!!!

もしかしたら、もしかしたら…
涼子先生はこういう理由でUFOにのったのかもしれません。


でも私は確かめたいわ
その素顔を一度は見たい…(省略)

ああ突然オレンジ色の ああ光が私をつつみ
夢見る気持ちにさせて どこかへさらっていくわ
やっぱりそうなの素敵なあなた

信じられないことでしょうけれど
嘘じゃないの嘘じゃないの ほんとのことよ

それでもいいわ 近頃少し
地球の男に あきたところよ
(♪UFO/ピンクレディー)

まさに、オレンジ色の光に包まれるところはドラマと同じシチュエーションです!

妄想ですが、倉本先生は涼子先生の物語を書く中で、ラジオからたまたまUFOが流れてきて、シナリオを書き直したんのでは?とおもうほど、「UFO」のシチュエーションと涼子先生のシーンは酷似してます。

風来坊のような涼子先生らしいラストシーンは、富良野から普通に町の学校に転任していく姿で終わるより、宇宙人についていっちゃった方がロマンチックでいいんじゃない!?なんて、ピンクレディーを聴きながら脚本が書き直されていたとしたらそれもまた面白いですよね。

ドラマ「北の国から」涼子先生のシーンが気になる方はぜひ!
見だしたら止まらなくなる北の国からの沼にハマること間違いなしです。

■リフレインのかわいさ。川本真琴「桜」。

先週末に春の嵐がやってきて、桜の花びらは大丈夫かなと外に出たところ、桜並木が、薄ピンク色の花で埋め尽くされていて、嬉しくなりました。

この時期にピッタリの、森山直太朗さんの「さくら(独唱)」をはじめ、桜・さくらと名の付く曲は数多くありますが、個人的に桜で思いだす1曲は、今から10年ほど前のスペシャで「Black File」の番組制作をしていたスタッフ佐々木くんがカラオケで歌った川本真琴さんの「桜」です。

スタッフで行った送別会のカラオケで、B-BOYな風貌の佐々木くんが選曲が、川本真琴だったという意外性に興味をそそられ、画面に映し出される青春の箱庭みたいな歌詞を目で追っていたら、短編映画をみているみたいで心に桜の花吹雪と切なさが駆け巡りました。

カラオケが終わった後も冷めない余韻が残っており、いい曲だなーと、カラオケで知って好きになった曲です。

♪「桜」(1998/川本真琴)

風でふわふわ舞う桜の花びらをあらわすような、つかみどころのない上下するメロデに誘われ、キラキラした学生時代のワンシーンを切り取った歌詞が、主人公の目線で実況中継されていてリスナーに、ひと時の学生時代を追体験をさせてくれます。

とくにこの曲の歌詞は小説みたいに人のさまざまな感覚にアプローチしてくる距離や時間、ニオイ、息遣いまで伝わってくる、五感を駆使した言葉がちりばめられており耳で感じるオーディオ4DXなんです。

画期的なのは、サビに使われている「できない×4」という印象的なリフレインです。
こんなリフレインの効果があったのか!と驚きます。

桜になりたい いっぱい
風の中で いっぱい
ひとりぼっちになる練習してるの

深呼吸の途中 できない できない できない できない
(♪桜/川本真琴)

初めてこの打消しワード「できない×4」のリフレインを聴いたとき、曲の主人公が見えてきて目の前で曲の世界が展開される、実況中継をみているようなリアルな感覚を味わいました。

ここで歌詞のフックになっているフレーズが、深呼吸の途中です。
とくに「途中」という時間を感じる言葉が入ると、曲の中に時間軸が生まれその後に続く「できない×4」の打ち消しの早さがリアルに伝わって、できないのリフレインがボディーブローようにリスナーに効いてくるのです。

しかもこの歌詞は川本真琴さんのみならず佐々木くんのカラオケでも、誰が歌ってもかわいく聴こえてしまうお役立ちフレーズなんですよ、奥様~×4!!

この後のサビにも、同じく時間を感じる言葉のあとには「できない×4」のリフレインがはいってます。


発車のベルが鳴っても言い出せなかった
今年でいちばんやさしい風が

あたしの迷っている一秒前を通り過ぎる できない できない できない できない
(♪桜/川本真琴)

「迷ってる一秒前」からの~~「できない×4」ですよ!! 1秒前ってところがはがゆい!!

ここでも歌詞に時間が織り込まれており、列車のベルが鳴り響き、急かされるホームの映像が実況中継されているような感じがしてきます。

他にも時間を感じる曲でいうと、広末涼子さんの「MajiでKoiする5秒前」とかはいかにもなタイトルです。5秒前と聞くと、人は条件反射的にカウントダウンを始めてしまうなど体感的に備わってる時間感覚を呼び起こされるのです。
数字が働きかける歌詞の効果ってじつは大きいんだと、気付きました。

川本真琴さんの「桜」は、時間のほかにも距離や五感を刺激するフレーズがちりばめられているので、青春のワンシーンを追体験しながら歌詞に注目して聴いてみてください!

■新しい歌謡曲、藤井風「罪の香り」

昭和の歌謡曲と言えば、イントロを聞いただけですぐ曲名が浮かぶインパクトと印象的なフレーズが特徴だと思いますが、最後に昭和の歌謡曲の香りがする1曲を紹介したいと思います。

ドラマティックでインパクト大なイントロに一気に耳がもっていかれる、
ニュー・ウェーブな歌謡曲として注目したい、藤井風さんの「罪の香り」です。

♪ 罪の香り (2020/藤井風)

この曲の「極まったテンション」で始まるイントロを聴いていると、ジュディ・オングさんの「魅せられて」を思い出し、ただならぬ緊張感とカッコよさにゾクゾクしてきます。

♪魅せられて(1979/ジュディ・オング)


藤井風さんのサービス精神旺盛さを感じる、歌謡曲チックなイントロから一転、歌がはじまるとメロウでアンニュイな雰囲気になり、さっきのイントロは何だったのかと、
不意打ちを喰らう曲です。

このイントロから、歌のギャップ萌えはドラマのようで、さらに藤井風さんの色気があふれ出てしまってる歌声がリスナーをポワ〜ンとさせます、タイトルどおりの罪な香りがする歌声です。

この時点でリスナーは、まだ台風の目の中にいる状態です。ここでポヤ~っとしているとまた思ってもみない角度の歌詞に、また不意打ちを喰らいます。
そんな強力なフックがこの曲のサビに潜んでいました。それがこちら!!


おっと 罪の香り
抜き足差し足忍び足

(罪の香り/藤井風)

藤井風さんのメロウで色気があふれ出てしまっている歌声に、さっきまでポワ〜ンってなっていたとしても、このお洒落忍者のような「抜き足差し足忍び足」を一度聴いてしまったら…頭の中ではサビの無限ループが止まらないはずです。

うちの息子もその傾向がすぐに表れ、曲を聴いた後すぐに

「♪おっと ネコの香り 抜き足差し足忍び足~」と独特な替え歌をつくって歌い出しました。

昭和歌謡曲の特徴といえば、誰でも歌える「キャッチーなサビ」というのも欠かせない要素ですが、「罪の香り」も、一度聴いたら忘れられないサビの歌詞とメロディーで歌謡曲の匂いがプンプンしています。

「おっと」でリスナーの注意を引いてから、突飛な言葉がぽんっと入るところも昭和歌謡っぽさがあって最高です。

平成の「おっととっと夏だぜ!」のつんく♂さんも驚く、
「おっと」に続く新フレーズが、「抜き足差し足忍び足」
この言葉の流れは普通のJ-POPには出てこない、まさに匠のフレーズだとおもいます。


コミカル寄りになりすぎず、どんなフレーズがきても落ち着いてお洒落れな感じに収めてしまうコード進行の妙により、「抜き足差し足忍び足」すらアリ!にしてしまうすごさですよ!

このサビとコード進行に関しては、関ジャニの音楽番組でミュージシャンの川谷絵音さんが詳しく解説されていたのですが、「嫌な匂い」というフレーズのところでは、不穏で不安定な響き方がする、オーギュメントコードが使われていてコードにもちゃんと意味をもたせているんだそうです。

歌詞をより匂わせる工夫がコードにあったことを知って聴いてみるとまた聴こえ方が違ってきそうです。昭和歌謡曲の匂いをさせながらも「罪の香り」は今の時代にフィットする藤井風さんの感覚で、お洒落なコードもすべてキャッチーに昇華させてしまう、誰でも歌える新しい歌謡曲だと思います!

youtubeではさまざまなカバー曲を公開されていますが、藤井風さんがコミックソングをカッコよく歌っている姿も見てみたくなりました。ピアノで「ドリフのズンドコ節」を弾き語りしたらきっと想像を超えるスタイリッシュさになるんだろーな。なんて妄想リクエストを考えるのも楽しいですね!

というわけで今月はこのあたりで。また来月もおすすめの歌謡曲を紹介したいと思います!ではまた!

By オーキ



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