松永天馬021

【第3回】松永天馬の歌詞深読みゼミ「ラブラドール・レトリバー/AKB48」

アーバンギャルド松永天馬の歌詞深読みゼミでは、J-POPの歌詞を題材にしながら、歌詞の深読みを行なっていきます。
スペシャカレッジ通信 串田

松永天馬が歌詞に対して思うこと#1はこちら

松永天馬が歌詞に対して思うこと#2はこちら


課題曲「ラブラドール・レトリバー/AKB48」
作詞:秋元康

ラブラドール・レトリバーの歌詞はこちら

松永

まず、
AKBがアイドルグループの歌詞の世界観を一番変えてしまった部分は、
ほとんどの曲で一人称が「僕」なんですよ。
これはどういうことかと言うと、
リスナー目線に立ってるんですよ。

串田

ほーほー。

松永

リスナーが例えばカラオケで歌うときに、
「僕」って歌うことによって、
つまりヲタの心情を歌ってるんですよ。
2人称が、AKBの子なのかわかんないけど、女の子で。
AKBのシングルほとんどの曲は「僕」なんですよね。

串田

今まではどうだったんですか?

松永

昔の秋元さんの場合で言えば、
おニャン子の時は、1人称は「私」ですよ。
女の子の目線で女の子のリアルを歌う。
女の子の目線で、
たとえば「セーラー服を脱がさないで」では、
本当はエッチだってしたいのよ、
でも我慢してるのよ、
って歌ってたのが新しかったんだけど、
AKBは徹底して、
アイドルの側がドールになってしまっていて、
ヲタの気持ちを歌い続けるわけですよ。
ピンチケさんの気持ちを!

串田

(笑)

松永

モーニング娘だって女の子の歌を歌ってたと思うんですよね。
このラブラドール・
レトリバーも例に漏れず、
まゆゆと俺とレトリバーの世界観なんですよね。

串田

まゆゆをセンターってところも意識してるんですよね?

松永

意識してますね。
まゆゆがセンターだから、
普段はパチ屋かよ!っていうような、
TRANCYなシンセが入ってくる、
アゲアゲ系の曲が夏は多いんですけど、
今年はシルヴィ・ヴァルタン 「あなたのとりこ」
が元ネタだと思うんですけど、
ミッドテンポのフレンチポップになっていて、
これもまゆゆへの当て書きだと思うんですよね。
清純派のまゆゆと俺が、
例えば幼なじみだったとして(笑)

串田

(笑)

松永

まゆゆと俺は「タッチ」みたいに、
隣あった家に住んでるような感じで、
俺には飼い犬のレトリバーがいるわけですよ。
朝、俺がレトリバーとジョギングすると、
まゆゆと顔を鉢合わせたりとか。
そんな幼なじみのまゆゆと俺だけど、
俺は実はまゆゆに秘めた想いがあって、
毎年、夏にそれを打ち明けようとするけど
タイムオーバーしてしまうという。
でも今年は違うぜ!っていう。

串田

ミネラルウォーターを二人で回し飲みするだけで、
ドキドキするっていうのは、やっぱりシャイですよね。

松永

シャイなんですよ。
間接キスでドキドキしちゃうっていう!

串田

普通の感覚で言うと、
中学生か高校生くらいの感覚と思うんですが、
これって大人に向けて書いてるんですかね?

松永

大人にそういうことを思い出させてるかもしれないし。
でも、AKBってモーヲタとかと圧倒的に違うのは、
ピンチケっていう中高生のヲタを大量に増やしたっていうのが、
AKBの功罪の一つと言われてるんですね。
それまで、アイドルヲタって言うと、
20代後半から30代が中心だったんですけど、
AKB劇場はピンクチケットって言って安く売るチケットを販売したんです。それによって本当に、ステージにあがってる子と年齢が変わらないような新しいヲタを生んだと言われてるんです。

串田

最後キスをしようかって来てるので、
キスをするまでの全てを想像してるんですね。

松永

まだキスしてないですね。
本当に想像ですね。
でも、時々、ラブラドールレトリバーで意図的に、
つまりラブラドールのメタファーでまゆゆとの関係性を表したりしてるんですよね。

串田

ある種ややこしいというか。
ラブラドールと君が、なんかね。

松永

実はラブラドールはいなかったんじゃないかっていう(笑)
シックスセンスみたいなことなのかっていうのもちょっと感じさせるんですが。
言ってしまえば、ラブラドールはまゆゆへの恋心の象徴ですよね。
なついたりとか、忠誠心があるってのが。
秋元さんは事物にたくして、恋愛感情を表現するっていうこと…暗喩…ですが、
暗喩をすごく意識的にやってるしその能力にたけてますよね。
AKBの歌は「着うた」的な哲学性、抽象性はあんまりなくて、
具体的なものに気持ちを置き換えてるんですよね。

串田

固有名刺ですよね。
ラブラドールレトリバー。

松永

ポニーテールとシュシュ
ヘビーローテーション

串田

本当だ!

松永

言っている事物で恋心を例えてるんですよね。
ヘビーローテーションしてしまう恋心であったり。
ここでは、ラブラドールレトリバー。

串田

犬ってことですね。

松永

そう。そして、僕は、
ヲタの人は犬的な性格が多いと踏んでるんですよ。
村上龍のラブ&ポップという小説の中で言ってたことなんですけど、
猫っぽい人は犬が好きで、犬っぽい人は猫が好きってのがあるんですけど、
本当にヲタが壁紙猫にしてる確率高いんですよ。
実際には飼い猫より、
ネットで拾ってきた猫の画像的なやつが多いと思うんですけど。
じゃあ、そうなると犬ってのはヲタってことかな?
ってことも思ったんですよ。

串田

あっ、
そっちでもとらえることができるんですね。

松永

そう!なついてんのはオメーじゃね?
っていう。

串田

これは、
深読みでしょー(笑)

松永

これは、
本当の深読みって感じもあるんですけど。

串田

なるほど。
おもしろかったです。
次行ってみましょう!

次回に続きます。近日公開予定。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?