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第69回日本宇宙航空環境医学会大会「宇宙への道」参加レポート


~はじめに~

こんにちは!Space Medicine Japan Youth Community(以下SMJYC)の運営を務めております、慶應義塾大学医学部3年生の服部優奈と申します。今回の記事では、2023年11月9〜11日に岐阜県のじゅうろくプラザで開催されました、第69回日本宇宙航空環境医学会大会に参加した感想を書かせていただこうと思います!

私は今回、学会に初めて参加させていただきました。さらに 「宇宙医学×宇宙法-宇宙での有害事象の可能性と法律の必要性-」というテーマで発表を行い、とても貴重な経験を積むことができました。今回のレポートではその準備段階から当日の発表の様子までを皆様にお伝えできればと思っております。

学会に行ってみたいけどハードルが高い、今年は発表してみたいという方々にとって有意義な情報となればいいなと思います!

会場入り口の様子

~発表の流れ~

STEP1 発表準備

さて、まずは発表準備の様子をお届けしたいと思います。SMJYCでは、先生方のご厚意により、毎年学会で学生として意見を発信できる学生セッションという場をいただいております。

今年の議題についてSMJYCの学生メンバーと話し合う中で、宇宙医学をはじめ世界中で宇宙関連事業が急速に発展するうえで、宇宙で医療を行うには土台となる法律が必要不可欠ではないかという議論がされました。個人的にも、ちょうど私の通う慶應義塾大学の法学部では宇宙法の授業が盛んであることを知った矢先の出来事であり、宇宙法の存在に非常に興味を持っていたため、宇宙医学×宇宙法をテーマを掘り下げることにしました。近年、人類の宇宙進出への期待が高まる中で、実際に無重力体験を目的としたサブオービタル飛行が実現していることから、民間人の宇宙旅行に注目して医学的側面・法律的側面から宇宙で起こりうる有害事象とそれに伴うシステム整備の需要について考察をすることにしました。

もちろん学生の考察には限界がありますので、発表資料を作成するうえで、医師の先生と弁護士の先生に監修していただきました。先生方は、今回のテーマに精通したバックグラウンドをお持ちであり、一緒にディスカッションをさせていただいたことは私にとって大変貴重な経験となりました。SMJYCでは宇宙という共通項を持つ様々な先生方のお話を聞くチャンスがあるのも素晴らしい点だと思います。

STEP2 リハーサル

発表資料を作り終えたら、すぐに本番!というわけではなく、学生セッションに参加するメンバーでリハーサルを行いました。初めて参加する学会での初めての発表だったので、イメージがわかず非常に不安でしたが、すでに参加・発表経験のある先輩方から事前にアドバイスをいただけるので安心です。また、自分以外の学生発表者のプレゼンテーションを聞くのも、非常に勉強になりました!

STEP3 発表本番

ではここからが今回のレポートのメインテーマです!学会は3日間にわたり開催されたと先述しましたが、私は2日目から参加させていただきました。実際の学会の様子をお届けし、宇宙医学に少しでも興味のある学生が来年以降の学会や関連イベントに足を運ぶきっかけになればいいなと思っております。

ー情報交換会ー

新型コロナウイルスの影響でしばらく行われていなかったという情報交換会ですが、今回の学会では2日目に開催されました!宇宙医学に精通した様々な臨床医、研究医の先生方をはじめ、JAXAの研究員の方や、宇宙医療ビジネスを展開する方、宇宙医学に興味を持つ学生など本当に様々な層が集まり、宇宙医学について自由に議論を交わすことができる場でした。学生と先生方の距離が近く、フレンドリーに接していただけると同時に、先生方の現在の取り組みや将来の展望を情熱的に語る姿に大変刺激を受けました。さらに全国から集まった宇宙医学に興味を持つ同世代の学生たちと交流できたことも非常に貴重な経験となりました。

また岐阜シティタワー43の最上階の会場は、夜景を一望できるとても素敵な場所であり、岐阜県まで来てよかったと感じられる楽しい時間でした...! やはり対面でしか吸収できないことがたくさんあることを実感できました。

ー発表ー

さて学会3日目となり、ついに発表の出番がやってきました。学生セッションは、3日目のトップバッターを務めさせていただきました。前日にたくさんの方々とお話できたので学会の雰囲気を掴むことができたつもりだったのですが、やはり会場ホールに到着すると緊張してしまうものですね…笑

学生セッションに登壇する学生は、私を含め3名でした。1人目は、「日本の宇宙医学教育の現状と展望」、2人目は「宇宙開発におけるジェンダー問題に関する議論ーマジョリティにできることに注目してー」をテーマに発表しました。
では、登壇者のお二人からコメントをいただいたので、以下に記させていただきます。

・岩瀬すみれ (横浜市立大学医学部医学科)
「日本の宇宙医学教育の現状と展望」

今回の発表を通じて、宇宙医学の中には宇宙での医療活動、地上の医学研究を宇宙環境に応用するなど様々な切り口があり、若手世代の育成についてはそれぞれ個別に検討する必要があるということを認識することができました。
発表に対して貰ったフィードバックから、フライトサージャンの業務には産業医学や公衆衛生の側面があり、MPH (Master of public health)を取得するケースが増えていることや、若手世代が宇宙医学で将来的に活躍するためにはまず専門性を高め分野の第一人者になることが必要不可欠であることを学ぶことができました。

・植村優香 (京都大学大学院医学研究科)
「宇宙開発におけるジェンダー問題に関する議論ーマジョリティにできることに注目してー」

私たちはこれまで2年にわたって、宇宙開発におけるジェンダー問題について議論してきました。今回の発表では、まず、ダイバーシティ、ジェンダー論、マイノリティとマジョリティといった、よく耳にすることばについて扱い、ジェンダー問題に関する学術的議論の一端を示しました。そして、ジェンダー問題は過去の問題ではなく、これからの宇宙開発においても議論するべきであると結論付けました。また、宇宙開発への女性の参加を進めるための提案を行いました。発表後に先生方から様々なご助言や励ましのお言葉をいただき、関心を持って頂けていることを感じました。

お二人の発表を聞いた後、3番目に自分の発表が回ってきました。実は発表資料がうまく投影されず、USBメモリを持っていて非常に助かったので、学生の皆さんは学会などで発表する機会があれば、あらかじめパワーポイント以外にもpdf化した予備の資料を準備しておく、万が一の時のためにUSBメモリを持ってきておくなど対策を考えておくと安心です!

では、私からも発表を通して学んだことについてコメントを書かせていただきます。

・服部優奈 (慶應義塾大学医学部医学科)
「宇宙医学×宇宙法-宇宙での有害事象の可能性と法律の必要性-」

まずはご多忙の中、本発表の考察をサポートしてくださったお二人の先生方に心より御礼申し上げます。今回の発表を通して宇宙旅行を含む宇宙産業を安全に拡大するためには、基盤となる宇宙法や既存法を整備する必要があり、そのためには宇宙医療分野において明確なエビデンスを提示する必要があることを学ぶことができました。先生方には民間人が安全に宇宙で滞在できる将来の実現に向け、研究・開発にご尽力いただくとともに、宇宙医学界をさらにメジャーな学問にできるよう、私たち学生も今後さらなる邁進を続けていきたいと思います。発表後、様々な先生方からフィードバックをいただきました。いただいたご感想や問題点をSMJYC内で共有し、さらにテーマを掘り下げて考察を重ねていきたいと思います。

実際の発表の様子

ーSMJYC学生ブースー

SMJYCでは、先生方のキャリアについてのインタビューを行い、ポスターと冊子にまとめ学会のブースで展示をさせていただきました。さらに普段の活動内容を記載した団体紹介用パンフレットを作成し、配布を行いました。様々な先生方や学生の皆さんに足を止めていただき、SMJYCの活動紹介をすることができるとても貴重な機会となりました。

ポスター作成を担当してくれた運営メンバーからコメントをもらっているので、載せさせていただきたいと思います。

・内田大智 (京都大学工学部物理工学科)
「宇宙医学のキャリアパスを考える インタビュー企画」

宇宙医学に携わるまでのキャリアパスの不透明さを問題視し、現在宇宙医学に関わりご活躍されている方々へインタビューを行い、学生や若手向けに将来宇宙医学に関わるキャリアを考えるためのポスターを作りました。
先生方のインタビューから、宇宙医学の基礎研究であれば、積極的な行動や人脈形成を行うことで、実現は可能だと感じました。しかし、臨床医として宇宙医学をキャリアとして目指す場合、現状卒後すぐに宇宙医学に携わることは難しいため、常に宇宙医学へのモチベーションを持ち続けることが大事だとわかりました。若手に今できることは、知識を集め、人脈を形成することに加えて、自らが宇宙医学にどのように携わりたいかやどのようなスキルを得るべきかということを日々意識しながら、チャンスを狙うことであると学びました。
宇宙医学の様々分野でご活躍されている方々のお話を聞くことができ、大変貴重な機会でした。インタビューを重ねるごとに、自らのキャリアをより深く考えるようになり、真剣にキャリアパスを考えるきっかけにもなりました。お忙しい中快く取材を引き受けてくださり、最後まで寛大にご協力してくださった先生方に心より感謝申し上げます。

学生ブースの様子

~最後に~

長くなってしまいましたが、学会の雰囲気やSMJYCの活動のイメージをつかんでいただけたでしょうか?多くの学会は学生は無料で参加できる事が多いうえに、先生方と学生の距離が近く、様々なことを吸収できる貴重な場です。ぜひ来年の学会やSMJYCのイベントでみなさんにお会いできることを楽しみにしています!

ありがとうございました!

 

SMJYCの加入方法

それでは、最後に追記としてSMJYCの加入方法について説明をさせていただきます。
①お問い合わせフォームから必要事項を入力
以下のリンクより、ご氏名、ご所属、メールアドレスをご記入の上、お問い合わせ内容に新規入会希望の旨をお書き添えください。
お問い合わせ|Space Medicine Japan Youth Community ~宇宙医学~ (umin.ac.jp)

②LINEグループへの招待
お問い合わせフォームで入力していただいたメールアドレスにこちらから返信をさせていただいたのち、LINEグループに招待いたします。
SMJYCでは、宇宙医学に関連した様々なイベントを定期的に開催しております。SMJYCについてさらに詳しく知りたい方はぜひ過去のnote(Space Medicine Japan Youth Community (宇宙医学)|note)をご覧ください。
少しでも興味がありましたら上記の方法でご参加ください!
皆さんと活動できることを楽しみにしております!

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