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ビジョン・ミッションが必要になるとき(2/2) Challenger’s IDEA

前話:ビジョン・ミッションが必要になるとき(1/2)

■「自ら選ぶ」が求められる時代へ

長谷部🎾:2020年は新型コロナウイルスの件もあって、いろいろと環境の変化もありますよね。

その中で会社のビジョンやミッション、もしくはそこに紐付くサービスに対して、これから新しくなっていくことで、大事になってくると感じることはありますか?

重松🏉:新しい生活様式といわれていますけど、暮らし方も結構変わってくると思います。

私たちのサービスにおいては、これから外出は緩和されていくと思うし、一定ライフスタイルって戻ってくるとは思うんですけど、とはいえ3密の場所で大勢が集まって飲み会、パーティー、イベントっていうのはなかなかできないじゃないですか。

多分、時間がもう少しかかると思ってます。ただ、そんな中でビジョン・ミッションをガラッと変えていくかというと変えるつもりは全然ありません。

先々を見据えると、人に直接会うとか、会って人らしく喜んだり、楽しんだり、遊んだり、お酒を飲んだり、そういうのは人の根源的な要求で、むしろ会ってリアルな体験をするっていうことのプレミアがものすごい上がる気がしますね。

ローストホースっていう、結構有名な馬肉屋があるんですけど、今日メールが来て、今度お店を再開しますと。ただ価格が1.5倍になる。代わりに席数を間引きますとなっていて。

恐らく同様にいろんな飲食店が空間を再設計し、価格を見直しすことで、よりリアルのコストも上がるし、価値も制限される分より上がるんだなと思って。

なので、紆余曲折あるけど、中長期的にはやることは変わらないと思います。

長谷部🎾:進めていく上でのアクションとか、手段はいろいろと変わるけど、根底にあるものは変わらないと。

重松🏉:そうですね。

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加来📘:今の言ってもらったことにも通じると思うんですけど、今はまさに変化とか危機を乗り越えるっていう瞬間なので、みんなで一致団結して制限したり、我慢したり、助け合ったりみたいなタイミングだと思うんです。 

ここからだんだん落ち着いていた先に何が起こるかでいうと、今回すごくいろんな選択肢が広がったと思うんですよね。

「オンラインでもこういうことができるんだ」とか、中には無理に人に会わなくても幸せだと思う人もいるかもしれないですし、「やっぱり人に会うことが人生なんだ」と思いを新たにした人もいると思います。

その中で求められるのは、企業の場合も人の場合も、「あえて自分はこれにします」っていう選択をしなきゃいけないっていうことが起きると思うんですよね。

払う対価を上げてでも外に出て人に会いに行くというのも、一個のリスク・リターンだと思いますし、逆に自分にとってはそんなに重要なことじゃないから、私はオンラインのみで十分ですみたいなのも一個のリスク・リターンだと思いますし。

これはどっちが正解だという話ではないんですけど、これまで以上に「何となくこれに従っておくのがいい」ということが通じなくなってしまうと思うんですよね。

いろんな選択肢があるので、「”私はこれを選びます”という正解の基準」が自分の中にある状態で選んでいかないと幸せに生きていけないとか、事業も成長させていけないというのはあると思います。

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そういう意味では、企業もどういう選択をする人をエンパワーする企業なのか。

今のビジョン・ミッションがそこの選択を取れないようなものになっていたとしたら、このタイミングでつくり直したほうがいいのかなとは思います。

「選ぶ」ということが、今後はすごく求められるんじゃないかという気がします。

長谷部🎾:確かにいろいろな選択肢があるんだということに気づいたし、明確になりましたよね。

加来さんが仰った通り、その中でどれを選ぶかという判断には、理念やスタンス、考えが必要になってくる。

そういったものを自分としてどう持っていくのかを、自分自身や事業はどうしたいのか?といった自己分析を、この2~3カ月きっとみんなしましたよね。

■「一緒に働きたい」と思える人の特徴

長谷部🎾:重松さんは採用面でもいろんな人に会うと思いますが、そういう一人ひとりの個人の理念や姿勢で意識していることとか、大事にしていることはありますか?

重松🏉:うちの場合でいうと上場はしたけどまだまだ全然スタートアップだと思っていて、個人の理念というか、指示待ちの人は無理なんですよね。

長谷部🎾:重松さん、よくそれを言いますよね。

重松🏉:人から言われたことを待っていて、指示を待って解決しているようじゃ駄目だと思うので、自分で勝手に燃えて、自分で課題を見つけて解決する「自燃型」。

そういうのに生きがいを持てる人じゃないと、特にこういう会社は厳しいと思うので、そこはすごく見てますね。

他にも幾つか見ているんですけど、承認欲求が異常に強すぎるとあまり良くないとかもありますね。「私を見て!見て!」みたいな感じでベクトルが自分に向いてる人。

ベクトルは世の中の課題を見つけたり解決をするとか、そういう方向に向いててほしい。

世の中の課題解決や、周りの人が喜ぶようなプロダクトをつくれば、結果的にキラキラするわけじゃないですか。

その順序が逆な人は、あまりこういう会社には向いていない。泥臭く人のために何かできるかを見ています。

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■「一緒に働く」という投資

長谷部🎾:加来さんは、サインコサインという会社を様々なパートナーや個人事業主の方など、共感できる人と一緒にやろうとしていると伺ったんですけど、理念とかスタンスで大事にしていることってありますか。

加来📘:やはり僕個人だったり、サインコサインという会社の理念と親和性がある人。同じ限られた時間で、僕や会社の資源を使うと考えると、そういう人のほうがいいなというのは前提で思っています。

かつ僕は、誰かと一緒に働くということは、言い換えるとそれぞれに投資し合える関係だといえると思うんです。

同じ時間を割くとか、発注してお金を払うというのは、作業に対してというより、未来のお互いの関係性の可能性に対して投資するっていうほうが、すごくわくわくするなと思います。

なので、なるべくそういう対象になる人と仕事をするために心掛けていることで言うと、僕が管理しないとつながれないような関係は、お互い投資し合える関係性にはなれていないと思っています。

だからこそ僕の場合は、管理職というものからは一生脱却していこうと思っています。

個人的に大事にしているスタンスで、僕個人のコアバリューの一つが、来るもの拒まず、去るもの追わずなんです。

一周回ってすごい青臭い話かもしれないですけど、結局「縁」だなというふうに思うようになってきています。

最終的に大事にしているのは、タイミングが合う人と仕事をするということかも。いい意味で無理しないというか、仕事をすべき人とは仕事をするようになってるんだろうな。

それはクライアントさんでも、パートナーさんでも両方いえるかなと思うので、この対談のような巡り合わせや縁などは、大事にしている考え方かと思います。

結果、理念がシンクロしている人と仕事をしている状態になるなというのは実感していますね。

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長谷部🎾:重松さんも、事業を始めるにあたって、人と人とのつながりを特に大事にしていたというお話をされていたというのを聞いたことがあります。
 
重松🏉:結局、われわれのビジネスって特に資産を持っているわけではなく、工場があるわけでもないし、不動産とか物件も実際に持っているわけではないので、持ち物は人とオフィスしかない。なので、人が全てだと思ってます。

あとは利用してくださっているゲスト・ホストにおいても人ですし、そこのご縁はもちろん、社員もみんないろんなご縁で集まっていただきました。パートナーも投資家もそうです。

なので、そういうご縁に生かされて、このサービスは成り立っているんだなぁと。だって目に見えるものがないですからね。

長谷部🎾:縁とか、人とのつながりでここまできているという話は、よく節目、節目で重松さんがよく話すんですよね。

加来📘:そうなんだ。

長谷部🎾:今はスペースの数も13,000とかになっていますけれど、スタート当初は、それこそ泥臭く一つひとつスペース登録をお願いしたり、紹介してもらうところからスタートして。

シェアリングエコノミーというとカタカナで今風のかっこいいサービスっぽく聞こえるんですけど。

重松🏉:めちゃくちゃ泥臭いよね。

長谷部🎾:実際はめちゃ泥臭いですね(笑)。驚くほど泥臭い。

加来📘:でも実際、本当にそうですよね。

重松🏉:最初の流れをつくるのは、鶏の卵をつくるのは、どのサービスも人力じゃないとつくれないんで。

やっぱり、泥臭く、へこたれず、それをやる中にご縁みたいなものが生まれてくる。

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長谷部🎾:泥臭くというところだけ切り取ると根性論みたい聞こえそうですが、ビジョンやミッションは、ブランドパーパスといった言葉でも注目される一方で、裏側では泥臭さや事業の継続性がなかったらビジョンに向かっていけない。

重松さんはよく「売れないバンドマンではダメだ」はという話をされますよね。

重松🏉:うん。世界を救えないから。

ミュージシャンは音楽を届けて、聴いた人に刺さって、初めてミュージシャンとして価値を提供できている中で、売れないバンドマンはそこができてないっていう話ですね。

長谷部🎾:その辺のビジョン・ミッションと泥臭さの表裏一体みたいなところって、加来さんはいろんな相談を受けるときにどう感じられますか?

■本当の自分の声は聞こえているか

加来📘:結局、そこは本当に表裏一体なので、どの部分を言葉にして掲げるかは、その人の想いによってくるかなと思いますね。

本当にめちゃくちゃ泥臭いところにピンを押す場合もあれば、きれいで壮大なほうに押す場合もあって、どっちがその人の自分の言葉かにはよってきます。

そういう意味で、重松さんにお聞きしたいのは、特にビジョンは、チャレンジっていうのがスタート地点になっているのは、どういう想いやきっかけから来ているのか伺いたいですね。

スタートはビジネスモデルだという話がありつつも、チャレンジというキーワードが来ているので。

重松🏉:おぉ、いい質問ですね

加来📘:いい意味での違和感はあったので、そこをお聞いしたいです。

重松🏉:それでいうとインターネットに出会ったときって学生時代の1996年頃で、就職したのは2000年の氷河期世代なんですけど、インターネットがすごいなと思ったのは、今までは情報を持っているやつが上に立つというか、格差があったんですよ。

いわゆる大企業に入って長い年月我慢して出世したやつが勝ちみたいな、いわゆるまだ昭和っぽい時代だったんです。

でもインターネットが出てきたことで情報の格差がなくなるし、要するに個人が簡単にチャレンジできる社会になったと思ったんですよ。

「これ、すごいな!」みたいな強烈な感覚があって。

僕は地方といっても千葉ですけど、最初に大学入ったときは、付属上がってきたやつはスカしてるわけですよ。長谷部君もその口だけどね(笑)。

長谷部🎾:はい、附属育ちです(笑)。

一同:(笑)

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重松:「何だこいつら・・・」って、自分との格差を感じたわけですよ。

長谷部:面白い。

重松:就職も氷河期だったので苦しいし、サラリーマンは大変だなみたいなのがあったけど、当時盛り上がり始めたインターネットはすごいなぁと、ガラガラぽんできるなと思ったんです。

誰でもチャレンジできる世の中になるツールだなと思って、すごい感動したんですね。

それが根っこにあって、僕は2000年に就職しましたけど、その後はスタートアップにジョインしたり、インターネットのビジネスに浸ったところで、改めてインターネットはすごいツールだなと思って。

さらに個人のパワーを最大化するビジネスはないかと思って、シェアリングのビジネスはある意味で個人と個人が主人公なんで、これは最高だなと思って。

何か始めようとと思ったらビジネスでもイベントでも場所探しが必要だし。一方、物件を持っている人もただ持っているだけでは、新しい出会いや収入も生まないわけで。

何かしらチャレンジして活用することで、新しい収益機会や出会いが得られると思いました。

そういうチャレンジを最大化できるプラットフォームということで、スペースマーケットなんですね。

加来📘:すごい共感します。インターネットってすごいなと思ったのを、とても思い出しました。

重松🏉:今じゃ当たり前だけど、当時は感動したんですよ。

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加来📘:確かにそうですよね。大学生ぐらいの頃に、僕はブログってすごいなってめっちゃ思ったのを覚えてます。

普通の一国民同士がやりとりして、すごいことができるようになったと当時思ったのを覚えてます。

広告はずっと興味があったんですけど、中でもインターネット広告は面白そうだなと思ったのは、そのあたりがあったからだなと思います。

そして、結果的に個人をエンパワーメントするビジネスをしているというくくりで考えると、語弊を恐れずに言うと、僕もスペースマーケットもすごく同じところがあるなというふうに思います。

重松🏉:そうですね!

加来📘:やっぱり、そういう最初に感じた情熱とか感動みたいなのって、本当にずっと大事にしたほうがいいんだなっていうのを改めて。

長谷部🎾:前半部分でも、加来さん仰ってましたよね。結果的に自分が揺り動かされる熱いものを大事にするって、まさに重松さんの今の話もそこから始まっているとすると、そこは伏線を回収した感がありますね。

加来📘:理念をつくるときにも、そういう昔話までさかのぼれたときのほうが、いいのができると思います。

重松🏉:確かに原点だから。

長谷部🎾:起業家の方々も、そういうところを基点でつくっていっている方は多いですか?

重松🏉:いろんな人がいますね。それこそ「モテたい」とか、「貧乏で嫌だったから金持ちになって見返してやる」とか、コンプレックス型も結構多いですよね。それはそれで否定しないけど。

長谷部🎾:それも昔から持っている自分の中での着火点みたいなものですね。

重松🏉:そうそう。ただ、コンプレックス型は、ある程度お金が入って解消されちゃったとなると、熱の行き場がなくなるので、もっと違うベクトルを世の中に向けて、こういうのを改革したいとか、改善したいみたいな人のほうが長続きするのかなぁと思います。

それを長続きさせるために明文化したビジョン・ミッションが必要なのかなと思ってます。

長谷部🎾:ありがとうございます。最後に「今後、世の中はどう面白くなっていくか」をお二人から聞けたらと思います。

重松🏉:こうやってよりオンライン化が、バッとあらゆるジャンルで進んでいくと、時間・場所・空間とかがねじれてくるじゃないけど、すごく効率的に人に会えるようになる半面、またリアルの価値はすごく上がると思っています。

リアルは絶対になくならないし、人が人らしくあるためにはリアルがないとね。

やっぱりスポーツ、アート、エンターテインメントとかが不要不急と言われているけど、実はものすごく大事なものなんだというのも気付いたわけで。

いろんな体験をデジタルでより数多くできるようになっていくので良さもあるし、デジタルとアナログをうまく融合しながら、より高次の体験としてのリアルをサポートできるようにしていきたいと思ってます。

長谷部🎾:それによって結果的に、個人のエンパワーメントにつながっていくと一番いいですね。

重松🏉:そうだね。

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加来📘:まさに今日の途中の話にも出てきた、いろんな選択肢が増えてそれを選べるようになったことで、選ぶことは効率的で、難しいことではなくなっていくだろうと思います。

でもそれだけで「世の中が面白くなるのか?」というと、可能性はそんなもんじゃないと思うんですよね。

なので、選択肢が広がっただけではなく、これまでは我慢しなければいけなかったことや、インターネットが出てきたときに感じたような衝撃って、もっともっと大きい未来の可能性なんだろうと思います。

そういうときに大事なのは、自分が初めにすごいなと思ったことや、こんなやつらに負けたくないみたいな、そういうものを今はもう一回思い出すことなんだろうなと思います。

長谷部🎾:今、改めてね。

重松🏉:うん、原点をね。

加来📘:最近、ある漫画で「自分の本当の声というのは聞こえないふりをしているうちに本当に聞こえなくなる」っていう、すごい明言に出会ったんです。

「今こそ選ぶとき」で、そして選んだ先の可能性がより大きくなっている自由な世の中だからこそ、本当に自分の中にある欲みたいなものを素直に思い出して、そこにもう一回立ち向かっていくことも含めて選択する。

そうすると、もっともっと面白いイノベーションや、すごいと思うものがリアルになってくるのかなと思うので、そこは忘れず持ち続けてほしいし、自分も忘れないようにしたいなと思います。

長谷部🎾:ありがとうございます。自分の熱の原点を見つめ直して行動する。その熱や行動が個人や組織のビジョンやミッションに繋がっていくんでしょうね。

対談は以上です。
今後も様々な方々のアイディアをシェアしていきますのでご期待ください。SPACEMARKET Bizdev noteのフォローをしていただけたら嬉しいです。