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装い

「今日のお天気です」

そういう天気予報のお姉さんの服装が段々と春めいてくる。

店頭に並ぶ洋服たちも春の雰囲気が漂う。

北国ではまだ雪が降っているというのに、市場は既に春なのだ。

グリーンやピンク、イエローなどのぱっと明るく春を連想させる服が並ぶ。

今、流行はカラーパンツらしく、鮮やかな色に目を引かれてディスプレイされた服を手に取るが、ここでいつも悩みが発生する。

店頭で鮮やかにディスプレイされた服は、気に入って買って帰っても自分が着ると「なんか違うな」という違和感に包まれ、合わせる服の種類も少なく、次第にタンスの肥やしになるか、時間がたった後に処分されるのだ。

そしてまた、季節が廻ると新しい服に手を伸ばす。

そいういった繰り返しをこの人生ずっとしているなぁと服を買うたびに思ってしまう。

気に入って買ったはずなのに、1年後には「なんか違う」が毎回発生する。


このガッカリの繰り返しをしながらも抜け出せない原因を時々振り返ることがある。

まだ脱却できていないが、振り返りだけはなぜかしている。

まず、私が服を選ぶ基準についてだが、第一に「他人からの印象」を気にして選んでいることが一番大きい。

振り返ると、昔の思い出が色濃いからかもしれない。

小学校時代、私服で登校していた人は多いかもしれない。

私の時代、特に流行というものはなかったと思うが、一時だけクラスの中でチェックのシャツがうっすら流行りかけたことがある。

でも私は同じものは持っていなかった。

とある場面で、「あなたのシャツはちょっと違うね」と言われた一言が今でも耳に残っている。

その言葉を聞いて初めて、私は「流行の柄」と違うものを着ていることに気が付いた。

中高時代、なぜかバーバリーのマフラーが流行った。バーバリーのマフラーを巻いている子はみんなかわいく見えた。

大学に入って私服の難しさを覚える。ファッション誌を買ったことすらなかったので『普通』の服がわからない。

友達に「もっとちゃんとした服を着なよ」と言われたこともある。

ファッションに凝っていて、かわいい装い、センスのある装いの子は目を引いた。仲間が集まっていた。サークル内でも華やかさが差を生み出すことはあった。

そこで段々と気づく。

装いで人の関わりは変わるということ。

だからファッション誌を買い、街に行って服を買う。

流行が変われば服も変える。永遠に入れ変えを続けているのだ。

ところが年齢を重ねるうち、無理して合わせていることに苦痛を感じるようになる。

まずパンプスが痛い。

コンサバ系の服装をしようとしても足のサイズが24.5から25の私は、Lサイズの靴でもまず合わない。そもそも足が細長いので形もあってない。痛い。

袖の長さが足りない。

身長が166とちょっと大きめの背丈。

一般的な女子の服は160位なのだろう。袖の長さが足りない。手首寒い。

肩幅もちょっと広めだから合わない。となり、体系がそもそも服の一般的ではない。だから選べる幅がものすごく減る。

なんとか頑張って一般的サイズにしがみついていたが、周りの着こなし女子には敵わないわけで…。

ここで、合わないことに気づくと無理にコンサバ系を着ようとは思わなくなった。冠婚葬祭用のもの以外、とがった靴はほとんど持っていない。

それでもカジュアルな着こなしに憧れて服を買い、また流行が過ぎたら入れ替える。

着れるかなと思って服を買う。

その入れ替えの頻度が一時期とても多くなった。

なぜ多くなったか今振り返ると、自己評価が著しく落ちていた時期だった。

ちょうど体調も崩し、年も重ね、「このままでは」という焦りがあった時期。

印象のいい服を着れば、印象のいい自分に手っ取り早くなれる気がした。

着ることで自分を変えられる気がしていたのだろう。

お店に足を延ばすたび、何かしら服を買っていたと思う。

ところが体調を崩し、体系も変わり、何を着ても似合わないと思うネガティブな時期になると、かわいい服は着れなくなった。

メンズ服をちょっとカッコよくさっぱり着こなす系にシフトして、かわいさを求めてませんよ適な装いをしていた。

でもやっぱり好きな服が着たくて、体調管理で体系を戻すと、着たい服が着れるようになった。気持ちも前向きになったからか、明るく、かわいいなと自分で思えるものを選んだ。そう、見られたかったからかもしれないが。

冬に赤のセーターを買った。

それがとても目を引く赤で、着た日はなんだか元気が出た気がする。

色の効果というやつかもしれない。

それを実感してから、他人からの印象に、ちょっと自分への勇気づけも入れて服を選ぶようにしている。

この春の流行のカラーパンツはどれも鮮やかで、フレッシュな気分にさせてくれそうな気もする。

冬は黒のスキニーとインディゴのジーンズばかりだったから、春らしさが欲しくなった。そして年を感じさせないような明るさを手に入れたいと思った。

そう考えながら今年買ったカラーパンツは4本。

1年後にはまたタンスの肥やしになるのかな?

憧れのミニマリストには程遠いけれど。

いつか自分の気持ちを大事して、特別な一着を大事に着続けることができたらいいな。


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