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【私のアウトドア履歴書♯4】石黒 卓弥さん(株式会社LayerX 執行役員)

スペースキーの小野です。コロナの影響により企画をストップしていましたが、オンラインで再開することにしました。4回目である本記事では、人事・組織開発で豊富な経験をお持ちの石黒卓弥さんにお話を聞きました。


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石黒 卓弥 さん
docomo、メルカリを経て、2020年5月より株式会社LayerX執行役員に就任。
前職のメルカリではHR部門の責任者として60名→1700名の組織開発を推進。
キャンプをこよなく愛する3男児の父。



石黒さんとキャンプの原点


-オンラインでのインタビューをお引き受けいただき、ありがとうございます!石黒さんのアウトドアの原点について、お聞かせください!

はい、よろしくお願いいたします!僕はキャンプをよくやっているのですが、きっかけは子どもたちに自然の中での生活を体験させたいと思ったからです。というのが、僕の実家がなかなかの田舎でして……。

プレゼンテーション 5

実家が養鶏場を営んでいまして、森の中にあるんですね。僕の育った環境を、子どもたちにも体験させたいというのが原点。ただ、すぐにキャンプデビューしたわけではなく「いつか行きたいね」という程度。前職のメルカリで、メンバーとバーベキューをする機会があったのですが、家族で参加してすごく楽しかったんです。その体験がキャンプへ行くきっかけとなりました。

-なかなか珍しい幼少期ですね!

そうですね、一般的なご家庭からすると珍しいかもしれないですね。毎日森の中にいる状態なので、森が遊び場であり生活の場。泥遊びして泥だらけになったり、食べるために山菜を採ってきたり。そのような生活をしていたので、よく最近まで六本木ヒルズで働いていたなと思います(笑)。

-ギャップがすごい(笑)。それで、最初のキャンプはどうでしたか?

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(デビュー戦の「カンパーニャ嬬恋」)

知識も道具もないので、最初は高規格キャンプ場がいいよねと。無印良品のキャンプ場である「カンパーニャ嬬恋」に行きました。東京からだと結構遠いし、6月だったのですが寒くて……。今となっては笑い話ですが、その当時は本当に道具を持っていなかったので、キャンプ場の売店でダッチオーブン買ったんですよ(今でも忘れない、16,000円でした)。そんな感じでワーワー言いながらなんとかテント設営したりして。隣のサイトの人が「バター貸してくれませんか?」とかっていうコミュニケーションがあったりして。「ああ、キャンプってこんな感じなんだ」と思いましたね。そんな訳で、楽しかったけど寒かった、それがキャンプデビューの印象です。

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(子どもたちもワイワイ!)

-最初って何もわからないですからね。

最初の印象が大事。悪かったら、もう行かなくなってしまいますからね。なので、僕は一緒に行く人にはいい体験してほしいと思って、いろいろとおせっかいに(笑)アドバイスしたりします。

-そこから、キャンプにハマっていったきっかけは何ですか?

徐々に周りにもやっている人が増えていって、知り合いと一緒に行く楽しさはありましたね。子どもたちのお友達家族と行ったりとか。キャンプ場には子どもが遊べる施設が充実している所もあり、自然の中で思いっきり子どもたちと遊べるのもとても楽しくていいなと。

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(西日本を代表する高規格キャンプ場の「青川峡キャンピングパーク」)

あと、その土地ならではの食材を食べたり自然に出会えたりする偶然性もとても楽しいですね。昨年はうちの妻の実家がある九州まで車で行ったのですが、その道中でキャンプしながら行きました。関東を出て、西日本の人気キャンプ場に行くのもいい機会でしたね。素晴らしい場所なのに空いていたり、安かったり、その土地ごとの味覚をその場で買って食べたり……。普段できないことができる楽しみに出会えるのが、キャンプの醍醐味なのかなと思います。

-普段やらないことができる楽しみってありますよね!

以前のキャンプでは、猪肉を食べましたね!(その時はカレーにしました。)料理は好きなので、現地での食材を使ってキャンプ飯を作るのも楽しいですね。キャンプに慣れた人だと、現地での時間を楽しむために下ごしらえをしていく人も多いかと思います。僕は最近だと、子どもたちとの料理も楽しみのひとつになっています。

-キャンプをやり初めて、お子さんたちに変化はありましたか?

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(ペグ打ちも様になってきました)

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(薪運びも重要な戦力として助かっています)

そうですね~、手伝いはよくやってくれます。ただ、そのためには何を任せるかが大事だと思います。当然皿洗いとかはやりたがらないんで、“映える”仕事を任せてあげる工夫とかは必要ですね(笑)。うちではペグ打ちや、焚火用の枯れ木拾いなどをやってくれています。

あとは、社交性もついたと思います。初対面の子たちともすぐに打ち解けられるし、たった2泊3日でもすごく仲良くなるので、いい思い出になっているんじゃないかなと。

-石黒さんにとって、キャンプの魅力って何ですか?

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(本物の自然はやっぱり違います!)

仕事や情報が都会に集約される中、僕自身も都会でマンション住まいをしています。とはいえ、元々は自然の中で生活してきたので、キャンプはメンタルバランスを整えるための要素かなと思います。都会にも自然はありますが、やっぱり規模感が違う。球技禁止など、制約がある公園もたくさんありますし。妻にも子どもたちにも、解放感ある本物の自然に触れる機会があったらいいなと。

あとは、キャンプに行くと妻とゆっくり話す機会をつくれたりするのもいいですね。普段なかなかゆっくりと話す時間がないので、貴重な時間がよかったりしています。

-いいですね。家族みんなにとって貴重な時間となっているようですね。キャンプ以外でしているアウトドアレジャーはあったりしますか?

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(湖でカヌーもよかったです!)

昨年は登山にも行きました。キャンプだと日帰りはきついですが、登山だったら可能。そんな気軽な気持ちで登ってきました。あとは、湖でカヌーやったり。キャンプと合わせて隣接するアウトドアを少しずつやるようになりました。今年はSUPに挑戦してみたいですね!

-「自然があたりまえ」という想いが根底にあり、それをお子さんたちに体験させながら成長に合わせて楽しみも広がっているんですね。すごくいい体験!


お気に入りのギアについて


-次に、お気に入りのギアについておしえてください。

なんだろう……。(取材依頼がきてから)ずっと考えているんですが、たくさんありすぎて決められない……。

「キャンプに行こう」と思って、最初に買ったのは車でした。特にこだわりなく、SUVがいいなと思って選んだのが、SUBARUのフォレスター。4年で4万キロ以上走っているので、まあまあ走り込んでいますよね。

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(ランドロックとフォレスター)

最初のテントはスノーピークのランドロック。最初こそありものでギアを買っていましたが、徐々に“いいもの”を揃えたくなって、今ではキャンプギアの「沼」にハマってますね(笑)。

-わかります(笑)。

テントは2基、チェアに至っては2回買い替えてついにカーミットチェアに行き着きました(ここより先はないかな)。コットも今はヘリノックス。ルーメナーもすごく便利ですよね!いろいろな人におススメしているのはルーメナーです。でもイチオシかな、どうなんだろう……。

テント (1)

(NEMO Equipmentのヘキサライトエレメント6P)

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(カーミットチェアは、アウトドアによくなじむベージュをチョイス)

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(飯盒も捨てがたい!)

-だいぶ迷われてますね(笑)。ちなみに、キャンプで好きな時間は?

なんだかんだ言って、料理とか食事の時間ですかね。あ!スノーピークの「まな板・包丁セット」は一番最初に買って今でもずっと使っているギアですね。他のギアは買い替えて何周もしてるのに、これは変えていない。ずっとスタメンギアです。

-たしかに、使わないときがなさそうですね。

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(使い込んでいい風合いになってきました)

そう、使わないことがまずないかな。コテージ泊のときも使うし、いつも毎回使うギア。包丁の持ち運びの点でもスマートだし、軽くて使い勝手がいいのが使い続けている理由ですね。

-間違いなく、お気に入りギアは「まな板・包丁セット」ですね!


石黒さんとキャンプの関係性


-次に、仕事においてアウトドアはどのような影響があるとお考えですか?

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「キャンプ」という共通の趣味があるのは、ビジネスにおいても有効だなと思うことがあります。前職のメルカリでは組織が大きくなるにつれ、業務上関わりのないメンバーも増えてきました。そのようなときに、そのメンバーとつながりを生む重要な機会になっていましたね。社外の方との話が弾むことも多いです。「おすすめのギアおしえて!」や「キャンプ場どこが好き?」といった話題は普通に盛り上がるし、楽しい。適度なニュース性もあるし、正解がないので純粋に情報共有できるのがいいですね。

僕自身、世話を焼くのが好きな性格なので、「これ良かったよ!」という情報をおしえてあげるのが何より楽しかったです。性に合っているし、進んでコミュニケーションが取れる最強のツールだったのかなと。

-キャンプ好きはおもてなし好きが多いと言われますし。

あと、休みをしっかり取るようになりました。子どもが小学生になって、月曜日は振替休日になることがあるのですが、そういう時には月曜日を有給にしてキャンプに行きます。人気のキャンプ場が取りやすくなるだけでなく、道路も空いているしメリットは大きいですね。また、マネジメントレイヤーになると、意識して休みを取ることも大事な職務だと考えています。その点で、有給を有意義に使えているのはよい影響なのではないかと。

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(予約が取れないキャンプ場として有名な「北軽井沢スイートグラス」のコテージ)

-なるほど。私生活ではどうでしょうか?

私生活でもいい影響なのではないでしょうか。キャンプにはチェックアウトの時間があるので、朝はちゃんと起きないといけない。遊んでいても生活リズムが整うこととか、メリットですかね。

-撤収を考えると朝寝坊できないですよね。ちなみに、ネガティブなことはありますか?

う~ん、そこはないかなぁ。敢えて挙げるなら、『sotoshiru』ってアプリがあるんですけど(笑)、プッシュが多くてすごく気になるということですかね。通知の内容によっては集中力下がってしまうんで、そこはなんとか!

-それはすみませんでした(笑)。


アウトドア業界に期待すること


-昨今のアウトドア業界に対して思うことはありますか?

キャンプなどのアウトドアはテクノロジーから離れる場所でもありますが、うまく共存できたらいいなと思います。支払いはスマートになったらいいなと思う一方、「シャワーを3分使うには100円かかる」などの経済体験を子どもにさせたいと思う部分もあります。なので、スマートにできる部分はスマートに。デジタルデトックス的な要素もあるので、そこのバランスをとりながら共存していくのがいいのかと。

-たしかに、受付でのチェックイン待ちなど解決できそうなことはありますね。

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あとは、長く付き合えるようになればいいなとも思いますね。僕もそうですが、親子キャンプを楽しもうと思うと、実はたった10年くらいしか期間としてはないんです(3歳~15歳まで行くとして)。「今年行こうかな~」という人がもしいたら、1日でも早く行くことをおすすめしますね。

アウトドアは、知れば知るほど楽しい。それにはスペースキーさんのようなメディアの影響がすごくあると思います。メディアを見てセレクトショップに行ったり、ユニークなガレージブランドを知れるようになったり。それぞれのスタイルに合わせて様々な楽しみ方が出てきているので、それら定期的に出てくるモノ・コトを支援する仕組みも大事かと。

-新規参入を支援する動きは、業界の継続のためにも必要ですね。

最近だと、有名アパレルメーカーによるアウトドア仕様の商品が増えてきましたよね。この流れが一般化してきたなという印象。こういった流れを加速するには、既存のプレーヤーさんの寛容さが必須なので、そこはぜひそうであってほしいなと願っています。同時にユーザー同士の相互マナーであったり、各自の意識も持っていくことが求められていくのではと思います。

-そうですね、相互の思いやりやマナー意識は大事ですね。ただ、マナー啓蒙などのテーマはユーザーに刺さりにくいんですよね。

そこはテクノロジーの力でアップデートさせていくのがいいのではないでしょうか。例えば、キャンプ場内のWifiにつなぐ前に、キャンプ場の利用方法の動画を見てもらうとか。お互いがストレスなくできるようになればいいので、そこはテクノロジーの力で如何様にもできると思います。

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要は、キャンプが好きでよく行く人と初心者との“エントリーバリア”をいかに下げていくか。これって、僕の専門である採用にも通ずるところがあって。お互いがリスペクトしていないといけないし、必要なら発信をして期待値のズレをなくすことが成功へのカギ。キャンプもInstagramだけを見ていれば、映えるごはんは美味しそうだし楽しそう。でも実際は、準備とかものすごく大変だったりもする。始めるときの注意とか、情報と認識のズレがないようにしてくのが重要だと思います。

その点で、情報発信はWebだけでなく、紙媒体も一定層意味があるかと思いますね。

-すごい納得です。その上で、スペースキーに期待することは何でしょうか?

そうですね、『RECAMP』の動きが広がっていくのはおもしろそうですね!Webのプロであるスペースキーが、リアルな場のキャンプ場を進めていく。Web主体側からキャンプ側に行くケースは珍しいと思うので、オンラインとオフラインの融合がもっと進めば、イノベーションが生まれ、もっとおもしろくなるのではと!

最近は、リニューアルしたキャンプ場を敢えて探して行くようにしています。今までの前提にない新しい概念で作られているところもあり、そこでの体験は新鮮でおもしろいですね。

※『RECAMP』とは
スペースキーとR.projectが協同で設立した、キャンプ場運営企業です。「日本の、BASECAMPへ。」をビジョンに、日本各地の自然資源の活用を推進しています。

-なるほど。

あと、御社の『○○HACK』もそれぞれでシームレスの動きが加速するといいのではと。僕にとって『YAMA HACK』や『TSURI HACK』はやり始めたら見るメディア。「やろう!」と思ってから見に行くのではなく、その前から使える動きがあったらいいなと思います。ハマる人はとんでもなくハマるので、そのきっかけとなるひとつのレジャーとして、もっと認知されるようになればと思います。

とんでもなくハマった人の記事はこちら↓↓


挑戦してみたいこと


-アウトドアで挑戦してみたいことはありますか?

登山は昨年から始めたので、少し難易度高い系の山にも挑戦してみたいですね!アルプスとか景色が壮大なので、登ってみれたらおもしろいだろうな~。あと、フルマラソンはやってみようと思っています。茨城県で開催される「水戸黄門マラソン」を狙っていたのですが、コロナの影響で早々に中止が決まってしまって……。状況を見ながら、挑戦していこうと考えています。

-いいですね!アウトドア×ビジネスでやってみたいことはありますか?

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いつか、キャンプ場のオーナーはやってみたいです!バーのオーナーくらいカジュアルでもいいですね。複数の好きなキャンプ仲間と共同オーナーでもいいかも。いろいろな課題はありますが、働き方の自由化が今の流れで進んでいくと少し変わっていくのではと思います。

実際にいろいろなキャンプ場を見て回っているので、その知見・経験を活かしながら新しいキャンプ場のあり方をつくっていきたいですね。一方で、収益性は工夫のしどころがある。グッズ販売とか、サブスクリプション……、どうやって収益性を取るかは知恵を絞らないと。

-キャンプ場は今後、サービス業やサブスクなど、いろいろな可能性がありますからね!今後もキャンプを通じて、アウトドアを長く楽しんでください。本日はありがとうございました!


■ おすすめアプリ ■

Instagram

Twitter

sotoshiru

これらアプリの「タグ検索」をよく利用します。場所情報とかギアとか、いろいろな情報を入手できてとにかく便利!

mercari

キャンプギアを売ったり買ったりするサイクル頻度が多いので、重宝しています。売ることを前提にすると、高品質(でも高価格)なギアにも投資しやすくなりますよ!でも先日、Helinoxのチェアを焚火で溶かしてしまいました(笑)。


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■ 編集後記 ■

自然の中で育った石黒さんにとって、キャンプは都会での生活の中で自然とつながれるツールでした。また、家族とのつながりを強くするツールであり、成長し拡大した組織の中でスムーズなつながりを生むツールでもありました。

キャンプが生んだ「つながり」は、もちろんスペースキーとのつながりも生んでくれました。今後も石黒さんにとって、キャンプが新たな世界や仲間とのつながりを生むツールとして、長く楽しんでいただきたいと願っています。