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キューブリック監督作品DVD1000円フェアで起きた事件

むかし、期間限定で、スタンリー・キューブリック監督作品のDVDを、1000円で売ってたことがありました。

渋谷のTSUTAYAでも、1階の目立つ場所に、かなり大々的にPOPを掲げ、さまざまな作品が平積みされていました。

たまたま来店していた私も、わーすごいな、安いな、と思いました。

その翌日、事件は起こりました。

その頃、ある会社に外注で出入りしていたのですが、私と同様に、外注で来ている、かなり美人の女性(Aさんとします)がいました。

いつものように、Aさん+会社のおじさん複数人+私でいるとき、Aさんが声を弾ませて言いました。

「そういえば、今、キューブリックの映画、千円なんですよ! すごくないですか!」

映画好きなメンバーだったので、皆知ってました。
「知ってる」「安いよね」と口々に言いました。私も言いました。

Aさんが続けました。
「さっすがー、皆さんご存じなんですね!
私も、昨日、渋谷のツタヤで『2001年宇宙の旅』を買いましたよ~」

皆、えーそうなんだ、いいね、と言いました。

さらにAさんは続けます。
「皆さんは、どの作品を買いました?」

急にみんな、黙りました。
おじさん達も私も、千円になってることは知ってたけど、誰も買ってなかった。

Aさんはビックリしたように言いました。
「え、私の周り、みんな買ってますよ!? 
皆さん、最近ツタヤとか行ってないんですか? 室橋さんも?」

名指しされたので、私は答えました。
「私も、昨日、渋谷のツタヤに行ったんだけど…」

「えー、じゃあ、めっちゃキューブリック並んでましたよね! なんで買わないんですか?」

目を丸くするAさんの様子に、周りのおじさん達は笑い出し、「なんで室橋買わないんだよ」とか言いました。

気圧された私は、口ごもりながら言いました。
「いや、迷ったんだけど、違うやつ買ったから…」

「え?何を買ったんですか?」とAさん。

私は答えました。
「『インナースペース』……」

「え…? インナー…? そんな作品、キューブリックにないですよね?」
Aさんはさらに問うてきます。

「いや、違う、ほら、デニス・クエイドとメグ・ライアンの、あれだよ」
なぜか言い訳がましい感じになりました。

Aさんが笑い出しました。
「うふふ、そっち買っちゃうんだ~」

つられて、周りのおじさん達も次々笑い出しました。

「なんでインナースペースやねん」
「バカが買うやつ」
「いくらだった?3800円!?ガチのバカじゃん」
「Aさんを見習わんかーい」

みたいな感じでした。

私は、いやー、なんでって、おもしろいじゃないですか、インナースペース、わくわくするし、マチネー土曜の午後はキッスで始まると迷ったッスけど、みたいなことを言ってお茶を濁しました。

その後、Aさんが次の仕事のために退席すると、おじさん達が、まだしつこく、いじってきました。

「インナースペースwwwww」
「頭悪い、インナースペースwwww」
「でも、俺もどっちかといえば、そっち派www」
「インナースペース、おもろいよな」
「2001年よりインナースペースだよwww」
「そっち選ぶお前、イイと思うwwww」
「マチネーと迷うの分かるwwww」

Aさんがいた時とは、明らかに違う感想でした。

それは、私をフォローしてくれたんじゃなくて、本当におじさんたちの本心だったと思います。

でも、たとえ本心だったとしても!!!

いや、本心だからこそ!!!

おまえら、二度と!!!一生!!!ジョー・ダンテの映画!!!観れない呪いにかかれぇぇぇぇーーーーー!!!!!!

10年以上経ってるのにこんなこと書いて、しつこく観れない呪いをかけてます。いいか、グレムリンも、ピラニアもだぞ。

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