王について

2023年年末からHUNTER×HUNTERを読み始めた．滅茶苦茶面白い．
今原作25巻まで読み終わって，新アニはお前は光だまで観て，旧アニは最終試験のピカvsヒソヒソまで観た（いや闘うんかい！とびっくりしたよね）．

原作25巻は宮殿に突入して，イカルゴの貸しだぞ！で終わるところなんだけど，この蟻編が一番好きかもしれない

メルエムとジャイロを対比すると面白いなーと思って．
ジャイロはNGLの王で，他のNGL民と同じく兵隊蟻にされたけど唯一記憶を引き継いで女王の元から逃げ出すことに成功したらしく，
例によって本編には一切絡まないし顔すら明らかにはされないのにやたら人なりを詳しく描かれるキャラなんだけど
彼は金銭的にも精神衛生的にも劣悪な環境で育って，言葉よりも先に石積みを覚えさせられ，自由にトイレに行くことも寝返りすら許されず，唯一の肉親の父からもらった唯一の言葉は他人に迷惑をかけるな．
ジャイロにとって父親は宇宙の中心で，父親がくれたその言葉を大切にしていて，自分は父に必要とされている＝愛されていると信じて生きてきたが，ある事件がきっかけで父は自分に興味がないと思い知ってしまい，父を殺して数年かけてNGLを設立し，世界に毒（麻薬）をばら撒く．蟻に国を奪われた後も意思を失わず世界のどこかに旅立っていく・・・という方

翻ってメルエムは生まれながらにして王で，強大な力を持ち，生まれたその瞬間から周りの誰もを傅かせ，死にかけの母を芥とも思わず生きてきたけど，軍義では到底敵わない腕を持ちながら，負けたときは死ぬ，自分に軍義の腕以外の価値はないという意思を持つあまりに脆い生き物 コムギを知って自分の価値はなんだ？という疑問にぶち当たる．ジャイロが聞いたら一笑に伏しそう．

宇宙に絶望したところから自分の意思（悪意だけど）で生きていくジャイロに迷いはないけど，桁違いの万能感を持って生まれ目の前を遮るものは何もないが自分を「王」以外の何者として見てくれる他者のいない王は，一人の人間として誰かと対峙したときに自分は何か？という迷い，戸惑いが生じてしまう
もし女王が生きていたらそんな疑問を抱かずにすんだのだろうけど．