王とコムギについて

王がコムギに名を聞くシーンは読み返せば読み返すほど良い.
人間も蟻も,食糧か兵としてしか見ていなかった王が初めて「個」を認識する瞬間は感動的である.同時に読者にとっても初めてコムギの名前が知らされるので,より印象的になっていると思う.
まあ他の蟻や人間を物や駒としてしか見ていないのは王に限らず王の周りの蟻たちもだけど…

そしてコムギにとっても初めて一人の人間として自分が認められた瞬間だったのではないかと思う.
本当に軍儀の他には何もできない,負けたらただのゴミだとずっと親に言われてきたと語っていたように,彼女は軍儀の王であること以外のアイデンティティーを許されなかった人なのだ.
(でも,ただのゴミなんです,という時のコムギの表情が見えないのは深みがあって良い・・・)
そんな種族も境遇も全く違うのに軍儀を通じて互いを知った二人が初めて名前を知る(知ろうとする)瞬間・・・これは紛れもなく恋ですよね.

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