short story series『と、私も前々から考えていた』「たばこ」case01

作・橋谷一滴

あ、たばこ。
あ。
これは確か、確かというか竹内の。竹内のたばこだ。

今日は1日休みで、久しぶりに掃除をしていたらこんな時間で。
17時にメールが入っていた。
「あきちゃん。最終バスで東京戻るよ」
竹内からではなかった。

竹内は私の親友だ。
ずっとちょっと変だった。
毎日割れた眼鏡をかけていて、吸わないたばこをズボンの右ポケットに入れていた。
そのたばこが今私の手にある。
たばこの封を開けた。

私は竹内のことが好きだった。
のだと思った。
AMERICAN SPIRIT
彼の持っていたたばこの匂いを初めて嗅いだ。
なんだかおかしくなって一人で笑った。

私はいつまでたっても彼のことを思い出して笑うだろう。
やっぱり君は私の親友なんだと思う。

やっとメールを返してご飯を作り始める。
「焼きそば作って待ってる。 あき」

竹内。君のおかげで私は今日も幸せだ。
きっと君にも良いことがあると良い。
私の携帯に竹内のアドレスはもうなくて、君から返信がくることはもうないのだ。

2018年10月29日

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