short story series『と、私も前々から考えていた』横断歩道 case 04
作:渡邉大
僕の通っている学校の前に、小さな横断歩道がある。
学校に行くときにはいつも使っている。
僕の住んでる町はちょっと田舎で、通ってる中学校も偏差値も低くてガラの悪いひとばっかりだ。
僕はその学校で生徒会長をしているが、あの学校では生徒会長なんて何の意味も無い。
最初は張り切っていたが、仕事をやろうとしても、みんな全く動いてくれない。
なにか学校を良い方向に進めようなんて思ってもあの学校で生徒会長なんて立場じゃ、誰も聞く耳を持ってくれない。
…あの学校に僕という存在は必要ないのかと思った。
学校が終わった帰り道、横断歩道の信号を待っていた。するとうちの学校から出てきた生徒はみんなその小さな横断歩道を無視して行く。
…横断歩道って必要だと思う。
だけど横断歩道じゃないところを渡る人は沢山いる。
おまけに車も通ってかすれるほどになっている。
僕はこのかすれた横断歩道を綺麗に直したいだなんて思ったけど、もちろんそんなこと出来る力はない。
でも、何か行動をしないとこの横断歩道はそのうち誰も使わなくなって無いも同然になってしまう。
それは嫌だった。
それは何だかとても嫌だったんだ。
だから僕は毎日その横断歩道を渡っていた。
横断歩道というものはちゃんと必要なんだと思いながらわたっていたんだ。
2018年11月15日