short story series『と、私も前々から考えていた』「たばこ」case04

作・渡邉大

古くからの友人のアイツと喧嘩した。もう少しで40にもななるのに少し情けなく思う。
でもイライラはまだ残っていて俺はタバコ取り出す。

俺は昔からタバコを吸っていた。
あの、赤と白のデザインの「タバコ」と書いてある看板を思い出す。

俺は、学生の頃いわゆる不良だった。
授業はサボり、単車に乗り、コンビニの前で駄弁る、そんなテンプレートな不良だった。

たばこはその時から吸っていた。

イライラすることがあれば学校の屋上でタバコを吸って、空に流れる雲を見ていた。

そうしていたらイライラはスッと何処かに消えていった。
タバコの火がイライラも一緒に燃やしてくれたように感じていた。

そういえば、タバコと言えばアイツだった。

アイツは身なりはしっかりしていて、でも学生の頃の俺とつるむくらいだからやっぱり不良と言われるような奴。
割と怒りっぽくてよく喧嘩はしたけど3~5分で怒りの火が消えるようなちょっとだけ変な奴。

タバコを吸っているときはいつもアイツがいた。

思えば停学中の時も、家出した時も、喧嘩したあとだってアイツはいたんだ。

…ああ、そうだった。
アイツとタバコはセットだったんだ。
アイツとタバコがイライラを消してくれていたんだ。

空を見ながらしばらくタバコを吸った。

イライラが消えていく。

「お前ってタバコみたいな奴だな。」

2018年11月1日

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