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こうして出逢えたのも、何かの御縁でしょう。

自分の生まれた1973年、長く続いた学生運動も終焉を迎え、やっと平穏な時代になると思われた矢先に、中東の戦争を端に発したオイルショックが日本を襲った年だったりする。今の状況に似た時代なのかもしれない。

そんな先の見えない時代に発売されたあるアルバムがある。そのアルバムは最終的には日本初の百万枚突破を達成する。井上陽水の「氷の世界」だ。
学生運動時代にもてはやされた政治的や意味深な歌詞でもなく、また今までのポップスとも異なるメロディー。ニューミュージックと呼ばれる音楽の先駆けのひとつだ。モラトリアムの間に生まれた奇跡的な音楽と言ってもいいだろう。

陽水本人が信奉するボブ・ディランと近いスタンスで、シニカルではなくアイロニカルに政治や宗教からは一歩離れた処から風刺を絡めてくる。氷の世界で歌われる歌詞は時代風景も含めて考察すると面白かったりする。

僕のTVは寒さで画期的な色になり
とても醜いあの娘を
グッと魅力的な娘ににして消えた

アメリカではウッドストックの行われた1969年を一つの区切りとする作品が多いが、日本では1973年が一つの区切りになっているのかもしれない。そんな面倒な年に生まれたから、その後も受験戦争や就職氷河期を味わったのかもしれないのかもしれない。

そして今年もまた区切りの年になるのは明らかだ。喪失の年なのか再生の年なのかはまだ決まっていないけれども、区切りなのはみなさん気付いているのではないだろうか。

たしかに1973年は特異な年であった。そして村上春樹の作品でも私が一番好きな作品の題名にもなっている年でもある。私はまたもや喪失と再生のモラトリアムという時間を過ごしている。

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