馬が見えるウマンション

こんな俺にも婚約者がいたんだよ。

公団住宅ってあるでしょ？いまはＵＲって言うのかな。あれってほんとにピンキリでさ、古い昭和の団地みたいなのもあれば、けっこういい場所に建ったばかりの新築もあるんだよ。

家賃はだいたい相場通り。めちゃ高いわけでも安いわけでもない適正価格。抽選倍率が結構高くてさ。まぁ当たればラッキー、たぶんハズレるだろうけど、くらいの気持ちで応募したわけ。

そしたら当たったんだよ。倍率10倍くらいの二人暮らし用の部屋。結構な高層マンションでさ。アクセスも悪くない。そんで婚約者と内覧に行ったのよ。

その部屋、ベランダから競馬場が見下ろせんの。

「すげー！馬が走ってんのみえんじゃーん」って喜んでたらさ、なんか彼女が不機嫌なんだよ。そういえば彼女の学生時代、父親がギャンブル依存症で借金して大変だったんだよ。

俺、そのことすっかり忘れててさ。なんかその内覧のあとにギクシャクして。内覧の後に飯食おうって話してたのに急用ができたとか言われて帰っちゃったの。

で、別れた。で、そのウマンションも契約しなかった。のをあのマンション見てたら思い出しちゃったよ〜。次のレース、彼女の誕生日で買うわ！