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しあわせとはなにか。(小説)

  
  
  
   
セクシャルマイノリティには
先天的か後天的なのかと言うのがあって、
小さい頃から私はバイセクシャルの自覚があった事はあったのだけど、
  
バイセクシャルと言うのは本当に色んな種類
(種類と言う言い方は正しくないかもしれないけど良い言葉が見つからない)が居て
男性も女性も愛せるよと言うバイセクシャルも居れば、
   
男性か女性かどちらかなんて気にしない種類のバイセクシャルの方も居る。
(多分私も知らないもっといっぱいの種類もいるかも!)
   
  
私は小さい頃、
例えば幼稚園で遊ぶ子が男の子か女の子かというのはそんなに自分の中で問題じゃなかった。
性差が有るのは認めては居るのだけどそんなに私の中で迷う材料にはならなかった。
   
  
     
ただ小さい頃の自覚と言うのはわりと曖昧だったりするから、
大人になってみて、男性か女性かで気にして人を好きになる事を選んでなかったなー。
極端な話をするとオカマさんもオナベさんも好きだし、
あ、私って性別とか気にしないタイプのバイセクシャルだったんだ!とはっきり気付いたので
私のバイセクシャルは先天的なのか後天的なのかと言うのが難しい。
    
   
   

交叉いとこ、平行いとこと言う言葉をご存知だろうか。
  
「交叉いとこ」と言うのは、
父方の姉妹の子供や、母方の兄弟の子供、
「平行いとこ」と言うのは、
父方の兄弟や母方の姉妹の子供、
  
父親の兄弟(男性)の子だと平行いとこで、父親(男性)の姉妹(女性)だと交叉いとこなのだ。
(ちょっと分かりにくいので図にしました)
  
  


    
   
実はこの平行いとこに関しては
結婚が認められていない国も沢山有る。
  
日本では交叉いとこも平行いとこも結婚が法的に認められている。
日本人の目には交叉いとこも平行いとこも同じ「いとこ」
   
国によっては、両者にきっちり区別をつけ一方をタブーとしている。
   
厳密な科学とかの根拠はなく、
恣意的に決められているということ。   
   
   
かつて、「らい病」と言われていたハンセン病は皮膚が醜くなる、
見た目が悪くなるから隔離の対象だった。
  
でも、結核は隔離の対象では無かった。
結核は伝染るのに、咳を介して。
結核の患者さんは綺麗だったから。
   
「ビーナスの誕生」と言う絵、
貝の上で裸の女性が立っている絵、
あの絵のモデルさんは結核だったそう。
(ちなみにあの絵のモデルさんはシモネッタさんと言う方です。
ウソじゃないよw!)
  
結核患者さんは、肌が白くなり
痩せて目が大きく見え、
美人に見える。
だから隔離の対象じゃなかった。   
   
   
人間は案外愚かだ。
恣意的に、患者さんを隔離するとか、しないとか。
     
HIV陽性だ、と言うだけで混乱して
「うちには患者専用のベットや部屋が有りません」
と言って診察すらしないお医者さんや病院もいまだにある。
(全部が全部じゃないですよ!)
   
単なる差別と偏見からくるいじめだと断言したい。
    
  
  
  
私にはいとこが居るのだけど、
名前を…そうだな…仮名でね、
うちの猫の一番最初に来た子で葉月と言う子が居るので
とりあえずいとこを「葉月さん」にしておきましょうか。
    
  
葉月さんは私より、4歳年上の男性で、
私は長女で上にきょうだいがおらず、その男性は私にとって
お兄ちゃんの様な…いや違うな、お姉ちゃんの様な存在だった。
   
   
家が遠くだったので、
お正月や夏休みに、おじいちゃんちに行くといとこが居て、
小さい頃から一緒に遊んでいた。
    
   
おままごとをしたり、
なぜか私ががさつな女だから(なんで!)あなたはだんなさまね、
僕はおくさまね。なんて、
おじいちゃんちは田舎だったので
ふたりとも裸になって川で遊んだりもしてた。
   
  
こんな話をするのなんだけど、
畑で一緒に野グソした事もあったんだったw
   
あっ、おまわりさん
すみません、小さい頃の話です。
すみません、はい。
    
    
葉月さんが私の事をどう思っていたかは分からないけれど、
私は葉月さんの事が好きだった。
私が初めて男性を好きになったのは葉月さんだったかもしれない。
  
それは恋愛感情だったのか、憧れだったのか、
今となってはなんだったのか良く分からないけれど、
でも一緒に居て心地良さは有った。
ずっと一緒だったら素敵だろうなとは思っていた。
  
   
大事な人、
と言うのは昔も今現在も確かである。
   
  
でも私は葉月さんがこの先私を人として好きだとしても、
恋人として好かれる事はないだろうなとはっきり確信が有った。
   
  
匂い、だろうか、
  
 
体臭とかとは違うんだけど、
葉月さんは異性愛者が持つ男性のオーラ?匂い?とは違うのをなんか本能的に私はわかっていた。
    
   
そして私は中学生になり葉月さんは高校生になった。
     
夏休みにおじいちゃんちに行って会った時に、一緒に川に釣りに行った事が有った。
    
  
が、なかなか釣れないのである。
    
  
私「ねーこれ釣れるのー?」
     
   
葉月さん「そんなすぐに釣れないよーw」
  
   
私「葉月はこーゆの楽しいの?」
   
  
葉月さん「楽しいよ、
なんかぼーっと待ってる時間も心が洗われるようで」
  
  
私「あ、そう」
   
  
葉月さん「そう言えば、雪は彼氏出来たの?」
   
  
私「なんで?」
  
  
葉月さん「恋愛は楽しみのひとつでしょw?」
   
  
私「…興味無い」
   
  
葉月さん「ふふっw
雪はがさつな女だから男子から嫌われてるんじゃないのーw?」
   
  
私「あー!そーゆ事言うん!?」
  
  
葉月さん「www」
   
  
私「葉月は出来たの?」
   
  
  
と、私は言ってからハッとなってしまった、
葉月さんのそう言うオーラを感じていたのにも関わらず、
ついカッとなって聞いてしまった。
言ってからめっちゃ反省した。
  
  
葉月さんはちょっと困った顔をしてから、
    
  
葉月さん「そうだねー
好きな人は居るんだけどね…
  
あっ、そう、
雪はがさつな女だし結婚出来なかったら可哀相だから、
雪がずっと結婚出来なかったら雪と一緒に住もうかな、
フィリピンで老後を過ごしたり…」
   
     
   
私はドキッとしてしまった、
これって、告白か!?
   
   
えー!!!
ちょっと待ってー!!何ー!
  
って動揺したら、足場を踏み外してしまい
スライディングするかのように、私は足から川に落ちた。
    
   
大事な場面で私はスライディングするかのように足からずるっと川に落ちた。
(大事な事なので2回言った)
  
  
ので返事が出来なかった。
   
葉月さんは大爆笑しながら手を貸してくれた。
あの時私が落ちてなかったら、私の人生変わっていたかもしれないし、
変わってなかったかもしれない。
  
   
それから私は学生生活がいそがしくなったり就職したり、
結婚したり、
葉月さんも色々あっておじいちゃんちに行く事がなくなり、会うことが無くなった、
    
先日、私は親戚から葉月さんが怪我をして入院していると聞いて
飛ぶように入院している病院にお見舞いに行った。
   
   
お花を持っていこうかとも思ったのだが、
  
今ほとんどの病院がお花を禁止していて、
そうだwネタでテンガ持ってったろwww
と私はテンガを持ってわくわくしながらお見舞いに行ったのである。
  
  
葉月さん「大した事じゃないから大騒ぎしないでってみんなに言ったんだよ」
   
  
私「みんな心配なんだよ」
  
  
葉月さん「有難うね、」
  
  
私「じゃーん!お土産だよー!」 
(バックからテンガを出す)  
  
       
葉月さん「あのな…(げんなりした顔)」
   
 
私「いやいやまぁまぁそんな事言わずに使ってみて下さいよーw
ここにしまっておきますからねーw」
  
   
と、戸棚にしまおうとしたら
テンガエッグが沢山入ってた。
  
  
私「おっ、これは!!!!」
   
  
葉月さん「(ため息)」
  
  
私「みんな考える事は一緒なんだねwww」
   
  
葉月さん「まぁ座りなよ、
有難うね」
  
  
私「うん、元気そうで良かった」
  
  
葉月さん「雪も相変わらずだね、
元気だった?」
   
 
私「うん」
   
   
  
それから言葉が見つからなかった、
お互いに。
   
  
無言になる。
   
   
でも嫌な空気では無かった。
無言で会話している感覚、
特に言葉など交さなくても良かった、
いやこの場に言葉などいらなかったのかもしれない。
    
   
何を思ったのか私はベットで(寝て上半身だけ起こしている状態?)座って居る葉月さんのお腹に顔を埋めた。
   
  
葉月さん「お も い よ ー
病人をもう少し労って…」
   
  
私「ふがっ(やだ)」
   
  
葉月さん「子供かよw」
   
  
葉月さんは私の頭を撫でた。
   
   
心地良かった。
   
気持ち良かったって言うと一気に変態度が増しそうなんだけどw
でもこのまま眠れそうだった。
  
   
葉月さんはこんな風に誰かを愛するかのように触れた事があるんだろうか、
  
  
葉月さん「雪は旦那さんとうまくやってるの?」
  
  
私「なんとかね
洗濯も掃除も上手な旦那で文句ばっかりでうるさいけど」
  
  
葉月さん「ふふっ、
雪は旦那さんが居ないと生きていけないんだね」
  
  
私「うーん、そうなんかなぁ?」
  
  
   
  

葉月さん「…今、しあわせ?」
  
    
どうしてこの人は、私の事ばっかりなんだよ、
自分はどうなの?
   
  
    
     
私「葉月は人の事より、
自分のしあわせなんとかして」
  
   
葉月さん「僕は今しあわせだもん」
   
  
私「好きな人出来たの?」
   
  
葉月さん「居ないよ、
恋愛だけがしあわせの全てじゃないでしょ?」
   
  
    
    
…ウソだ。
   
  

だって葉月さんは私が中学生の時に
恋愛は楽しみのひとつでしょ?って私に言ったんだよ、
   
   
どうして私がしあわせになれて、葉月さんがしあわせになれないんだ、
   
   
  
私は結婚しているのだが、実は結婚指輪をしていない。
   
それは私がバイセクシャルだから。
男性を好きになる事はあるけれど、男性か女性かで気にして人を好きになる事を選んでないから。
   
私は異性愛者ではない。
    
  
釣りをしていた時に、
もしも私があの告白に返事をしていたら、
もしも葉月さんと私が一緒に住んだら、
葉月さんはしあわせになっただろうか。
   
  
答えはNOだ。
   
  
私は葉月さんをしあわせには一生出来ない。
   
   
私も葉月さんも同じ人間で、同じように人を好きになるし、
同じようにしあわせになっていいはずだ。
   
  
私が人を好きになる事と、
葉月さんが人を好きになる事になんの違いがあるというのか。
    
   
     
   
葉月さん「痺れてきたからそろそろどいて?」
  
  
私「うん、
もう帰るね」
  
  
葉月さん「そうだ、雪はラインやってるの?
交換しよ?」
  
  
私「やってる」
  
  
はい、とスマホでラインのQRコードを出した。
  
  
葉月さん「治ったらごはんでも食べに行こう」
   
  
私「うん」
  
  
葉月さん「雪が奢ってくれるんでしょう?」
  
  
私「えw?」
   
  
葉月さん「楽しみだなぁー」
  
  
私「最悪だー」
  
  
葉月さん「ふふっ、じゃあね」
  
  
私「うん、じゃあね」
   
  
私は病院を後にした。
  
  
   
外は雪が降っていた。
先日、桜が咲いたと言っていたのに。
季節外れの雪だ。
   
  
しあわせってなんなのだろうか。
   
  
そんな事を考えながら、
家に帰った。
  
  
      
  

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