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【生田絵梨花】 スーパービーバー提供曲の話。インタビュー生田絵梨花×柳沢亮太(SUPER BEAVER)

1.【筆者のコメント】
生田絵梨花×柳沢亮太(SUPER BEAVER)
人に優しくありたい──共通する心の核から生まれた楽曲「だからね」。

ロックど真ん中の楽曲「だからね」。
JAZZ調曲「Laundry」
J-POPの王道曲「No one compares」
POP色が強めの可愛い女の子曲「I’m gonna beat you!!」

生田絵梨花さん、幅広くチャレンジしたいのでしょうね。そんなところが生ちゃんらしい。

ロックやりたかったんだ。親戚の佐久間正英氏(※1)に近づきたいのかもしれない。ほっといても後を追うのだろうな。

やりたい事とファンの期待の間で精いっぱいのチャレンジをしている。
ファンの一人としては、まだまだチャレンジしてほしいし、多少の失敗も経験値が挙がって後の知見となる。

(※1)佐久間 正英
(さくま まさひで、1952年〈昭和27年〉2月29日 - 2014年〈平成26年〉1月16日)は、日本のミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー。既婚。

概要
1970年代にプログレッシヴ・ロック・バンドの四人囃子、ニュー・ウェイヴ・テクノポップ・バンドのプラスチックスのメンバーとして活動。プラスチックスのライブ後に屋根裏で平沢進からサウンド面のプロデュースを紹介され、ニュー・ウェイヴ・テクノ・ポップバンドP-MODELにて初のプロデュースを行う。
その後、音楽プロデューサーとしてBOØWY、THE STREET SLIDERS、THE BLUE HEARTS、GLAY、JUDY AND MARY、エレファントカシマシ、くるりなど、数々のアーティストのプロデュースを手掛ける。2010年までの31年間で約144組のアーティストをプロデュース。

人物
アイドルグループ・乃木坂46の元メンバーの生田絵梨花は、親戚(生田の父親といとこ)にあたる(のちに、乃木坂46のシングル『バレッタ』収録映像の中で共演した)。

死の2年半前、2011年3月11日、未曾有の大災害東日本大震災発生時に、初めてBOØWYに対する思いをブログ上に告白し、全盛期のプロデューサーであった自分自身が最も再結成を望んでいる胸の内を明かした。しかし、生前彼らが再結集することは叶わず、2014年に氷室京介がライブ活動の完全終了を宣言するなどしたこともあり、さらにその実現は困難となった。

代表的なプロデュースアーティスト
175R/宇崎竜童/HY/エレファントカシマシ/宮本浩次
/筋肉少女帯/大槻ケンヂ/くるり/GLAY/黒夢
/JUDY AND MARY/JUN SKY WALKER(S)/辻仁成/TOKIO
/Hysteric Blue/THE BLUE HEARTS/真島昌利
/BOØWY/氷室京介/松井常松/L'Arc〜en〜Ciel
/渡辺美里


2.生田絵梨花、ソロデビュー日に柳沢亮太(SUPER BEAVER)提供の「だからね」MVを公開

THE FIRST TIME  2024/4/10(水)

■「SUPER BEAVERさんが立っていたライブハウスの空間を全細胞で感じながら、この曲を歌えて、嬉しかった」(生田絵梨花)


吉祥寺 CLUB251



3.人に優しくありたい──共通する心の核から生まれた楽曲「だからね」

取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 梁瀬玉実 音楽ナタリー  2024年4月10日


2021年末に乃木坂46を卒業したのち、昨年ディズニー100周年記念作品「ウィッシュ」で主人公アーシャの日本版声優を務めるなど、活躍の場を広げている生田絵梨花。幼少期からピアノに触れ、乃木坂46時代から高い歌唱力にも定評のある彼女が、ソロアーティストとして初の音源作品となる1st EP「capriccioso」を4月10日にリリースした。

生田はコロナ禍のステイホーム期間に独学で作詞作曲を始め、2022年夏と冬にZepp会場でソロライブを開催。2023年秋には東京、福岡、大阪、愛知を舞台にソロツアーを行った。

EPにはライブで披露された自作曲「Laundry」「No one compares」「I'm gonna beat you!!」、そしてIVE「ELEVEN -Japanese ver.-」、藤井風「ガーデン」、森山直太朗「花」のカバーを収録。

さらに新曲として、SUPER BEAVERの楽曲の作詞作曲を手がける柳沢亮太(G)が書き下ろした新曲「だからね」が収められている。

音楽ナタリーでは生田と柳沢に、楽曲提供までの経緯や、制作の過程、お互いの作曲方法について話してもらった。2人の会話から、お互いどこか近しい思いを持っていることが明らかになっていく。

心のド真ん中にぶつかってきてくれる

──お二人はこれまでも音楽番組でたまに顔を合わせる機会があったかと思います。初めて会ったのは、2022年12月、生田さんがMCを務めている「Venue101」にSUPER BEAVERが初出演したときですよね?

柳沢亮太 そうだったと思います。

生田絵梨花 ちゃんと面識を持ったのは「Venue101」なんですけど、乃木坂46時代に「シブヤノオト」でSUPER BEAVERさんと同じ回に出たことがあって。スタジオで「愛しい人」を演奏されていて、そのパフォーマンスを一方的に観ていました。

柳沢 「愛しい人」ってことは今から3年前か。

生田 そうですね。私は「愛しい人」からSUPER BEAVERさんを好きになったので、当時めちゃくちゃうれしかった記憶があります。
「愛しい人」は「あのときキスしておけば」というドラマの主題歌だったんですよね。舞台で共演した麻生久美子さんが出演されているということで作品を観始めたら、曲が流れるシーンで感動して泣いちゃうくらい、ドラマの内容と主題歌にすごくハマって。

柳沢 実は「シブヤノオト」のときに、「SUPER BEAVERの曲が好き」とモニタを観ながら言ってくれていた方が乃木坂46さんの中に1人いたというのは、スタッフさんからちょろっと聞いていて。

生田 そうだったんですか!

柳沢 「知ってくれてるんだ」という話をスタッフさんとしていたのは覚えています。

左から生田絵梨花、柳沢亮太。

──2022年に「Venue101」にSUPER BEAVERが初めて出演したときに、生田さんは「配信ライブを観ました」とおっしゃっていましたよね。

生田 ドラマの主題歌をきっかけにSUPER BEAVERさんの楽曲を聴いていたんですけど、しばらくしてから、乃木坂46時代からずっとお世話になっている舞台監督さんに「SUPER BEAVERのライブ、めっちゃいいよ」とオススメしてもらったんです。「ライブがうまくできなくて、どうしたらいいですかね」と相談して、アドバイスをもらっていたときでした。

柳沢 うちのライブの舞台監督もやってくれている人なんだよね。

生田 そうです。それでライブを観たいと思ったんですけど、ちょうどコロナ禍の時期で、生では観れなくて。だから配信ライブのDVDを買って、映像を観たんです。

柳沢 わざわざ買ってくれたんだ。

生田 もう本当にすごかったんですよ。画面越しでもこんなに熱を届けてもらえることがあるんだって。1人で部屋で号泣しました(笑)。

柳沢 (笑)。舞台監督を通じて、配信ライブを観てくれているというのは知っていて。「ビーバーのライブの話をしたら、とても熱心な子ですぐに観て、すごく感動したということを言ってたよ」と聞いていました。しかもそのあと、去年の夏にやった富士急ライブにも来てくれて(参照:SUPER BEAVER、4万人と音楽を作り上げた富士急2DAYS「俺たちの歩みは間違ってなかった」)。

生田 あれは超楽しかったです!

柳沢 ありがたいですけど、山梨まで足を延ばしてくれるとは思ってなかったから(笑)。

生田 ずっと生のライブに行きたいなってタイミングをうかがっていたんですけど、なかなかスケジュールが合わなくて。「合う日がある!」と思ったのが、たまたま富士急ライブの日だったんです。あんなに心を動かされるライブはなかなかないんじゃないかなというくらい、最高でしたね。

──生田さんの中で、SUPER BEAVERの音楽のどういうところが心に刺さったんでしょうか。

生田 私は日常生活で、自分が思っていることにあまり正直になれなかったりする瞬間が多くて。斜めから物事を見ちゃったり、不安を感じていないように振る舞っているところがあるんです。でも、SUPER BEAVERさんの曲は、心のド真ん中にぶつかってきてくれる。自分は本当はこう思ってるのかな、こうしたいんだろうな、というのが見えてくるんですよね。

柳沢 うれしいです。今回の楽曲を制作させてもらうにあたって、直接お会いしてお話をいろいろと聞かせてもらう機会があったんですけど、その中でもそういったことを言ってくれてたよね。わざと自分の本音にたどり着かないようにしちゃってる部分があるという。そして、そこに対してそのままでいいと思っている自分もいるし、もうちょっと変われたら楽かもなと思っている自分もいて、そんな気持ちが心に同居している……そんなことをずっと真面目に考えているんだろうなという印象を受けました(笑)。

生田 あははは。

柳沢 おこがましい言い方ですけど、そういうところは俺もちょっとわかるなあというか、近しいものを感じました。自分もビーバーのライブや楽曲を通して、なんとか本音を表現しようとしているところはあって。アウトプットしようとしているものの質感が似ているのかもしれないです。

生田 光栄です……!

最近何かに怒ったことある?

──生田さんがSUPER BEAVERのファンであることは前提として、今回どういう思いがあって新曲を柳沢さんに書き下ろしてもらうことになったんでしょうか?

生田 私はソロになってから、ハマいく(かまいたち濱家隆一とのダンスボーカルユニット)以外だと、まだ人に楽曲を提供してもらったことがなくて。これからソロアーティストとしてずっと大事に歌えるような曲が欲しい、常に離さず持っていられるような曲がいいなと考えたときに、柳沢さんが書いてくれたらそんなに幸せなことはないなと思ってお願いしました。

柳沢 ありがたいお話です。ライブを観に来てくださっていて、そのうえでお話をいただいたので、なおさら応えたいなと感じました。純粋にご一緒できたら面白いなとも思いましたし。

生田 よかったあ。

──制作にあたって直接会ってお話ししたということですが、具体的にはどんなことを?

生田 「ライブで盛り上がるアッパー系がいいのか、しっとりとしたバラード系がいいのか」と聞いていただいて、そのときに私からは「『盛り上がっていこうぜ!』というよりは、言葉をしっかり握って、確かめていけるような曲がいいです」ということをお伝えした気がします。

柳沢 番組でお会いしたことはあっても、じっくりとお話をしたことはなかったので、僕からは主に「どんなことを考えているんだろう?」ということを探るための話をしましたね。最初に聞いたのは、「最近何かに怒ったことある?」だったと思います(笑)。

生田 すごく覚えてます(笑)。

柳沢 その質問の意図としては……「何が好きなの?」とか「何にハマってるんですか?」とか、いくらでもポジティブな質問はあるんですが、「何に腹が立ったか」がわかると、同時に何を大事にしているかがわかる。怒りの反対には、「本当はこうであってほしい」という理想があるんじゃないかなと思ったから、まずこの質問をしました。

生田 そのときは、大丈夫じゃない状態のときでも「大丈夫」と答える自分へのモヤモヤ感を伝えた記憶がありますね。

柳沢 よく人から言われる「いろいろとなんでもこなせる」というイメージと、「とはいえ、こっちは必死なんだけどな」という自分の思いの間のギャップにちょっと葛藤があるという話をしてくれて。「怒っているわけではないけど、そんなに簡単に『できるよ』って言ってくれるなよ」というような気持ちはどこかにあるんだろうなと感じました。それを基本的に見せないようにしてるのはすごいことだと思うし、そういった話はすごく印象的だったな。

生田 でも、こういうふうに人となりを掘り下げてもらう機会がこれまであまりなくて、心の開け方があまりわかってなかったんですよね。「どうぞ」という状況になったときに、なかなか自分の胸の内を解放できないというか。せっかく柳沢さんと対面で打ち合わせをさせてもらったのに、全然自分のことを伝えられなかった感覚があったんです。聞かれたことに対して、ちゃんと答えられた自信がなくて。それで楽曲を書いてもらうにあたって、もうちょっと「こういうやつなんだ」というのを知ってもらえたらいいなと思い、打ち合わせが終わってしばらくしてから、日頃書いているメモの一部をスタッフさんを通して柳沢さんにお渡ししたんです。私はモヤモヤしたときや不安を感じたときに、気持ちを整理して覚えておくためにメモを取る習慣があって。メモを曲に反映してほしいというわけではなく、単純にもうちょっと自分の情報を渡せたらよかったなという後悔があったので送らせてもらったんですけど、曲を受け取ったらメモの言葉をふんだんに取り入れてくださっていて。それが本当にうれしかったし、すごく真剣に言葉を読み解いてくださったんだなと優しさを感じました。

柳沢 メモを読ませてもらったときに、おこがましいけど、めちゃくちゃ近いことを考えてるなと思って。

生田 ホントですか!

柳沢 これはビーバーの楽曲を好きになってくれるのもわかるなと、すごく合点がいきました。メモの内容をどこまで言っていいのかはわからないんですけど、全体を通して一番感じたのは、自分の中だけで自問自答してるというよりは、どこかに“人”の存在があるなと。相手のことを許せる自分であれたらいいなとか、何かにイラッとすることがあっても「いいよいいよ」と言えたほうがいいなとか、「人に優しくありたい」という思いを感じました。俺も理想として、そういうことを掲げていたいんですよね。自分が人に優しくできているからそう言ってるわけではなく、まだなれていないからこそ目指したい。自分の中で大事にしたい部分というのが、すごく近いなと思いました。

生田 メモは誰にも見せるつもりはなかったので、思ったことをただ書いてたんですけど、1つだけ意識していたことがあって。それは文末を「~したい」で締めくくること。そうじゃないと、どんどんドツボにハマって何も見えなくなってしまうような気がしたんです。「~したい」という言葉を文末に使うことによって、「自分は今はこういう状態だけど、これからどうしたいのか」という方向がちょっと見える。そんな中で、「人に優しくありたい」という気持ちを汲み取っていただけたのはうれしいです。「だからね」というタイトルも、メモで意識していた部分とリンクすると思います。いろんな接続詞がある中で、「だからね」という言葉は、「~したい」という自分の考えにつながる感じがあるので。


玄関の鍵を閉めたあとの自分

柳沢 この曲は「玄関の鍵を閉める音で 誰も知らない私になる」というフレーズで始まるんだけど、これもメモから感じ取ったことなんですよね。1人で部屋の中にいるときの姿って、ほかの人にはわからないじゃない。それは家でもそうだし、例えばツアーで地方に行って、「おつかれ! 楽しかったねー!」と言ったあと、バタンってホテルのドアを閉めた瞬間に真顔になる自分がいて(笑)。

生田 わかります(笑)。

柳沢 そこからもう1回外に出るまでの間に、本当の意味で“自分しか知らない自分”が存在する。もしかしたらそういう時間に、ボーッとメモに書いてあるようなことを考えているんじゃないかなと。そういう思いから曲を書き始めました。

生田 デモを受け取って、すごく丁寧に向き合ってくださっているのが伝わってきて……この曲はこれからずっと大切にしていきたいなと心から思いました。特にサビの「私は私のできること あなたはあなたの得意なことを」というフレーズが印象的で。何かをやろうとしても、なかなか自分の理想に追いつかなくて「できない」と思っちゃったり、一歩踏み出すのが怖くなったりするけど、周りの人に頼ったり助けを求めたり、関わる人を意識することで、自分も自分にやれることを一生懸命やろうと、ちゃんと立っていられるような。人と人が助け合って生きていくために大切なことが書かれていると思います。


柳沢 直接話してみて思ったけど、いくちゃんの心の根底には、誰かを勇気付けたいというか、人それぞれの生活において希望になるものを発信したいという気持ちがあるよね。それが軸としてあるからこそ、「もっと応えたいな」「もっと喜ばせたいのに、なんでできなかったんだろう」といろんなことを考えたり悩んだりしているんじゃないかなと感じて。

生田 確かに。

柳沢 例えばソロアーティストとして音楽活動をしたら、いくちゃんのためにたくさんの人が動くわけで、いくちゃんにはそこに対する責任感がどうしても生じてくる。でも、そこから降りたいとは思ってないんだろうなというのは、話していて伝わってくるんですよね。しんどいと思うことはあるだろうけど、きっと逃げたいわけじゃない。「だからね」は、そういうことを書きたいなと思って作った曲です。


「大丈夫だからね」と言える自分でありたい

──生田さんはこの曲をレコーディングするにあたって、どういったことをイメージしましたか?

生田 “空間”をイメージすることはすごく意識しました。「玄関を閉めて1人になったな」とか。「ここは1人で歌ってるけど、この部分は聴いてくれてる人に語りかけているのかな」と想像したり。


──「語りかけている」部分だと、2番のサビ前に「『大丈夫だからね』」というカギカッコ付きのフレーズが出てきますね。

生田 歌詞の最初のほうの「だからね」は、自分に言い聞かせるというか、自分の心を探っていくようなイメージなんですけど、後半に出てくる「だからね」は、相手に向けて「『大丈夫だからね』」と励ますフレーズに変化していて、グッときます。

柳沢 昨日の夜にまた音源を聴いていたんですけど、1曲の中で歌がどんどん柔らかくなっていってるように感じて。オケとの兼ね合いもあると思うけど、最初のほうは緊張感があるというか、ちょっとシリアスな歌声になってる。だけど、歌詞と連動するように、後半にかけて歌が開いていってるように聞こえたんですよね。
今いくちゃんが言ってくれたように、最初のほうのフレーズは内に向いていて、鍵を締めた部屋の中にいるイメージで書きました。だけど2番のAメロの「希望みたいなものを届けたい 届けられる人でありたい」とかは、「どんなに自分の気持ちが沈んでいるときでも、誰かの前に立つんだったら1人くらい笑顔にしたい」という気持ちがどこかにあるんじゃないかなと思って書いたフレーズで。曲が進むにつれて、いくちゃんしか知らない部屋の中の自分と、俺たちが見ているいくちゃんがクロスしていく感じになったらいいなと考えていたんです。
だから、内に向いてるだけじゃなく、外に矢印を向けて曲が終わっているのは、いくちゃんの歌の技量と、自然と意識が“人”に向いているからなんじゃないかなと感じました。

生田 歌ってるときに考えてたことがすごく伝わってる! 怖いくらいです。

柳沢 これだけしゃべって「うーん」と言われても、それはそれで赤っ恥をかくだけだから困るけど(笑)。

生田 矢印は本当に意識した部分なんですよ。2番は“人”の存在をイメージして歌っていて。強がっている感じでもなく、「大丈夫だからね」と言える自分でありたいという意識で歌っていたので、それをキャッチしてもらえたのはありがたいです。



末永く続けたいな、という思いが根本にある

──EPには生田さんの自作曲「Laundry」「No one compares」「I’m gonna beat you!!」も収録されています。柳沢さんはすでに聴かれましたか?

柳沢 はい。最初の打ち合わせの前に、去年の国際フォーラムのライブ映像を観させてもらったんですよ(参照:生田絵梨花が自作のオリジナル曲を3曲披露 ユーミン、椎名林檎、IVE、ミセスらの名曲もカバー)。この3曲はライブでも披露されていたので、完成したEPの音源を聴く前から知っていました。面白いなと思ったのは、曲の主人公の人格みたいなものが曲によってけっこう違うんですよね。

生田 ホントですか(笑)。

柳沢 「Laundry」はジャジーで、ピアノが主体となっているところがいくちゃんっぽい。
映像の印象もあるかもしれないけど、楽しそうに弾いてる感じがあるよね。「I’m gonna beat you!!」は歌詞が少女的というか、やんちゃ感がある。
かと思ったら「No one compares」では、まだ知られていない、いくちゃんの心の奥底にある思いが歌われていて。

生田 統一できる技量がないというのもあるのかもしれないですけど(笑)。ただ、リリースを目的に作り始めたわけではなく、「ライブで聴いてもらえる曲を作りたい」という思いが最初にあったので、いろんな曲調の楽曲ができたらいいなとは思っていました。
あとは歌詞から作るのか、曲調から考えて言葉をはめていくのかというところでも、曲の雰囲気が変わってくるのかなって。




──基本的にはどういう作り方をしてるんですか?

生田 使いたい言葉、フレーズが思い浮かんだら、そこに歌のメロディとピアノ伴奏を付けていく感じですね。

柳沢 使いたいフレーズから入るその作り方、すごくいいと思う。俺もそんな感じでやってるな。例えば「だからね」だと、「大丈夫」という言葉をどこかに入れたいなと思って、そこから作っていったから。ビーバーにおいても、言いたいことがないと曲ができない。

生田 じゃあ伝えたいメッセージが最初にあって、そこから作っていくんですね。

柳沢 そう。「何を歌にしたいかな?」と考えてる時間がすごく多いかな。そんなに自分が思うことは日々コロコロ変わらないし。

生田 私はバーッと作れるときと、すっからかんのときがあるんですよ。ムラがあるというか。柳沢さんはこれだけ曲を作っていたら、「自分が伝えたいことって何?」という状態になったりしないんですか?

柳沢 そういうこともあるけど、最近はそこに対してポジティブに思えるようになってきた気がする。歳を重ねて、いいことも嫌なことも含めて経験が増えると、同じ物事に対する見え方が少しずつ変化していくものだなと感じるから。昔とはちょっと違った視点で物事を考えられたりする。とはいえ、曲を書いてるときは全然余裕ないけどね(笑)。何も思いつかなくて、すっからかんの状態もよくわかる。

生田 しかも柳沢さんの場合、タイアップの曲を書くことも多いですもんね。

柳沢 その作品とまったく関係ないことはもちろん歌えないからね。でも、そうやって夜中に考えてしんどくなってるときに、結局行き着くところは日々いくちゃんが考えているようなことにきっと近い。もし俺がスタッフさんもいない環境で1人で勝手に活動してるだけなら、いつだって辞められるし、もっと適当でいいのかもしれないけど、そんなことをしたら自分自身に納得がいかないし、何よりそばにいる人をがっかりさせたくない。そういう気持ちが年々強くなってきてる気がする。“人”がいなかったら、そんなに落ち込みもしないんじゃないかな。やっぱりそういうところに、いくちゃんと自分に近い感覚があるなと、曲を作りながら思った。


──生田さんは俳優、声優と幅広く活動されていますが、その中でソロでの音楽活動というのはどういう位置付けなんでしょうか?

生田 うーん……ピアノと歌を小さい頃からやってきて、それを末永く続けたいなという思いが根本にあって。自分で曲を作り始めるようになってからは、「自分はどんな人間なんだろう? 本当はどう感じているんだろう?」と模索してる感じがあります。かつ、自分のことだけを考えて勝手に作っているわけじゃなくて、何かしら誰かに引っかかったらいいなとか、届いたらいいなとイメージしながらやっていて。
今はそういう状態で、自分にとって音楽が何なのか、まだ今はわからないというか、探している途中ですね。

柳沢 「だからね」に関しては、ピアノを弾かずに歌うんだよね?

生田 そうです。唯一弾かない曲なんですよ。

柳沢 「ピアノを弾かない曲でもいいです」って最初に言っていたよね。だから、ライブでどういうパフォーマンスになるんだろうって気になる。

生田 私はまだピアノでしか曲が作れなくて、いつも結果的にピアノ弾き語りの曲になるので、せっかく提供してもらうならバンドアレンジの曲がいいなと思ってたんです。


──いつかステージでのお二人のコラボも観てみたいですね。

生田 えー! よろしいんですか?

柳沢 ギター弾くくらいしかできないけど(笑)。

生田 うわー、そんな機会があったら最高ですね!

プロフィール

生田絵梨花(イクタエリカ)

2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。中心メンバーとして活躍したのち、2021年末にグループを卒業する。卒業後は俳優として「ロミオ&ジュリエット」「レ・ミゼラブル」といったミュージカルをはじめ、テレビドラマや映画に出演。2023年12月より上映されたディズニー100周年記念作品「ウィッシュ」で主人公アーシャの日本版声優を務めた。4歳からピアノを習っており、音楽への探求心も高く、コロナ禍のステイホーム期間に独学で作詞作曲を始めた。2022年夏と冬にZepp会場でソロライブを開催。2023年秋にはソロツアー「Erika Ikuta Autumn Live Tour 2023 TOUR」を行った。2024年4月にソニー・ミュージックレーベルズより自作曲も収録した1st EP「capriccioso」をリリースする。

SUPER BEAVER(スーパービーバー)

渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“35才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成されたロックバンド。映画「東京リベンジャーズ」「水上のフライト」やドラマ「マルス-ゼロの革命-」「あのときキスしておけば」、アニメ「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!! TO THE TOP」などさまざまな作品にテーマソングを提供している。年間を通して精力的にライブ活動を行っており、2023年7月に山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレストでキャリア史上最大キャパシティの野外ワンマンライブ「都会のラクダSP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~」を開催。同年9月よりホールとアリーナを回るロングツアー「都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」を行い、2024年2月にアルバム「音楽」を発表した。6月より野外ツアー、10月から日本武道館2DAYSを含むホールツアーを行う。

終わり

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