草創期 10(小児がんと向き合う家族の記録)
一度目の抗がん剤治療が終わり
カテーテルの再手術も終えて
自己末梢血幹細胞を採るために個室へ移動
そうちゃんの末梢血幹細胞を
二日間かけて採取し
治療の最終段階でそうちゃんの身体に戻す
(自分の細胞を移植するので
合併症は少ないらしいが
新しい治療方法なので前例があまりない
治療後成長にどう影響するか
データ取りと経過観察が必要になる)
今回の治療でとても重要で
見ていて緊張の多い処置だった
それでも私は治療をやめて
在宅でなにかできないか模索していた
家族みんなで好きなところへ出向いて
身体に優しい美味しいものをたくさん食べて
身も心も解放されて満たされたら
それだけで残った僅かなガン細胞は消えるのでは
そう思い始めていた
それが私の活力になり新たな希望になった
そうちゃんの命を助けたい
病院のベッドの上で生かされるのではなく
本当に生きてほしい
生命を生きるとはなにかを考えた時
自分の寿命を全うすることだと思った
そうちゃんを助けたい気持ちを諦めたわけではない
だからこそ病院以外で助かる術を
また模索し始めた
末梢血幹細胞は無事に採取できた
二日間本当によくがんばってくれた
まだ固定された両手が痛々しい
看護士さんたちがクリスマスプレゼントを
持ってきてくれた
かわいいサンタさんに照れるそうちゃん
かわいいな、一緒に写真も撮ってもらった
特別に許可をもらった持ち込みのクッキーを
プレゼントと一緒に渡してもらって
食べてもらえた
とても嬉しそうに美味しい美味しいと
食べるそうちゃん
これなら私も安心して
本当の笑顔で食べさせてあげられる
そうちゃんのために作ってもらった
恐竜形のクッキー
名前もそうちゃんクッキー
願いを込めて添えられたお星さまも
付いていて
お砂糖控えめで
卵と乳製品を使っていないクッキー
お星さまのクッキーはにんじんも練り込まれてる
身体に優しいほっこりする美味しいおやつ
食べると元気になる大好きなおやつ
私にとってそうちゃんにこのクッキーを
食べてもらえたことが
最高のクリスマスプレゼントだった
願いは叶うよ、大丈夫
クリスマスの夜
そうちゃんを一人にしておけないので
夫が泊まりで付き添ってくれた
私は兄むくと古民家で過ごす
二人だけのクリスマス
昨年のクリスマスはどうしてたかな?
たしか家の改装中で
二階で寝泊まりしてたかな
二階とはいえ屋根裏部屋のような作りで
昔は蚕部屋として使われていたそうだ
一階の荷物のほとんどすべてを上に運び
たくさんの物に囲まれて寝た昨年の冬
ホコリよけに蚊帳を吊ったのは正解で
周りの荷物の存在を気にせず眠れて良かった
あれからもう一年、あっとゆうまだったな
今年もクリスマスらしいことは
なにもしてやれず
とてもさびしげなクリスマスになってしまったけど
なんだか心は温かいものもあって
それがなにかはよくわからなかった
たぶん小さなささやかな幸せを
たくさん感じていたのだと思う
そうちゃんクッキーをあげられたこと
看護士さんたちがサンタになって
楽しませてくれたこと
クリスマスの夜そうちゃんは
一人ではないこと
兄むくとの時間も大切にできていること
まだ希望はあるということ
そうちゃんのアンパンマンを唄う動画を見て
むくと二人くっついて眠る
こんな夜も悪くない
朝は早めに起きて
サンタさんからのプレゼント準備
本物のサンタはきっと
病院へ直接届けられないから
そうちゃんの分も一緒に置いておく設定
私にできる精一杯のクリスマスは
こども達の笑顔で締めくくられた
来年はみんなでお祝いしよう
ツリーも飾って部屋中飾り付けをして
美味しいケーキをみんなで食べよう
もちろんそうちゃんクッキーも添えて
2021.5.6
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