【ミルグラム考察】囚人番号005 シドウ(第二審時点)

⚪︎シドウの罪

 第二審のボイスドラマから、シドウのいう殺人とは、脳死患者から臓器を摘出する「臓器移植」による殺人だとわかっています。
 しかし、シドウはこれに対して「半分(正解)というところですかね」とも言っています。
 もう半分は、シドウの家族の臓器移植に関する罪であるようです。シドウが「利己的な理由でも殺している」と言った殺人も、このことに関係すると思われます。
 では、もう半分の罪というのは一体何なのでしょうか?
 そのことについて、これから考えていきたいと思います。

⚪︎シドウの家族はどうなったのか

 シドウの家族は、妻と子供2人でした。
 しかし、第二審MV『トリアージ』での家族が消える描写や、シドウが家族構成を聞かれた時に「妻と子供が2人」と書いた上から線で塗りつぶしていた様子を見るに、シドウの家族は現在は全員亡くなっているようです。
 シドウは、「車の運転はできるか?」という尋問に「できますよ。もう、あまりしたくはないですが」と答えています。
 そのため、シドウの家族は、車による交通事故に遭ったのではないかと予想されます。
 第二審の曲ではシドウの電話が留守番に繋がる描写があったため、家族が事故に遭った時、おそらくシドウは病院などに居て家族の事故を知らせる電話に出られなかったのだろうとも予想されます。

 さて、第一審のMV『スローダウン』では、シドウと同じほどの大きさの花の人間=シドウの妻のみ描写されており、子供らしきものは登場していませんでした。

シドウ『スローダウン』MVより

 また、第一審MVでシドウが破った紙には、「XX(女性の性染色体)」と「XY(男性の性染色体)」が書かれていました。
 そのうちXY(男性)には斜線が引かれていたので、被害者はおそらく女性だということが分かります。
 シドウの子供は2人ともズボンを履いており、おそらく男性なので違うと考えられます。

シドウ『スローダウン』MVより
シドウ『トリアージ』MVより

 これらのことから、シドウが自分で最も罪だと考えていることは、自分の妻のみに対して行ったことだと考えられます。
 そのため、シドウの子供のことは一度脇に置いておいて、ここからはシドウの妻に対してのみ言及していきます。

⚪︎誰から誰に臓器移植をしたのか

 シドウは、第一審の曲で、「誰かのためのあなたを願おう」「誰かの誰かに繋ぐあなたは生きている」と歌っていました。
 この「あなた」には親しみを感じる響きがあることから、「あなた」=「シドウの妻」だと考えられます。
 そのため臓器移植は、事故に遭って脳死状態となってしまった「シドウの妻」から、臓器提供を待つ「不特定多数の誰か」に対して行われたと考えられます。
 そして、脳死状態だったシドウの妻は、臓器移植をすることにより完全に死亡した、ということになります。

 なお、その際に、シドウ自身が臓器移植の手術をしていたわけではないことは、第一審MVから予想できます。
 シドウは、妻が死んだと思われる描写の際、手術室の外で待っていました。
 その時に、白衣から私服に服が変わる描写もあります。

シドウ『スローダウン』MVより

 手術室の外におり、私服で待っていたということは、妻が死んだ時、シドウは医者として臓器移植の手術をしたわけではなく、患者の家族として外で手術が終わるのを待っていた、ということが分かります。

⚪︎「破り捨てた約束のカード」とは?

 第二審のMV『トリアージ』では、「破り捨てた約束のカード」という単語が出てきます。この単語は何度か出てくることから、シドウの罪に関わってくる重要なヒントなのではないかと思います。
 臓器移植で出てくるカードといえば、「臓器提供意思表示カード」でしょう。
 意思表示カードとは、自分が死んだ際に、自分の臓器を提供するかしないかの意思を示すためのものです。
 運転免許証の裏などでも、この意思表示カードと同じ記載をすることができます。
 余談ですが、とあるアニメでは、主人公が死の間際に意思表示カード(運転免許証)の「臓器提供する」に丸をつけ、自分の命を別の誰かへと託すシーンがありました(だからシドウの曲にも「誰かの誰かに繋ぐあなたは生きている」という希望的な歌詞が出てくるのだと思います)。
 しかし、シドウの妻から誰かに臓器移植をしているという状況で、「臓器提供する」と書かれた妻の意思表示カードを破るのは不自然ですね。
 なぜ、シドウは意思表示カードを破ったのでしょうか?

⚪︎シドウの罪の「もう半分」とは

 「臓器提供する」と書かれていて不自然ならば、シドウの妻の意思表示カードに「臓器提供をしない」と書かれていたとしたらどうでしょうか?
 脳死患者の臓器提供は、本人が「臓器提供をしない」と意思表示している場合はできませんが、本人の意思が不明である場合は、家族の同意があれば臓器提供をすることができます。
 つまり、このカードを破きさえすれば、家族のシドウが同意し、臓器移植をすることができるのです。
 これであれば意味が通りますね。
 そのため、シドウの犯したもう半分の罪とは、「シドウの妻が『臓器提供をしない』と意思表示カードに記載していたにも関わらず、それを破って臓器提供を行い、妻を殺害した」ことではないかと予想します。

⚪︎シドウが極刑を求める理由

 第一審の曲でシドウは「倫理など妄想だ」と歌っています。そこから、シドウは倫理に違反する行為を行ったのではと考えられます。
 そして、臓器提供をしないと意思表示している患者から臓器を取り出すことは、医者として重大な倫理違反となります。
 過去の裁判では、患者の「延命装置を切って欲しい」という願いを聞き延命装置を切った医者は、懲役3年の有罪判決を受けています。
 患者の願いに反して臓器移植をした場合は、本人の意思に反して殺人をすることになるので、(実際どうかは分かりませんが)それ以上の刑罰になるのではないかなと思います。

 これは想像ですが、今までは、脳死患者からの臓器移植を良き行いだと思っていたシドウは、妻が脳死して初めて、脳死患者は生きていたことに気が付いたのだと思います。
 脳死患者は、臓器提供をしない限りは「死」と判定されません。
 臓器提供をしないと妻が意思表示している以上は、シドウが意思表示カードを破りさえしなければ妻は生きていました。
 しかし、シドウは自分が何もしなければ生きていたはずの妻を「臓器提供」という手段を使って殺す選択をしました。
 であれば、医者であるシドウでも「自分が殺した」と罪の意識を抱えてしまうのも頷けるかなと思います。
 そして、その罪の意識は他の臓器移植にも向き、今まで自分のしてきたことのすべてが殺人にしか見えなくなってしまったのだと思います。
 医者が臓器移植の倫理違反を行っていたとわかれば、医学会の信用を揺るがし、患者にも多大な不安を与えます。そのため、罪の意識に苦しんだとしても、自首はできなかったのではないかなと思います。
 ですので、ミルグラムで裁かれることを喜び、極刑を望んだのではないかと思います。

⚪︎第一審のMV「スローダウン」で子供の描写がなかった理由

 意思表示カードは、基本的に15歳以上の人が作ることができます。
 シドウの子供はまだ小さいため、このカードを作っていないと考えるのが自然かと思います(曲中で子供にカードを渡している描写はありましたが)。
 子供はカードを持っていない(臓器移植を拒否していない)ので、子供に対しては前述の葛藤はなく、第一審のMVに反映されなかったのではないか、と予想します。
 その他の理由としては、子供は身体が小さいので、即死だった、という可能性もありますね。

⚪︎臓器移植を行った理由として考えられること

 シドウが妻の臓器移植を行った動機についてですが……正直全然わかりません! お手上げです!
 ですが、いくつかの仮説をあげておきます。

1 妻を死なせるため

 脳死を死亡と判定するには、臓器提供をしなければなりません。
 シドウは第一審の曲で「もう始まる終わり 叶ってやっと救われるんだね」と歌っています。妻を生かし続けるのではなく、死なせることで救える、救われる、と思う可能性はあるかもしれません。
 シドウが、脳死した妻を見ているのが辛くなった、妻を解放したい、などの理由で妻を死なせたいと思い、臓器移植に同意し殺害したという説です。
 他の患者の臓器移植に対しても殺人の意識を感じていることや、シドウの性格を考えるとかなり近いかなと思います。
 しかし、脳死患者の90%は脳死してから1週間以内に心停止し、死亡します。1週間後に死んでしまうのであれば、わざわざ死なせるために臓器移植をする必要性があるかな、というところに疑問が残ります。
 ただ、長期的に脳死状態が続くこともあるらしいですし、妻を花の人間として描写する=植物人間に類似する状態、という解釈をすると、脳死が長く続いていた可能性も考えられますね。

2 子供に臓器移植を行うため

 シドウには、妻の他に子供が2人おり、妻と同じく事故に遭っています。
 子供が瀕死の重体であった場合、脳死の妻の臓器を移植することで子供を助けられると思い、臓器移植を行ったが失敗し、妻子を失った、という説です。
 シドウはボイスドラマで「エスくんみたいな子に赦さないと言われたい」と言っているため、子供に関係していることを考えれば、あり得そうですね。
 ただし、この説は現実的に難しいのではないかなと思います。
 まず、臓器の型(HLA型)が適合する可能性はありますが、子供はまだ小さいため、臓器の大きさが合わず手術しづらいような気がします。
 また、意思表示カードを破っているならば、親族に自分の臓器を提供したい(親族優先提供)という意思表示ができないため、臓器移植先に子供を指定することはできないのではないか、と疑問です。
 さらに、子供に対し臓器提供したのであれば、臓器提供をした相手を「誰か」と曖昧に表現しないと思います。
 以上のことから、この可能性は非常に低いと考えています。

3 臓器提供を待っている誰かを助けるため

 臓器移植を待っている患者は大勢います。
 シドウは医者として、ただ妻を死亡させるよりも、そのような人たちのために臓器提供をした方がいいと思い、妻の意思に反し臓器移植をしたという説です。
 こちらも、シドウの性格を考えるとかなり近いかなと思います。
 ただ、本人の意思に反して臓器移植を行うことは、当然倫理違反となります。医者としてあるまじき行為である以上、この場合は臓器移植をしない方が医者らしいと言えます。実行しない方が医者らしいのに、わざわざ倫理違反をして実行するか疑問です。
 なので、この説も可能性としてはあり得なくはないですが、違うと思います。
 ……ただ、もし臓器移植の過程でシドウが倫理違反をしていないのであれば、この理由で臓器移植をする可能性は高そうな気がします。

4 脳死患者の家族に臓器提供をするよう説得する医者という立場上、臓器移植をしないと角が立つため

 シドウは脳死患者の家族を説得し、臓器移植をさせるという立場にいる医者です。
 立場上、自分の家族が脳死状態になった時に、臓器移植をしないというのでは非常に角が立ちます。
 そのことについて患者などに糾弾され、立場上やらなければならないと思ったシドウは、妻の意思に反して臓器移植を行った、という説です。
 筋自体は通ります。
 が、これであれば妻の「臓器提供しない」という意思があると言えば済む話です。こちらもわざわざ倫理違反を犯してまで実行するか疑問に感じます。
 また、これは非常に打算的な選択で、シドウが妻を非常に愛していたことを考えると、このような理由ではしないのではないかと思います。

 以上、臓器移植を行った理由として考えられる仮説でした。
 一体どうして臓器移植を行ったのでしょうね。とても気になります。

【参考】
・「臓器移植法」(公社)日本臓器移植ネットワーク
https://www.jotnw.or.jp/explanation/01/04/

⚪︎追記:別に「臓器提供する」と書かれてても意味が通る気がしてきた

 ……これまで、「シドウは『臓器提供しない』と書かれた意思表示カードを破って臓器移植したのでは?」ということをつらつら書いてきましたが、「別に意思表示カードに『臓器提供する』と書かれていても意味が通るのでは?」と思い直したので追記します。
 例えば、ですけれども。
 以下のように仮定するならば、どうでしょう?

"事故直後にシドウが駆けつけた時には妻はすでに脳死状態になっていた。ショックを受けたシドウの目に、たまたま「臓器提供する」と書かれた妻の意思表示カード(運転免許証)が入ってきて、「臓器移植による妻の死」を想像し、思わずカードを破ってしまう。
 しかし、数日が経ち、仕事で脳死患者の家族に臓器移植の説得を続けるうちに臓器移植を待っている人がいることを改めて実感し、自分の妻をどうすればいいか悩む。
 そして、最終的に、妻の意思どおりに臓器移植をしようと思い直し、妻の臓器移植に同意し実行した。"

 ……意思表示カードを破った意味、通っている気がしますね。
 一度は思わずカードを破いてしまいましたが、シドウに「同意しない」という選択肢があったにも関わらず、結局は妻の意思を尊重したことになりますから、シドウは(妻を殺したくないと言う自分の意思に反してでも)良い行いをしたんだなぁ、と捉えることもできますね。
 前に書いたとおり、意思表示カードを破ったとしても、家族であるシドウが同意さえすれば臓器移植はできますので、制度的にも問題がないように思います。
 個人的には「脳死家族の臓器提供に同意しただけで医者が死刑を望むほど罪の意識を感じるかなぁ……?」という気もしますが、シドウは優しい性格なので「脳死した家族を臓器移植で本当に死なせてしまった」ことでもものすごく罪の意識を感じそうな気もします(実際にシドウの同意があるだけで家族が死ぬわけですからね)。
 それならば、心情的にも意味が通りそうです。

 ……というか、もしこれが本当ならシドウにはまったく罪がなくないですか?
 100%「赦す」でも問題ないくらい真っ白じゃないですか!?
 シドウは何一つ悪いことしてないのに「罪……」って思ってるってことですか!!? 
 優しすぎか!!!???
 真っ白すぎて「さすがにそれはないのでは……?」って気持ちになります。
 でも、こっちの方が文脈が自然ですし、前につらつら書いてきた内容よりはまだこっちの方があり得るような気がしてきました。
 せっかくお読みいただいたのに、最後に今までの話を全部ひっくり返すようなことを言って申し訳ありません。
 まぁ、本当のところは第三審になってみないとわからないので、楽しみに待とうと思います。

⚪︎まとめ

 長々と書きましたが、この文章は真相が判明した後に見返して「全然違うじゃん!」と笑って楽しむために書いています。そのため、ここに書かれていることはすべて話半分でお願いします。
 さて、第二審のシドウの判決は「赦す」でしたね。彼を赦さないとマヒルの命が危ないのもあり、80%以上の割合で「赦す」を獲得していました。
 第二審の曲も明るい展開でしたし一安心……と言いたいところですが、なんとアマネがボイスドラマで「シドウが治療行為を続けるようなら手を下す」旨の発言をしています。
 第二審ですでに赦され、マヒル等の治療行為を行うだろうシドウは、第三審で一体どうなってしまうのでしょうか? 注目したいところです。

⚪︎余談:シドウは左利き

 MVを見るに、シドウは左利きだと思われます。シドウが左利きなのは、なんだかとても「良さ」がありますね……!

シドウ『スローダウン』『トリアージ』MVより

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