【ミルグラム考察】囚人番号004 ムウ(第二審時点)

⚪︎ムウの罪

 ムウの罪は、いじめの関係で、同級生の女の子を刺殺したことです。
 ムウの罪に対し、エスはボイスドラマで「お前たちが言うところの、刑法199条、殺人罪というものに当てはまるだろう」と言っています。分かりやすく有罪です。
 そんなムウの犯行動機となった「いじめ」とは、一体どのようなものだったのでしょうか?
 また、ムウと被害者の関係は一体どんなものだったのでしょうか?
 そのことについて、これから考えていきたいと思います。

⚪︎いじめの時系列

 第二審のMV『悪くないもん』では、冒頭で(被害者が)砂時計をひっくり返している描写があります。

ムウ『悪くないもん』MVより

「時計」をひっくり返しているということは、「時間の流れ」が逆だと考えられるため、実際の出来事は、

第二審の曲『悪くないもん』

第一審の曲『アフターペイン』

 の順番で起こったと考えられます。
 また、ムウは、ボイスドラマで「被害者を殺害した直後に意識が曖昧になり、ミルグラムに連れてこられた」といった内容のことを話しています。
 このことに関してムウが嘘をついている様子はないため、ムウは殺害直後に、ここミルグラムに連れてこられており、ムウの事件の顛末は被害者を刺殺した日までで終わっていると思われます。
 つまり、ムウのいじめ関係の時系列は、

①ムウとその友達がモブをいじめている
②その様子を被害者が見る
③ムウとその友達が被害者に目をつけ、被害者をいじめ始める
④いじめられた被害者が、何らかの反撃をする
⑤立場が逆転し、ムウが、元々ムウの友達だった人たちにいじめられる
⑥そのいじめに耐えかねて、ムウが被害者に縋り付くが拒否される
⑦ムウが被害者を殺害する
⑧殺害直後にムウがミルグラムに連れてこられる

 だと考えるのが自然だと思われます。

⚪︎いじめる側としてのムウ

 ムウは、第二審の曲で何度も「私はいつも可哀想だから」と歌っています。
 いじめる側でもあったのに、自分が「いつも」「可哀想」であることを強調していることを考えると、ムウはいつも「ほんのちょっと鼻についた」ことを、「自分はこんなに酷いことをされた」と周りに言いふらし、可哀想な自分をアピールしていたのかなと思います。
 そして、ムウのその言葉を聞いて、周りは「ムウにそんな酷いことをするなんて」とその人を糾弾し、ムウの鼻についた相手をいじめ始めたのかな、とも思います。

 これは、おそらく英語訳の方がイメージが伝わりやすいかなと思います。
 英語訳では、「私はいつも可哀想だから」の部分は、
「I am always the drama queen」
(訳:私はいつもドラマクイーンだ)
 と訳されています。
 ドラマクイーンとは、芝居がかった言動をする大袈裟な人を意味する批判的な言葉です。「悲劇のヒロインぶる人」くらいのニュアンスが近いそうです。
 もし、この歌詞がいじめた様子にも繋がるものであれば、ムウは、自分がされたことに対して過剰に騒ぎ立て、鼻についた相手をいじめる流れにしていたのだと考えられます。
 そして、先に傷つけられた(と大袈裟に言う)ムウは、ムウを傷つけた(とムウ自身が思っている)相手を人にいじめてもらうことで、「これで『おあいこ』だね」と微笑んでいた、ということになりますね。

 また、同じ曲でムウは「悪くないもん」とも繰り返し歌っています。曲名にもなっているほどです。
 そのため、ムウは本質的には自分の行為を「悪くない」と思っていると考えられます。
 ムウには、人をいじめているという意識さえなかったようです。
 ムウ自身は、相手を叩いたりはしていません。
 おそらく、その人を「いじめて」とお願いしたわけでもありません。
 ただ、「私は可哀想なの」と言って、その後の顛末を見ていただけ。ムウの言葉を聞いて、友達がしたいと思ったことをさせてあげていただけ。
 自分はいじめをしていない、だから「悪くない」。
 そう考えているのかな、と思います。
 そんなムウの代わりに、ムウの周囲が、ムウの意思を汲んで行動してくれます。
 自分の感情で周りをコントロールする……生まれながらの女王、とは上手い表現だなと思います。

⚪︎具体的ないじめ方・いじめられ方

 ここからは、実際にどのようないじめがあったのかを見ていきましょう。
 まずは、ムウと被害者に共通するシーンの描写を見てみましょう。

ムウ『アフターペイン』MVより
ムウ『悪くないもん』MVより

 黒板に悪口を書く、机に悪質ないたずらをする、水をかける、物をひっくり返す……。
 ムウと被害者がともに同じいじめ方をされていることから、ムウのいじめ方も、いじめられ方も、どちらも同じ手法で行われていると思われます。

 次に、別のシーンも見てみましょう。

ムウ『アフターペイン』MVより

 この時のムウは、体操服を切るなどのいじめもされている(?)ようですね。先ほどのシーンでもムウの体操服は切られていたように見えます。
 全体的に、現実的で陰湿ないじめ方、といったところでしょうか。
 このシーンでは、ムウの周りにはカッターや画鋲が転がっています。
 わざわざこれらを提示しているのを見ると、「もしかしてこれもいじめに使用された……?」とも疑われますが、ムウはボイスドラマで、自分は「人を叩いたこともないし、水をかけたこともない」と発言していました。
 裏を返すと、「それ以上の酷いいじめはしていないし、されてもいない」と考えられるため、少なくとも物理的には、叩く以上の痛いいじめ……例えばカッターの刃や画鋲の針を使ったいじめなどはされていないと考えることもできるかな、と思います(画鋲は思いっきり靴の中に入っていますが)。

 最後に、トイレのシーンも見てみましょう。

ムウ『アフターペイン』MVより

 携帯の画面が割られていますね。器物破損です。
 トイレットペーパーに黄色い液体が付着している(?)ことから、このシーンは、トイレに行こうことしたムウを引き止めて、その場で漏らさせたということかな? と思います。
 その上で、水をかけられたりモップやトイレットペーパーがあったりするのは、「汚いから掃除しろ」とでもいったところでしょうか?
 ムウが嫌なことに「恥ずかしいこと」を挙げていた理由は、これがあったからかもなぁ、と思います。
 ちなみに、このシーンでは、ムウがいじめられているトイレの個室の中に被害者が居ました。

ムウ『アフターペイン』MVより

 ……これは個人的な感想なんですが、他に誰がいるか分からない空間で堂々といじめるのは中々すごいですね。人にバレるとか、チクられるとか、いじめによって相手のその後も、自分のその後も大きく左右される可能性がある、とかは一切考えていなさそうです。
 もしかして、教師よりも生徒の方が地位が上(良いところのお嬢様)なので、教師は生徒のいじめに口出しできない、などの事情があるのでしょうか?
 しかし、自分の方が優位だという驕りがあったとしても、1つ変わればムウのように転落する場合などもありますし……一時の快楽に身を任せず、自分の行動によって何が起こり得るのかを考えてから行動するのが賢明だなと思います。

⚪︎ムウと被害者の関係

 ムウと被害者の関係は「いじめ・いじめられ」の関係です。
 ムウは被害者の名前を聞かれた時に「覚えてるよ? レイでしょ?」と答えています。
 被害者の名前は、レイと言うようです。
 ムウの通っている高校は、お嬢様学校かつ女子校ですので、もしかしたら中高一貫の学校かもしれません。
 もし、中高一貫の女子校であれば、被害者は高校受験でムウの学校に入学した人かもしれませんね。

 ところで、ムウは「今、誰に会いたい?」という質問で、「友達にも会いたい」と言っています。
 その一方で、「友達選びはもうちょっと考えた方がよかったかなぁ」とも言っています。
 同じ友達のことを指しているとすると矛盾するため、この2つの言葉に出てくる「友達」は、それぞれ別の友達のことを指すと考えられます。
「友達選びは考えた方がよかった」という言葉が自分をいじめていた友達を指すのであれば、「会いたい友達」と言える人は、作中に出てこない友達のことを指していることになります。
 しかし、友達にいじめられた直後だというのに、作中に出てきておらず、重要でもなさそうな別の友達の話をあえて入れるのはちょっと変かなとも思います。

 なので、少しひねくれた見方をしてみて……。
 もし、ムウが第一審で「赦す」だったことでいじめられた痛みを(都合良く)忘れ、被害者を殺したことで自分をいじめていた友達とまた仲良くできると(都合良く)考え直したのであれば、この「会いたい友達」というのは、ムウをいじめていた友達のことかも? と思います(そんな思考回路する?とは思いますが)。
 この場合、「友達選びは考えた方がよかった」と言えそうな人物として残っているのは、被害者です。
 ムウは、「幼い頃はどんな子供だった?」という質問に「友達もたくさんいたし、習い事もたくさんやってたよ」と言っていました。
 そのため、もしかしたら、ムウと被害者は、そのような幼い頃の友達だったという可能性も考えられるのかな? とも思いました。
 こじつけ感がすごいので、九分九厘間違っている気しかしませんが……。

 ただ、ムウの友達の定義は「ムウの言うことをちゃんと聞いてくれる人」です。
 被害者はムウの言うことを聞かないので、仮に昔、ムウと被害者との間に何らかの関係があったのだとしても、少なくとも高校生の今は、被害者はムウの思う友達の定義からは外れているものと思われます。

⚪︎ムウを「いじめられる側」にした方法として考えられること

 第一審の曲で、ムウは「特別意味はないの ハズレを引いたの」と歌っています。
 ムウは、自分がいじめられている意味には心当たりがないようです。強いて言うなら、「ねたみ」や「ひがみ」だとムウ自身は捉えています。
 第二審MVの最後では、ムウにいじめられた被害者が何かの決意をするかのような場面で終わっていました。
 そのため、ムウの立場をいじめられる側に逆転させたキッカケは、被害者が作ったものと思われます。
 ですが、ムウを実際にいじめていたのは、被害者ではなくムウの友達です。
 そのため、被害者はあくまでムウの立場を逆転させるキッカケを作っただけで、ムウを直接いじめてはいないと思われます。

 第一審のMVに出てきた黒板には、「傲慢女」「バカにしてるよね?」などと書かれていました。

ムウ『アフターペイン』MVより

 そのため、ムウがいじめられるようになった主な理由は、ムウが「傲慢」で、自分たちを「バカにしてる」と思われたから、ではないかと思います。
 そうならば、ムウの友達に「ムウが自分たちをバカにしていた」と思われせられれば、ムウを「いじめられる側」に逆転させられると考えられます。
 そのため、被害者は、ムウの友達などにそう思われそうな内容を突きつけたのかな、と思います。

 ただ、その方法が具体的に何なのかは、現状よく分かりません。
 いじめられた原因が「ねたみ」や「ひがみ」だと思っているのなら、「芸能界にスカウトされた」と傲慢そうなイメージで言いふらしたからかなぁ?と一瞬思いましたが、いじめられる根拠としては弱すぎる気がします。
「我慢ならもう慣れっこ」と歌っていることから、例えば、過去にいじめられていて、それをバラしたという可能性もあり得なくはないですが……ムウは過去の自分について「普通だと思うなぁ」と答えているため、過去にいじめられていた可能性は低いかなぁと思います。
 シンプルに「バカにしてるよね?」と言われる事実を暴露した、というのが1番手っ取り早いとは思うのですが……。
 それには、ムウが友達をバカにしていた証拠(例:皆の面前で「バカにしてる」と思われそうな失言をさせる、皆をバカにしていたSNSの履歴を見せるなど)が必要になってきます。
 ムウが失言をしたなら、失言するまでにどんな状況だったかを別途考えなくてはいけませんし、SNSの履歴を見せたのなら、SNSで愚痴をこぼされるほどムウと仲良くないといけませんし……。

 うーん……ここについては、第二審が終わるまでに何か思いついたら書き直すかもしれないです。書き直されてなかったら、結局分からなかったんだなと思っておいてください。
 実際は、一体どのようなことがあったのでしょうね? 気になります。

⚪︎ムウへの疑問

 ムウは、「犯行直後にミルグラムに連れてこられた」ということを言っているわりには、第一審のMV冒頭で黒板に「犯行後の悪口」が書かれていたり、犯行後にクラスメイトに囲まれて陰口を言われている描写がありました。

ムウ『アフターペイン』MVより

 黒板に書かれた「親の七光りちゃん」という文字については、ムウが女王気取りでいられた理由が、「金持ち」「美人」という生得的な理由からだと思われているから、と仮定できたとしても、「犯罪者」などの言葉についてはよく分かりません。
 過去にも、「少年院に行ってほしい」と思われるような重大な犯罪をしていたと考えれば黒板の意味もわかりますが、ムウは尋問で「幼い頃はどんな子供だった?」という質問に対して「普通だと思うなぁ」と答えているため、過去に犯罪をしていた可能性はあまりないかな、と思います。

 まぁ、ムウは被害者意識が強いですし、この黒板の文字や陰口は、「ムウが被害者を刺殺した後に、皆からこう言われるだろうとムウが思っている妄想」と捉えれば矛盾は生じません。その方が自然です。
 しかし、一応、これらが真実だった場合を検討しておいてもいいのかな、とも思います。
 また、第一審の「"あなた"が好きよ」という歌詞も、看守へのアピールというだけなのか、ムウの罪にも関わってくる言葉なのか判別しづらいですし、個人的には、ムウは、第三審でもう1段階あるのかもしれないな、とも思います。
 すでにヒントは出されているのでしょうが……私には分からないので、第三審を楽しみに待とうと思います。

⚪︎まとめ

 ムウは、第二審の曲で「痛みの"あと"は探さないでね」と歌っています。
「痛みの"あと"」は英語に訳すと『アフターペイン』。第一審の曲名になります。
 そのため、『アフターペイン』のMV自体か、ムウのいじめの後に、探してほしくない謎がまだ隠されているのかな、という気もしてきます。
 この考察は、基本的に第二審の曲『悪くないもん』のイメージを元にして書いているのですが、第一審の曲『アフターペイン』から受けるイメージは、第二審の曲とは大分違います。
 もし『アフターペイン』の方が重要であった場合は、もしかしたらムウの真相は、これらの考察とはもっと別のところにあるのかもしれませんね。

 さて、第二審のムウの判決は、ムウの余裕とは裏腹に「赦さない」で決定しました。
 痛いのが嫌いなムウが、第三審で無事で居られるのか、あるいは無事なまま別のことが起こるのか……注目したいところです。

⚪︎余談:SNSの既読数

 第一審のMVで、ムウが見ていたSNS(LINE)には、既読が4つあります。

ムウ『アフターペイン』MVより

 グループの参加人数が4人であれば、既読の数は自分を省く3つのはずです。これでは既読が1つ多いですね。
 正直「作画ミスかな?」とは思うのですが……もし、これが作画ミスでないのならば、この会話をした時点では、このグループには5人いたと考えられます。そして、この会話の後にムウ以外の誰か1人がグループから退会させられた、と考えられます。
 そうなると、ムウはグループの仲間内で気に入らなくなった相手をいじめては、排除していたということになりそうです。

 ……ですが、もしムウが、第二審のMVに登場していた(ハチの)女の子を全員いじめていたのであれば、その順番は、第二審のサムネでムウの向こうにいた茶髪の女の子→その他の女の子の順になるはずです。
 この茶髪の女の子は、ハチの描写の際に、ムウに蜜を持ってこなかったために、最初に倒された(=最初にいじめの標的にされた)と考えられるためです。

ムウ『悪くないもん』MVより

 もし、ここにいた全員がムウのグループに元々所属していて、いじめられてグループから1人ずつ抜けていったと考えるならば、最初に抜けたのは茶髪の女の子で、ムウを含んだ残りの8人については、その段階ではグループに残っていたものと思われます。
 しかし、実際は、この茶髪の女の子をいじめていた時点で、ムウのグループは4人組のように見えます。

ムウ『悪くないもん』MVより

 最初にいじめの標的にされたはずなのに、いじめていた人が8人ではなく4人であったのには矛盾を感じます。
 そのため、こちらの描写を見るなら、ムウとその友達は、自分のグループ内の友達をいじめて排除していたわけではなく、グループ外の「数いるクラスメイトの中」からいじめる相手を選んでいただけ、と受け取れます。
 なので、既読数については、やはり「作画ミスかな?」と思うのですが……。
 もし作画ミスでなかった場合は、ちょっと……中々の思考回路でいじめる相手を選んでいたのかもしれませんね。

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