【ミルグラム考察】囚人番号008 アマネ(第二審時点)

⚪︎アマネの罪

 アマネの罪は、アマネの信じる宗教の教義に違反した人物を殺害したことです。第二審のMV『粛正マーチ』から、そのように読み取ることができます。
 アマネは明確に殺人を犯していますが、子供であるために法律に守られました。そのため、このミルグラムに呼び出されたようです。
 アマネは、誰を、どのような教義違反により殺したのでしょうか?
 また、殺害時に使った凶器は一体何だったのでしょうか?
 今からそれを考えていきたいと思います。

⚪︎被害者は誰か

 尋問の回答から、被害者は、アマネが愛していた相手だとわかっています。
 同じく尋問で、家族構成は「父と母と私でした」と過去形で回答しています。「今会いたい人は?」に対して「父親」で「褒めて欲しい」と回答しているため、父親を殺したわけではなさそうです。
 被害者はアマネが愛していた相手で、過去形で家族構成を語り、かつ死んだのが父親でない以上、アマネが殺した人物はアマネの母親である、と考えられます。
 アマネが自宅の風呂場で罰を受けていたことや、スタンガンを握る手が女性らしきものであったこと、それら体罰への報復行為も兼ねて行われた殺人であることを考えると、母親は確かに適当な相手かと思われます。

⚪︎被害者は何の教義に違反したか

 まず、教義は以下の4つです。

・人は運命を生きよ
・人は卑しきを捨てよ
・信じたものに納めよ
・道を外れずに果てよ

 この教義には、「治療行為をしてはならない」「神を侮辱してはならない」などの意味も含まれるようです。反対に、殺人は教義上許されるようです。

 そして、アマネの第二審MVには、「輸血拒否」する患者に対して病院が出している文書が出てきます。下記画像左下の破れた紙です。
 画像では文字が読みづらいため、文字起こししたものを下に記します。ご参照ください。

アマネ『粛清マーチ』MVより

【文字起こし(左側欠け有)】

拒否される方へ

し以下のごとく対応します。

を拒否される患者さんに、
いますが、
師が判断した場合には、
実施いたします。
場合でも輸血を実施いたします。

さま・保護者さまに対しましても、
いただけるように努力いたしますが、
は、
るようにすすめたいと考えております。

 左部分が欠けていますが、おおむね「医師が判断した場合には、輸血拒否している場合でも輸血を実施する」ということが書かれているようです。
 実際の病院のホームページにこの文書とほぼ同じ文章があったので、それを見ながらこの文書の全文も一応予想してみました。よろしければこちらもご参照ください。

【全文予想】

   宗教上の理由で輸血拒否される方へ

 当院では、宗教上の理由による輸血拒否に対し以下のごとく対応します。

 当院では、宗教上の理由で輸血を拒否される患者さんに、可能な限り無輸血治療の努力を行いますが、生命維持のために輸血が必要と医師が判断した場合には、「相対的無輸血」の方針のもと、輸血を実施いたします。
 その際、輸血同意書が得られない場合でも輸血を実施いたします。

 自己決定が可能な患者さま、ご家族さま・保護者さまに対しましても、当院の方針(相対的無輸血)を十分に説明し理解をいただけるように努力いたしますが、どうしても同意が得られず、治療(手術も含む)に時間的余裕がある場合は、速やかに他院に紹介し転院ができるようにすすめたいと考えております。

【用語解説】
・相対的無輸血:患者の意志を尊重し、可能な限り輸血せずに治療するよう努力するが、輸血以外に救命手段がない場合には輸血を行うという方針
・輸血同意書:輸血を受けることに同意する書類

参考:長崎医療センター・市立吹田市民病院HP

 さて、アマネの宗教では、治療行為が禁止されていましたね。治療という繋がりがあるものをわざわざ提示しているということは、この文書はアマネの宗教や罪に関わるヒントであると考えてもいいと思います。
 そのため、被害者が違反した教義は「治療行為をしてはならない」で、「被害者は教義に違反して治療(輸血)した」と予想します。
 殺害動機が「治療行為」をしたからなら、アマネが医者であるシドウを敵対視する理由も一層自然に感じます。

 なお、信仰上の輸血拒否は実際にもあります。1992年の「エホ⚪︎の輸血拒否事件」です(検索に引っかからないよう伏せ字にしてあります)。
 その輸血拒否事件の後、宗教的理由などで医療行為を拒否できる自由が確立されました。
 そのため、現在では患者が輸血を拒否したいという意思を示した場合、可能な範囲で尊重されます(緊急時や未成年などの例外は除く)。

⚪︎治療(輸血)されたのは誰か

 アマネが殺害した相手(被害者)はアマネの母親であるため、輸血に関与したのはアマネの母親であると考えていいと思います。
 しかし、輸血された相手については、次の三人が可能性として考えられます。
 アマネの母親、アマネの父親、そしてアマネです。

・アマネの母親の場合

 アマネの母親が輸血に同意して自分自身に輸血をした場合は、アマネの母親は自分の身可愛さに教義に違反したということになります。
 もしくは、事故などに遭い、医者の判断で緊急に輸血をされた可能性もありますね。その場合は教義に違反するつもりはなかったが、輸血後であったためどうしようもなかったと思われます。

・アマネの父親の場合

 アマネの父親に輸血をした場合は、父親に意識があれば信心深い父親は輸血を拒否すると考えられます。
 平常であれば輸血拒否をする状態で、アマネの母親が父親に輸血させたという状況を成立させるためには、父親は事故などに遭い意識がない状態で、母親は病院から輸血について緊急に同意を求められ、同意したと考えるのが妥当かと思います。
 この場合は、アマネの母親は教義を違反しただけではなく、宗教を信仰している父親の意思にも反して輸血をしたということになりますね。

・アマネの場合

 アマネに輸血をした場合には、父親と同じく緊急であったなどの他に、もう二つ可能性が考えられます。
 一つは、アマネが輸血拒否しているにも関わらず母親が輸血に同意した、という可能性です。
 アマネは子どもであるため、(アマネの意思も尊重されますが)アマネの意思より親の意思の方が尊重されます。そのため、アマネが拒否していても母親が輸血を決めることができます。
 この場合は、母親はアマネを救うために信仰を曲げたのにアマネに殺された、という悲劇になってしまいますね。

 もう一つは、アマネも母親も輸血に同意しなかったが、医師の判断で輸血が行われた、という可能性です。
 未成年(特に15歳以下)の場合は、緊急時でなく、さらに本人や親が輸血を拒否していても、医師が判断した場合には輸血が行われることがあります。
 その場合は、輸血拒否を児童虐待として病院側が通報し、親権(=親である権利)の一時的剥奪などを求めた上、新たな親権の代理者の同意を得て輸血する、というような流れになるようです。
 この場合は、母親は輸血拒否しようとすれば児童虐待となるためどうにもできなかったと考えられます。
 母親は教義違反をしたくてしたわけではないので、それでアマネに殺されるのはやはり悲劇になってしまいますね。
 ……ただ、MVに登場した病院からの文書には、児童虐待や通報などという言葉は出てきていないので、この線は薄い気がします。あったとしても、緊急の手術で医師の判断で輸血された、くらいかなと思います。

・結局、誰が治療(輸血)されたのか

 可能性としては、輸血されたのは三人のうち誰でもあり得そうですね。
 他に考察材料になりそうなところは、曲の歌詞や、アマネの母親の信仰度、先ほどの輸血拒否についての病院の文書などでしょうか?

 アマネの第二審MV後半に出てくる歌詞、「どうしようもない屑からの『どうしようもない』そんなこと絶対赦されない」は、広く解釈すれば、教義違反について「どうしようもない」と言った被害者に対して「赦されない」とアマネが思った、という意味にも取れるかと思います。
 そこから、輸血をしたことは「どうしようもなかった」と考えることもできます。
 ……どのパターンの輸血でも割と「どうしようもない」感じでしたね。ここから考えるのは難しそうです。

 アマネの母親はスタンガンや風呂場でアマネに宗教的体罰を行うくらい信心深い人間でした。そのため、簡単には信仰を曲げないと考えることもできます。
 それならば、アマネの母親が信仰を曲げずとも医者の判断で行われてしまうような輸血だったのかもしれません。
 ……まぁ、こちらもアマネが尋問で「母は信仰を最後まで貫くべきだった」と答えているのでかなり微妙です。
 むしろ、アマネの考えを信用するなら、アマネの母親は信仰を曲げたと考えるのが自然でしょう。信仰を曲げたのなら、母親自身に輸血したという線が強くなります。

 輸血拒否についての文書がすでに貼られているということは、すでに病院に行ったということなので、輸血の判断はじっくり考えて決定できるものだった、という可能性がありますね。
 ……まぁ、単にこの文書が「この病院はこういうスタンスを取っている」と信者の間で共有するためにコピーし配布されている文書であれば、事故などの緊急の輸血であっても矛盾しませんが。むしろこっちの方がそれっぽいですね。
 というか、アマネの宗教は輸血だけじゃなく治療全般がNGっぽいので、普通に考えると病院は何があっても行かないですよね? なんで治療拒否ではなく治療の一環である輸血拒否だけの文書があるんでしょう……?
 アマネの宗教に対してだけでなく、先ほど出てきた実在の宗教などにもまとめて病院が出している文書だから、とかでしょうか?
 それならば、自分が病院に行きたくなくても連れて行かれてしまう、たとえば事故で意識不明になり救急車で運ばれてしまうことなどを想定して信者の間で情報共有されていたのかもしれませんね。
 この場合は、輸血は緊急であった線の方が濃くなりそうです。

 結局のところ、誰に輸血したのかを判断するのは現段階では難しい気がします。
 ただ、下の画像で風呂場から水滴が続いていることから、アマネはまずは風呂場で水責めをしてから(風呂場から逃げた被害者を?)部屋で殺害したと思われます。
 自分がされていたことと同じやり方で殺害したと考えると、やはりストレートに考えて、輸血されたのも母親かなとは思います。

アマネ『粛正マーチ』MVより


【参考】
 実際の病院では輸血拒否についてどう対応するか、についての一例です。
 検索よけのため一部伏せ字で紹介します。
・大阪赤十字病院「『エホ⚪︎の証人』の信者である患者等、輸血拒否患者への対応の基本方針」
https://www.osaka-med.jrc.or.jp/information/jehovah.html

⚪︎アマネの凶器は何か

 アマネの殺害方法は、エスの曲「アンダーカバー」の描写(下記画像)から「撲殺」であると思われます。
 では、この撲殺に使った道具は一体何なのでしょうか?

エス『アンダーカバー』MVより

 映像から考えると、凶器は棒状のもののようです。
 アマネは第一審・第二審ともにMVでステッキを持っているので、もしかしたらステッキも凶器の暗喩であるかもしれません。
 小学生は行動範囲や金銭的自由が狭いので、必然的に身近にあるものが凶器になると思われます。
 MVに直接出ている棒状のものといえば傘です。しかし、傘は突く動作をすれば(ものすごく頑張れば)殺せるかもしれませんが、叩いて殺すには軽すぎると思います。
 家などの身近にあるもので、他に棒状で凶器になりそうなもの……。
 ここで思い出されるのが、アマネの殺人が「宗教的制裁」であるということです。
 先ほども出てきた宗教、エホ⚪︎(伏せ字)では、子どもが悪いことをした時に「お仕置き」として鞭などで叩く習慣がありました。
 アマネの宗教は実在のものではありませんが、実在の宗教を参考にしていそうですので、実在の宗教と似たような「お仕置き」や「道具」がある可能性があります(MV中に体罰の描写もありましたし)。
 アマネの宗教の場合は、そのお仕置き用の道具が「棒状のもの」だったのではないか。
 そして、家にあるその「棒状のお仕置き道具」が、アマネの凶器なのではないか、と予想しています。
 お仕置き用なのにそれで人を殺せるなんて殺傷能力が高すぎないか……? とは思いますが、アマネの宗教はお仕置きするためにスタンガンを使うような宗教ですので、殺傷能力のある棒がお仕置きに使われる可能性もあるかなと思います。
 根拠が薄いので実際は他のものが凶器かもしれませんが、可能性の一つとして置いておきます。

⚪︎まとめ

 アマネは、個人的にものすごく好きなキャラクターです。本来は真面目で優しいところも、今は少し狂ってしまっているところも可愛くて好きです。
 この文章を書いた時点では、アマネの第二審の判決は決まっていません。
 ボイスドラマで「シドウに手を下す」と言っている割には票が拮抗しているのを見ると、その要素を抜いたら本当は「赦す」票の方が多いのかな、と思ったりもします。
 アマネは、治療行為を許しません。他者に対しても、そして自分に対しても治療するのを許さないでしょう。
 第三審でどうなるのか、とても楽しみです。

⚪︎追記:アマネの宗教がどんな宗教なのか考えてみた

 アマネのことを考える上でアマネの宗教についても気になったので、第二審までの情報を元にどんな宗教なのかを考えてみました。
 万人向けではありませんが、ご興味のある方はこちら↓もどうぞ。


※本文章は、とある創作物に対しての考察であり、特定の宗教や思想を批判するものでは全くありません。ご了承ください。

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