ぼけますから、よろしくお願いします。感想

予告だけで泣いてしまいそうになる映画がある。
なんだなのかと考えれば、その哀しみや感動がイメージ出来てしまうから。
それくらい、身近でもあり、恐れている事でもあり、心動かされる事
この映画は、アルツハイマーとなり、じょじょにその症状が重くなっていく母を娘が映しているドキュメンタリー
どんどんと物事を忘れていく。時に感情的になり、しかしそのことすら忘れてしまう。
ただ、この映画は時に自分の病気への母の嘆きを描いてもいるけれど、それに対する父と娘のしなやかさとやさしさも描いている。
父は90歳半ば近い年齢ながら、はっきりとした思考で家事をこなしたり、時に母を怒ったりもする。
娘はやさしい声ながらはっきりとした言葉を母に投げかける。二人に悲壮感はない。疲弊する家族の様子を描きたかったのではないことがうかがえる。
初めてデイサービスに行った時、最初は嫌がっていた母が楽しそうに帰って来た時、父と娘は「ご機嫌じゃのー」と二人で笑い合っていた。
極端な話をすれば、家族というのは犯罪者になるかもしれない。事故に遭うかもしれない。同性愛者かもしれない。障がい者かもしれない。様々な可能性を孕んでいる。もちろん、アルツハイマーもそうだ。
リスクと言えばそれまでだけど、でも、誰でもなりえる避けようのない事態をただリスクと呼んで良いのだろうか。それは、リスクとなる事態ではなく、誰にでも起こるただの現象なのではないだろうか。
現象はどうするか。反発するか?いや、それよりもきっと受け入れるのではないだろうか。
もちろん、受け入れられる訳はない。なんで私たちだけ。
当たり前にそう思うに違いない。自分であってもきっとそう思う。
それでも、この映画では父と娘は受け入れているように見えた。
そして、苦しむ母もどこかでその気持ちを持っているようにも思えた。
それが、タイトルにもなっている「ぼけますから、よろしくお願いします。」なのではないだろうか。
開き直っているのではなく、諦めているのではなく、受け入れている。
その上で生きていく。
その哀しみと、しなやかな強さ、やさしさに、、そしていつか自分にも起こり得る現象に、ひたすらに感動してしまう。そんな映画だった。

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