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汎用コンポーネントが欲しい

※この記事は,Board Game Design Advent Calendar 2019の12月23日の記事として書かれました.
※ボードゲーム製作者用の汎用コンポーネントが欲しいという内容の記事ですが,私自身のゲーム製作環境が今回の記事の発端であり前提ですので,主題とは直接関係のない製作関連の話が多いです.製作者の方にはあるあるあると思いながら読んでいただければ光栄です.

コンポーネントをみて閃く

ゲームアイデアを思いつくのはいつ?という話題がたまにありますが,私の場合,説明書のコンポーネントの説明部分をみているときによくアイデアを思いついたりします.他の方はどうでしょうか?そのせいで説明書読みが何度も同じ所でとまる現象が頻発します.とても不思議.思いつくアイデアというのは,「こんなコンポーネントだったらこんな動きをしたら面白そうだな」という期待とも予想ともいえるものですが,私の場合は,その予想の正解にあたる説明書の続き見ることを一旦やめて,アイデアをメモします(あるいは物思いに耽ます).メモまでできたら勝ったようなものです.もし予想が当たっていれば,期待通りのゲームがプレイできることになり,外れていれば,自身のアイデアを一つ得るとともに,一つの別解を見ることができることになります.後者では,プレイしたゲームと差別化して,別ゲームの製作に繋げられればベストですし,どうしてもそうできないのなら,より優れたまとめ方を見て学べることになります.というわけで(ときには一丁前に敗北感を感じたりもしながら)どう転んでも勝利!となるわけです.

コンポーネントドリブン開発

といったように,コンポーネントなどをみてアイデアが思いつくということは面白いことだと感じているので,「テーマドリブンでつくる」に倣って「コンポーネントドリブンゲーム開発」なんて主題に変更しようかとも思いましたが,あまりにも内容が変わるので今回はやめました.

メカニクスとコンポーネント

私がメカニクスからゲームを考えるとき大抵は,大まかな構造とその動きを考えることからはじまります.しかし一方で,それをテストしてみようとするとき真っ先に困るのが「コンポーネント」の準備です.もう少し具体的にいうと,カードの枚数や数値のレンジなどの構成や,リソースの種類や数などをどうするかといった部分です.そんなのは仮決めで良いことは重々承知なのですが,仮にでも作らないことにはテストができないので苦労します.一番楽な方法としてよくやるのは,カードならトランプを使うとか,リソースならその辺にある(ふつうは無いかもしれない)コマなどを適当に集めたもので賄います.

コンポーネントの変更とゲームの調整

適当に集めたものがそのあとどうなっていくかというと,2つの観点から調整されて変化していくことになります.一つ目の観点は,そのメカニクスが最も輝くコンポーネントの調整ができないかという点です.メカニクスはそのままで,ゲームがさらに輝けるというのならば検討しないことはありません(やりすぎ注意).もう一つの観点は,テストプレイにインスピレーションを受けて思いついたテーマなどに合うように調整をします.例えば,○○のリソースは貴重だからちょっと減らそう・・・,とか,〇〇というテーマでいくならリソースの種類は絞ったほうがいいな・・・,とか.ゲームの調整という意味ではメカニクス,コンポーネントの両輪で変化することもあります・・・(しますよね?).

セブンプレイイングカードが生まれた話

そういうことをたくさん繰り返していて生まれたのが「セブン」(の元型)です.セットコレクションのゲームを考えたときのことです.集め方と得点方式について,要するにメインの部分が決まった後で,カードの「種類は7つぐらいあるといいな」「種類ごとに価値が変わるといいな」という考えとともに,セブンのカード構成が生まれました.よくある調整だと種類ごとに枚数を調整するところですが,色々な都合でそのような構成にしようとしました(したのだと思います).

で,結局は,そのゲームは完成していないのですが(トランプでは何度かテストした),そこで思いついたコンポーネントについて改めて思い返す機会がちょくちょくやってくることになります. 

・・・(セブンの諸々のはなしは長くなるのでやめる)

コンポーネントドリブンでゲームを考えるというのは実際面白い体験で,挑戦しがいのある事です.セブンのカード構成はいままでにないものであり,十分に個性的なゲームが生まれるであろうという考えから,あるタイミングで汎用プレイングカード化の方向へ舵を取って進めることに決めました.この時点で,いくつかのルール案がありました.セブンのリリースに向けて動き出したとき,「セブン」なのだから最低7つのルールがあるべきだということになり,何人かの方にルール作成をお手伝いいただきたい話をもちかけました.その中で生まれたのが「七つの紋章、七つの部族」でした.

・・・(セブンの諸々のはなしは長くなるのでやめる)

汎用コンポーネントを念頭においたゲーム製作

トランプをそのままコンポーネントとしてパッケージングして頒布される同人ゲームがたまにあります.そういうゲームに対して製作側はトランプをそのまま入れるかどうかについて悩むことになると思います.仮にトランプを利用しない場合,印刷コストやカードのデザインコストがかかります.一方で,とにかく安上がりな点ではトランプにメリットがあります.ほかのメリットとして,へたにカードデザインするより見た目の安心感があり視認性も高いことや,へたに印刷をたのむより質が良いことがあります.もっと安く済まそうと思えば,「お持ちのトランプを用意してください」の手が使えます.

デメリットとしては,新しいゲームに混ぜて使うには,微妙にフレーバーが乗りすぎていることが挙げられます.それによって起こる一番の問題は,ノンテーマのゲーム(ほとんどがトランプゲームの新しいルール)になるか,メタ的なテーマのゲームに陥ってしまうことです.そういう意味で,セブンをそのまま使いながら独自色を出せた(かつ面白い)「ラミネートラミー」はすごい例になると思います.

ゲームプレイヤーから見た場合,やはり入手コストが低い点が最も大きなメリットです.しかし,明らかに流用とわかることによって,コストカット感を感じたりとか,ほんの少し人を誘って遊びにくくなるといったことがデメリットになります.

ボードゲームの汎用コンポーネント

トランプのようなものを汎用コンポーネントとして利用する場合の問題として,ノンテーマのゲームになってしまうことを挙げました.カードゲームではなく,もう少し規模の大きいボードゲームでは特にこの問題は致命的です.あまり問題にならない例外として,お金や得点など,テーマよりも「概念」に近いところにあり,多くのゲームで共通して登場する要素に関しては,汎用コンポーネントを利用できる可能性があると思います.実際に,プレイヤーの中には,ゲームが準備したものと別のお金トークン等を利用していることがあります(SNS調べ).

汎用コンポーネントに求めるもの

それで私(前述のような製作環境にある)が,現状で結局どのようなものを求めているのかをまとめます.これに上手に当てはまる何か良いコンポーネントの案があればぜひ作成していただきたいと思っています.少なくとも私自身と私と同じような人たちが救えます.絶対買いますんで!

・ゲーム発案の最初期段階で何も考えずに導入できること(製作者視点)
 テストプレイまでの時間を短縮できるのは嬉しいです.

・ファーストテスト後に方針決定の助けになること(製作者視点)
 ある程度バリエーションがありつつ,しかし汎用コンポーネントを使わずにリリースすることになっても現実的な物量に収まっていると嬉しいです.

・中量級以上のゲーム製作の促進になること(製作者視点)
 こういう汎用的なコンポーネントが使えるなら,とカード以外にコマを使うようなサイズのゲームを作り始めるきっかけが増えると嬉しいです.

・そのままリリースしてもゲームとして見栄えがするもの(製作者視点)
 字のごとく,そのままリリースしても見栄えが保証できるというのであれば,グッと選択肢に入ってくると思います.

・安くて,汎用的!(製作者視点)
 テーマが乗っていることで一部で絶大な効果があるものより,色んなテーマにそこそこマッチする見た目である方が嬉しいです.

・安くて,入手しやすい方がいいな(ユーザ視点)
 トランプとまでいかないまでも,ユーザにとって入手しやすくないと成り立ちませんから,製作者側も利用しませんよね.

・高すぎるのは困るけど,安っぽくみえない方がいいな(ユーザ視点)
 誰かをプレイに誘うとき,コストカット感がギリギリわからないものであるほうが望ましいです.

・ゲームの見た目が華やかになったらいいな(ユーザ視点)
 木のコマとか,カラフルな色のセットだったりするとグッとユーロ感が高まります.

・コンポーネントの管理,運用がしやすいといいな(ユーザ視点)
 例えば,たくさんのコマのセットから一部を使うといった活用のされ方をすると,ゲームごとに選り分けるのが面倒になるので,1セットで色んなゲームに使えるサイズ感が理想的です.

・代用が効きにくいもの(提供者視点)
 せっかくのなので,他の汎用的なコンポーネントには代えられないようなオンリーワンなセットであって欲しいものです.

汎用コンポーネントの検討

要求だけ言いっぱなすのも悪い気がするので一つの案を挙げてみます.

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画像はコンポーネント全てを表向きに並べたもの(左)と裏向きに並べたもの(右)です.形は円形ディスクで,数ミリの厚みがあり,全部で5色あります.表面には数字が書かれており,色ごとに数字の最大値と各数値の枚数が異なります(赤と黄色は同じ).

検討意図を量,種類(色),形,情報の軸でそれぞれ述べます.量と種類は,5色,各10~12枚で合計56枚です.これはプエルトリコの商品マーカーとだいたい同じです(なので完璧です).形は,プリミティブなものにして様々なリソース等のトークンに対応可能としています.キューブやオクタゴンなどもいいですが,円形ディスクならば重ねておくことができたり,次で述べる情報についての記載がしやすかったりというメリットがあると思っています.このメリットは別の平たい形でも代用できますが,最も一般的な形としています.情報としては,かなり特殊なことをしていて,片面のみに数値を記載して,用途に幅をもたせようと試みています.この数値を価値とみるなら,赤や黄色は価値が高く,緑は価値が低いが安定している,といった解釈ができます.さらに裏向きにして情報を隠蔽したり,数値を使わないゲームに利用したりすることもできます.

最後に,ゲーム内でのテクニカルな利用例をいくつか考えてみます.

・利用例1
 バッグにコマを全て入れて,そこから一定枚数を引いて裏表関係なく配置し,ドラフト用のプールを作ります.そのプールからドラフトをすることによって,表向きで数値がわかっているものを取るか,裏向きだけど最大値の高いもの取るか,といった悩ましさを提供することができます.

・利用例2
 アクションの効果などで,「黄色の得点」「緑の得点」などを与えて,コマを裏向きで用意したプールから指定された色を獲得するようにすることで,期待値が高いけど振れ幅の大きい得点と,期待値が低いけど安定した得点,といった感じに程よい運をゲームに提供することができます.

・利用例3
 コマを何らかの方法で獲得して,裏向きで手元に置きます.別のアクションの効果などで表にすることで,未鑑定の価値のわからない状態のリソース(裏向き)から,鑑定済みで価値がわかり適正に取引などが行える状態のリソース(表向き)にする,といったようにリソースの状態変化を表現することができます.


ボードゲーム用の汎用コンポーネントが欲しい!


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