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①アナフィラキシーを瞬時に疑えるようになろう!

アナフィラキシーは有名であるものの, 瞬時に見極めるのは意外と難しく, 対応が遅れていることが少なくありません. それが故に不幸な転帰を辿ってしまっては...進行の速さは前回お伝えしたとおりとして, 今回はアナフィラキシーを疑うために心得ておくべきことについて. これを頭に入れ, なるはやで対応できるようになりましょう.

アナフィラキシー 7 rules

アナフィラキシーの症状

みなさん, アナフィラキシーの症状というとどの様なものが思い浮かぶでしょうか. 皮疹, 呼吸困難, あとは...簡単に言うとありとあらゆるところが浮腫む, そんな感じです. 皮膚であれば蕁麻疹などの皮疹, 喉であれば喉頭浮腫, 肺であれば喘鳴が出現し, 腹部であれば腹痛や嘔気・嘔吐, そしてアナフィラキシーショックは血液分布異常性ショックですから, 状態が悪化すれば脳への血流も低下し, 失神・前失神, 血圧低下を引き起こします.

具体的な症状と頻度は下表の通りです(1). 10%は皮疹を認めないこと, 呼吸や循環の症状だけでなく嘔気・嘔吐や腹痛などの消化器症状を認めることがあることは頭に入れておきましょう. 喘鳴を伴う皮疹, 血圧低下を伴う皮疹, これらは誰もがアナフィラキシーを想起するため迷いませんが, 皮疹がない, 消化器症状の訴えが入り口の場合には判断が遅れることがあると思います. ”急性の消化器症状を診たら, アナフィラキシー, 中毒を鑑別に入れて対応する”ことをお勧めします.

アナフィラキシーの症状と頻度

アナフィラキシーの定義

『アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応』です(2). 通常は急速に発現し, 前回記載したとおり死に至ることもあります. ガイドラインにも記載がありますが, 重症のアナフィラキシーは, 致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるものの, 典型的な皮膚症状やショックを伴わない場合もあることに注意が必要です.

アナフィラキシーの診断基準

アナフィラキシーの診断基準は下表の通りです. 日本アレルギー学会のガイドラインが2022年に発表され, 以前にものよりもシンプルになりました. 皮膚症状に加えて, 気道, 循環器, 消化器症状のいずれか, または, 皮膚症状を伴わなくても当該患者の既知のアレルギーやアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後に循環, 呼吸の異常を来した場合にアナフィラキシーである可能性が高いとされます(2).

皮膚症状, 呼吸器症状, 循環器症状, 消化器症状, これらが急性に認められる場合には, アナフィラキシーの可能性をまずは考え所見を探すのが実臨床では重要と思います. 皮疹は意識しなければ気づかないこともありますから. また, 急性発症の腹痛では血管病変や腸管穿孔を考えてもアナフィラキシーが鑑別から抜け落ちていることはありますからね.

アナフィラキシーの診断基準

参考文献

#1. Joint Task Force on Practice Parameters; American Academy of Allergy, Asthma and Immunology; American College of Allergy, Asthma and Immunology; Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. The diagnosis and management of anaphylaxis: an updated practice parameter. J Allergy Clin Immunol. 2005 Mar;115(3 Suppl 2):S483-523. PMID: 15753926.
#2. 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン 2022.

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