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【無料で半分読めます】これはズルい!音が前に出るコンプ Sonnox Oxford Dynamics レビュー&オススメの使い方

筆者が愛用しているコンプの中からSonnox Oxford Dynamicsを紹介。ボーカルなどの音を前に出したいトラックに適しており、古いプラグインですが、現代でも全く問題なく使うことができます。プラグインの概要とおすすめの使い方をご紹介します。

Oxford Dynamicsをボーカルに使用した例

動画版はこちら

Sonnox Oxford Dynamicsの価格やマニュアル、Webは以下のサイトにまとめています。


Sonnox Oxford Dynamicsの概要

Sonnox Oxfordシリーズは、1995年に発売されたSONYの業務用デジタルコンソール、OXF-R3のプロセッサーをプラグイン化したシリーズ。Oxford DynamicsはOXF-R3のダイナミクスセクションということになります。筆者は使う機会がありませんでしたが、OXF-R3は非常に評価の高いコンソールでした。

Oxford Dynamicsマニュアル(英文)

https://dload.sonnoxplugins.com/pub/plugins/manuals/SonnoxDynMan.pdf

実際に使ってみると、コンプONで微妙に倍音が追加され、音質変化が見られます。ただしOXF-R3を模したものと考えられ、ビンテージ系コンプやEQほどの音質変化はありません。以下の通り、倍音やノイズは付加されますが、すべて-100dB以下の微妙なものです。


NORMALタイプの倍音構成

倍音は微妙に追加されるものの周波数特性に変化はありません。よって、音質変化は実際にはあまり感じられません。結果としては、「音量調整だけを純粋に行ってくれるコンプレッサー」のように感じます。キャラクターとしてはWaves C1DAWに付属するコンプレッサーに近い、基本に忠実なコンプレッサーです。

筆者は20年以上使い続けていますが、改めて調査のうえ、以下にレビューをまとめてみました。

  • 万能で音質変化が少なく、周波数変化のないLA-2Aとしてボーカルやサックスに最適

  • WARMTHを使うと倍音追加量を調整でき、前に出したいトラックになんでも使える

  • 結論的には、ビンテージ系コンプだと強すぎる場合の代替に最適

冷静に整理してみると、音の変化が大きくはないもののゼロではないことが効いている気がします。それでは紹介していきます!

特徴1:コンプからゲート、倍音追加まで含まれる複合機

Oxfrod Dynamics、そして、OXF-R3の「ダイナミクスセクション」というだけあって、Oxford Dynamicsにはコンプレッサー以外のプロセッサーも含まれています

以下6種類のプロセッサーが含まれます。

  • GATE

  • EXPANDER

  • COMPRESSOR

  • LIMITER

  • SIDE-CHAIN EQ

  • WARMTH

6種類の中から必要なセクションをONにして組み合わせて使用します。すべてONにすることも可能なので、使用対象を選ばない万能ダイナミクスプロセッサーといえます。


セクションをINにすると動作する

各セクションの「IN」を点灯させることで動作します。コンプレッサーを使用する場合は、「COMPRESSOR」セクションの「IN」を押して点灯させます。

この記事では主にコンプレッサーについて説明します。
※筆者がOxford DynamicsのCOMPRESSOR以外のセクションを使うことは稀です。

特徴2:COMP TYPE設定 - アタック・リリースの動作が変更可能 - 

コンプレッサーの基本に倣ったごく一般的なパラメータが用意されていますが、特徴的なのは「COMP TYPE」のスイッチです。


マウスオンで説明が出てくる

The Oxford Compressor offers three compression types designed NORMAL, CLASSIC and LINEAR. The time constant laws employed define the major difference between these types.
NORMAL uses exponential/dB timing, which is by far the most popular law used today, and allows full control over the time constants.
CLASSIC is a subset of NORMAL, with timing controls fixed to match a range of popular legacy units. It is ideal to use as a general purpose channel compressor.
LINEAR uses linear/dB timing. This type of compressor is useful for generating dynamic audio effects because the sonic character of the compression is much more affected by the time control settings and programme material than the exponential type. It is generally unsuitable for controlling level.
Oxfordコンプレッサーでは、NORMAL、CLASSIC、LINEARの3種類の動作タイプが選択できます。各モードの主な違いは使用されるアタック・リリースタイム(=Time constant)の動作にあります。
NORMALタイプの動作は指数/dBに基づくものであり、これは現在最も一般的に使用されているコンプレッサーと同じ動作です。アタック・リリースタイムを細かく設定することができます。
CLASSICタイプはNORMALに付随する副次的な動作タイプで、人気のビンテージ機器の範囲に合わせてアタック・リリースタイムが固定されています。一般的な用途のチャンネルコンプレッサーとして理想的です。
LINEARタイプの動作は線形/dBに基づくものとなっています。線形/dB動作のコンプレッサーは、アタック・リリースタイムの設定やオーディオ素材に大きく影響されるため、ダイナミックな効果を出すためには役立ちますが、レベル制御には一般的に適していません。

Oxford Dynamicsの表示画面より転記

COMP TYPEの違いは主にアタック・リリースタイムの動作であることがわかります。また、LINEAR一般的な使用には向かないことも記載されています。
実際LINEARを使ってみると使いにくいので、通常使用ではNORMAL/CLASSICから選んで使用するのが良いでしょう。

CLASSICではアタック・リリースが固定されており、NORMALに付随するとされていますので、NORMAL/LINEARについてPlugin Doctorで比較してみました。

Oxford Dynamics NORMAL Att:5ms/Rel:50ms
Oxford Dynamics LINEAR Att:5ms/Rel:50ms

アタック部分(コンプの動作開始)とリリース部分(動作終了部分)のカーブが異なることがわかります。本質的にはLINEARの方が指示通りの動きなのですが(苦笑)、使いやすいのはNORMALです。

なお、説明には書かれていませんが、COMP TYPEによって倍音構成に若干の変化があります。NORMALと同じ内容で倍音が多くなるのがCLASSIC。LINEARは倍音というよりは全体的に情報量が増えるため、音質的にも扱いにくいと感じます。

特徴3:COMP KNEEの設定が変更可能

最近のコンプレッサーではなぜかあまり見なくなったKNEE(ニー)の設定があります。KNEEはコンプレッサーが動作開始する点(スレッショルド)をゆるやかにすることができます。通常は「xxdBからxxdB圧縮」という動作をしますが、KNEEをオンにするとスレッショルドの手前から少しづつ動作するようになります。

Oxford DynamicsのKNEE設定

The COMP KNEE function provides a gentle, minimum rate transition between the region below the THRESHOLD and the compressed region of the curve.
A further threshold, below the main THRESHOLD control setting, defines the start of the soft curve. The program signal is therefore compressed progressively harder as it gets louder within this region, until the full compression defined by the RATIO control is archieved.
COMP KNEE機能は、THRESHOLD以下の音量とコンプ動作が行われる音量との間に変化率の小さな穏やかな変化を実現します。THRESHOLD設定値よりも下にある別の閾値をもとにKNEE動作を行います。このため、入力信号はTHRESHOLDとそれ以下のKNEEの閾値の間においては音が大きくなるにつれて徐々に強く圧縮され、最終的にはRATIOで設定した圧縮率に到達します。

Oxford Dynamicsの表示画面より転記

説明によると、THRESHOLDとは別に閾値(しきいち)が設けられ、その閾値からゆるやかに動作するようになるとされています。COMP KNEEのスイッチを押すごとに閾値を5dBずつ下げることができ、最大値は20dBです。

以下の画像は、COMP KNEE OFFと、COMP KNEE 20dBの比較です。動作開始点が下がっているのが確認できます。

THRESHOLD -20dB / COMP KNEE OFF(0dB)


THRESHOLD -20dB / COMP KNEE 20dB

以上のように、言い方を変えれば伝統的かつ基本に忠実なデジタル・コンプレッサーです。初心者向きではないので、コンプが理解できた頃に使ってみると良いでしょう。

価格やWebサイトはこちら↓

オススメの使い方

それではオススメの使い方を紹介しましょう。

 その1:万能なLA-2Aとして使う

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