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ラフスケッチと設計

ジブリなどのアニメーターは最初の構想のときにラフスケッチを作って検討しますが、建築設計や防音設計も同様にラフスケッチを描きながら設計仕様の考え方を盛り込み、複数の案を検討します。

私の場合は、仕事場の防音相談の打合せでラフスケッチを描きながら、依頼者と一緒に主な設計仕様の重要な部分を考えます。
これは今までの実践経験の引き出しの中から出てきますので、それをラフに表現しながら重要なポイントの下書きをします。

ラフの主なものは、防音構造の断面構成と壁と床に使用する主な防音材の納まりを表現することが多いです。
防音相談にお出でになった相談者は、このときに手応えを感じれば前進しますが、十分にご理解いただけない場合は保留となります。
なので、ラフスケッチの段階が最も重要だと言えます。

防音設計の清書のベースとなるラフ検討図

ラフスケッチは詳細を省いた絵ではない

私のラフスケッチ(計画案・ラフ検討図)は、描く専門家の頭の中に詳細なノウハウやディテールの納まりが入っていないと、描けません。単なる下書きではなく、設計仕様そのものを表現した説明書です。

なので、実践経験がないとスケッチそのものを描くことが出来ません。防音構造のラフは、設計仕様の具体化した姿です。

依頼者の中には、PCで清書した図面より、手書きのラフスケッチのほうが分かりやすいので、たまにラフのコピーも一緒にくださいと言われます。
無料の相談打合せでは見せるだけです。あくまで契約者に納品する図書の一部として位置づけられます。

防音設計にとってラフスケッチは依頼者への説明書と同じ

ラフスケッチが描けないときは、依頼者へ納品する防音施工・設計の説明書が未完成、検討中ということになります。
最初の相談打合せでは、施主が持参された平面図や断面図のコピーに留意点などを赤ペンで書き込むだけです。
これがラフスケッチのスタートになります。
施主との具体的な意見交換をしたあとでラフスケッチや計画書案を作成します。

なので、ラフスケッチが出来上がれば、防音設計は完成に近づきます。あとは細かい納まりや表層材などを検討して仕上げていきます。
通常は、ラフスケッチは私のファイルの中に入れて保管する手持ち資料となります。説明書として納品する事は普通はありません。

机上の理論を今までの自分の実務経験を踏まえて、検討したものがラフスケッチという検討プロセスの中で出てくるわけです。
それは机上の理論式ではなく、実践的に使える現場への指示書や説明図のベースとなるものです。
*ラフスケッチができれば、私の作業は約6割終了したことになります。

私は他の建築士の下書きや手書きのラフを見るのが好きで、その人の性格や考え方が素直に表れるので、清書は施主だけに渡せば良いから、私の分は先にラフの段階でコピーをくださいと言います。ラフが書ける人は、「すでに設計が完成に近い状態」であることを示し、あとは清書作業だけなので、他のスタッフが描けば良いのです。
*私は自営業なので自分のPCで清書しますが、急いでいる場合は、手書きの状態で先に渡すことがあります。

ちなみに、大手業者の営業担当に具体的な設計仕様について質問するとき、ラフな手書きでも良いから、その場で図で説明して下さいと要望すると良いでしょう。防音設計の仕様やシステムを理解している技術担当なら、すぐに手書きで説明できるはずです。※無料相談会や最初の相談打合せで、相手の能力を見極める方法として有効です。

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