防音材の現状と考察
今まで投稿してきた記事において、専門家によるいくつかの分類があることを述べました。
多くの建築業者や専門業者が誤解している事項も少なく有りません。
その典型が「制振材」と「吸音材」は防音材ではないという説明ですが、それは間違いです。防音設計において「遮音材」「制振材」「吸音材」を組合せて構成する仕様書を見れば明らかです。
*誤解している業者は「防音材=遮音材」と捉えているためです。
そのような背景が建築業界にあるため、防音材メーカーも「遮音材」の開発にシフトしており、住宅や木造防音室に使用する「制振材」「吸音材」の開発が遅れていました。
一方、機械工学や車産業においては、むしろ「制振材」「吸音材」の製品開発に力を入れることが標準でした。例えば、日本車は軽量でありながら車内の遮音性・制振性を重視する構造のため、これらの製品開発が不可欠だったからです。
*軽量かつ振動を制御する構造になっている車には、吸音性のある制振材が使用されています。
*防音職人では、薄い防音構造を構築するため、この業界で開発された製品を活用しています。
最も古い遮音材
他の記事でも述べましたが、我が国で最も古い防音材は「アスファルト遮音材」です。土木工学の分野で開発されました。
遮音材の中では最も耐用年数が長い製品ですが、床暖房の上には直接施工できないという留意点があります。熱で膨張するためです。
この製品は、重量音などの制振機能を併せ持つため、制振材を兼ねる場合があります。
その次に古い防音材として、鉛シートとブチルゴムがありますが、大きな面材として施工するには単価が高すぎるうえに、施工が難しいため、主にテープ状の製品として使用することが多くなっています。
また、鉛シートは振動音に対する制振効果は非常に小さく、共振したりコインシデンスによる遮音低下を起こすため専門家は使用しません。それに音を吸収しないで反射するだけの素材なので、木造音楽室には使えません。
新しい遮音材としては、樹脂マットがあります。一般的な製品名では「遮音マットまたは遮音ゴムマット」と呼ばれています。これも車業界で開発された製品がベースになっています。
防音材と費用対効果
費用対効果の高い遮音材は、樹脂の遮音材、アスファルト基材の遮音材になります。
一方、吸音材・制振材は、近年単価が高騰しており、大元の開発メーカーを辿ると3社しかなく、その3社が取引先メーカーの製品を受注しており、大半の製品単価が毎年のように値上りしています。
*防音職人の取引先も、3年間値上げを保留していましたが、ついに今年に入り価格改定となりました。それでも他社に比べると値上げ幅は最も小さく、現時点でも業界最安値で供給されています。
ただし、遠方の現場への送料が大分値上げされました。
ですが、防音職人の制振・吸音材の費用対効果は高く、取引先に特別に少ない注文量でもDIYのユーザー向けに小ロットで納品を依頼しています。
私の代限りで取引が終了する見込みであり、その後は、多量注文しか対応できないと担当者に言われました。
振り返れば、私が苦労して専門メーカーの製品を探し出して取引を開始したのですが、すでに約30年が経過しました。
私の協力で製品を使用している専門業者は、自力では防音材取引を全部断られたのですが、私の一代限りという条件で取引を継続しています。